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3話 失恋の宣告
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平凡で幸せな日々が過ぎていく。ずっとこのまま、毎日カミユと楽しく魔物討伐をしていくものだと、思い込んでいた。自分の気持ちは胸にしまったまま、片思いのまま。
そんなある日のこと。
今日はカミユの様子がおかしい。本人は元気に振る舞っているようだが、明らかに空元気だった。
ある程度魔物討伐を終えたところで、俺は話を切り出した。
「カミユ、いい加減元気なフリするのやめよう?」
カミユは剣を収め、顔を曇らせる。
「うっ……やっぱバレてた?」
そうバツが悪そうに答える彼へ、俺は思わず頬をぷくーっと膨らませた。
「当たり前でしょ? 何年一緒にいると思ってるの?」
「はははっ、だよな……」
「ねぇ、何かあったの?」
カミユは、少し寂しそうにこう答えた。
「……王都の貴族の令嬢と、縁談の話が出てるんだ」
「え、縁談……!?」
頭が真っ白になった。
カミユが、王都のお嬢様と縁談……。結婚するかもって事だ……。
親友なら喜んであげるべき事かもしれない。なのに俺まで、シュンと落ち込んでしまった。だって、失恋じゃん……。
そんな俺の表情を見て、なぜかカミユは嬉しそうにしていた。
「そんな、落ち込んでくれるんだ?」
「えっ、あぁっ、ごめん……! 王都の貴族のご令嬢と縁談なんて、すごい事だよね、良かったね!」
俺は無理に笑ってみせる。
「ディオン、お前なぁ、さっき俺に元気なフリするなって言ったくせに、お前が今そうなってんぞ?」
「うっ……そうだよね。ごめんね、喜んであげなきゃって思うのに、もうディオンと魔物討伐できないかもって思ったら、寂しくなっちゃって……」
俺はそう言うと、カミユは優しく微笑んだ。
「俺も、寂しいよ。けど、頻度は減るかもしれないけど、お前とのパーティを解消するつもりはないから。一緒に出かけられる時は一緒に討伐に行こうな」
「あ、うん……そだね……」
本当の心配事はそこじゃないんだ。でも、この気持ちは伝えられない。伝えたところでもうどうにもならないし。
カミユは軽くため息を吐きながらこう続けた。
「相手の女性には悪いけどさ……会ったこともない人と結婚ってのは正直嫌なんだ、俺……。領主の息子だから、覚悟はしてたけど。実際にその時がやってくるって思うと、実は憂鬱なんだよ……」
「そっか……そうだよね。領主の息子の辛い宿命だね……」
「ん……」
カミユは軽く頷いて、深くため息を吐いた。
そっか、カミユもその縁談の話を良く思ってる訳じゃないんだ。そう思うと少しだけ安心した。
でもそれはきっと、相手が会ったこともない人だからだ。もし顔見知りだったら、カミユは嬉しそうな顔をしていたのだろうか。それは、ちょっとやだな……。
俺は自分の気持ちに嘘を吐きながら、カミユを励まして家に帰った。
そんなある日のこと。
今日はカミユの様子がおかしい。本人は元気に振る舞っているようだが、明らかに空元気だった。
ある程度魔物討伐を終えたところで、俺は話を切り出した。
「カミユ、いい加減元気なフリするのやめよう?」
カミユは剣を収め、顔を曇らせる。
「うっ……やっぱバレてた?」
そうバツが悪そうに答える彼へ、俺は思わず頬をぷくーっと膨らませた。
「当たり前でしょ? 何年一緒にいると思ってるの?」
「はははっ、だよな……」
「ねぇ、何かあったの?」
カミユは、少し寂しそうにこう答えた。
「……王都の貴族の令嬢と、縁談の話が出てるんだ」
「え、縁談……!?」
頭が真っ白になった。
カミユが、王都のお嬢様と縁談……。結婚するかもって事だ……。
親友なら喜んであげるべき事かもしれない。なのに俺まで、シュンと落ち込んでしまった。だって、失恋じゃん……。
そんな俺の表情を見て、なぜかカミユは嬉しそうにしていた。
「そんな、落ち込んでくれるんだ?」
「えっ、あぁっ、ごめん……! 王都の貴族のご令嬢と縁談なんて、すごい事だよね、良かったね!」
俺は無理に笑ってみせる。
「ディオン、お前なぁ、さっき俺に元気なフリするなって言ったくせに、お前が今そうなってんぞ?」
「うっ……そうだよね。ごめんね、喜んであげなきゃって思うのに、もうディオンと魔物討伐できないかもって思ったら、寂しくなっちゃって……」
俺はそう言うと、カミユは優しく微笑んだ。
「俺も、寂しいよ。けど、頻度は減るかもしれないけど、お前とのパーティを解消するつもりはないから。一緒に出かけられる時は一緒に討伐に行こうな」
「あ、うん……そだね……」
本当の心配事はそこじゃないんだ。でも、この気持ちは伝えられない。伝えたところでもうどうにもならないし。
カミユは軽くため息を吐きながらこう続けた。
「相手の女性には悪いけどさ……会ったこともない人と結婚ってのは正直嫌なんだ、俺……。領主の息子だから、覚悟はしてたけど。実際にその時がやってくるって思うと、実は憂鬱なんだよ……」
「そっか……そうだよね。領主の息子の辛い宿命だね……」
「ん……」
カミユは軽く頷いて、深くため息を吐いた。
そっか、カミユもその縁談の話を良く思ってる訳じゃないんだ。そう思うと少しだけ安心した。
でもそれはきっと、相手が会ったこともない人だからだ。もし顔見知りだったら、カミユは嬉しそうな顔をしていたのだろうか。それは、ちょっとやだな……。
俺は自分の気持ちに嘘を吐きながら、カミユを励まして家に帰った。
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