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23話 没落貴族
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僕とランス様は、僕の故郷へ向かう道中でザグバン領の首都へと立ち寄った。
⸺⸺ザグバン領首都⸺⸺
ザグバン侯爵家は、元セネト卿がアイーダを嫁がせたかった家だ。
その話をランス様へすると、ザグバン侯爵は領民への気配りもでき、コツコツと真面目に努力を重ねてきた領主だと言う事を教えてくれた。
だからこそ元セネト卿はそことの繋がりを強固なものにしてクリーンなイメージを保つ事で裏稼業のカモフラージュにしたかったのでは、との事だった。
⸺⸺
僕たちが領主の屋敷付近の大通りを訪れると、屋敷の前に人だかりが出来て何やら揉めているようだった。
僕たちも野次馬に混ざってその中央を覗き込むと、大きな荷物を抱えた元セネト卿とアイーダがザグバン卿のご子息の足にしがみついていた。
「あんた散々わたくしに求婚してきたでしょう? その話、受けてやってるって言ってるの! だからわたくしをあんたの屋敷に入れて!」
「ふざけるなよ! 乳がデカイだけで奴隷を虐げるような下品な女、こっちから願い下げだ! さっさと僕の町から出て行け!」
ザグバン令息は足をぶんぶんと振って、アイーダを地面へ蹴り飛ばした。すぐに元セネト卿が土下座をする。
「お願いです。貴方様の望むままに娘を好きなようにしてくれて構いません。ですのでどうか、我が家をザグバン卿の傘下へ加えては下さいませんか。裏組織とは手を切りました。今後このような禁止売買は一切しないと誓います!」
ここで、ザグバン卿が登場する。
「手を切っただと? 組織が解体されてなくなっただけだろう。私はね、今まで表向きの君に騙されていたと知り、怒っているのだよ。もう顔も見たくないのだ。さっさと出て行ってくれないか。衛兵!」
「「はっ!」」
脇からすぐに衛兵が飛び出し、元セネト卿とアイーダを摘んで都の入り口へと連れていった。
周りを囲んでいた人々は気の済むまで大笑いをすると、満足そうに散り散りになっていった。
ザグバン卿がランス様に気付き、すぐにこちらへ寄ってくる。
「これはこれは、ディオール公爵閣下ではございませんか。お恥ずかしいところをお見せしてしまったようで、申し訳ございません」
彼の会釈を返すように、ランス様もまた会釈をしたので、僕も一緒にお辞儀をした。
「いえ、こちらこそ損な役回りを押し付けてしまったようで……。ところで別件なのですが、"サラエ村跡"の慰霊碑の建設に人員を割いて頂いたとか……あの村は、この子の故郷なのです。この場を借りて御礼申し上げます」
サラエ村……それが今から行く僕の故郷の名前なんだ……。僕はより一層深く頭を下げた。
「いえいえ、こちらも大したことは出来ませんで、恐縮でございます。そちらは確か、リィン子爵ルミエル様……そうでしたか、あの村のご出身で……。この度は誠にお悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます……」
僕は再度頭を下げた。僕の村は廃村になってしまったけど、事実が公になった事でたくさんの人が鎮魂の祈りを捧げてくれたようだ。こちらのザグバン卿もそのお一人。僕からも、精一杯の感謝の意を示した。
⸺⸺
ザグバン卿と別れを告げるとザグバン首都を後にする。
馬に跨がって走る道中、人々に石を投げられながら逃げていく元セネト卿とアイーダの姿を捉えた。彼らの記事は隣国へも伝わっている。このまま国外へ追放になっても彼ら没落貴族に待っているのは、石を投げられてあちこちの町を追われる生活だ。ある意味死罪より辛いのでは。そう思うと、ほんの少しだけ、彼らを気の毒に思った。
⸺⸺ザグバン領首都⸺⸺
ザグバン侯爵家は、元セネト卿がアイーダを嫁がせたかった家だ。
その話をランス様へすると、ザグバン侯爵は領民への気配りもでき、コツコツと真面目に努力を重ねてきた領主だと言う事を教えてくれた。
だからこそ元セネト卿はそことの繋がりを強固なものにしてクリーンなイメージを保つ事で裏稼業のカモフラージュにしたかったのでは、との事だった。
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僕たちが領主の屋敷付近の大通りを訪れると、屋敷の前に人だかりが出来て何やら揉めているようだった。
僕たちも野次馬に混ざってその中央を覗き込むと、大きな荷物を抱えた元セネト卿とアイーダがザグバン卿のご子息の足にしがみついていた。
「あんた散々わたくしに求婚してきたでしょう? その話、受けてやってるって言ってるの! だからわたくしをあんたの屋敷に入れて!」
「ふざけるなよ! 乳がデカイだけで奴隷を虐げるような下品な女、こっちから願い下げだ! さっさと僕の町から出て行け!」
ザグバン令息は足をぶんぶんと振って、アイーダを地面へ蹴り飛ばした。すぐに元セネト卿が土下座をする。
「お願いです。貴方様の望むままに娘を好きなようにしてくれて構いません。ですのでどうか、我が家をザグバン卿の傘下へ加えては下さいませんか。裏組織とは手を切りました。今後このような禁止売買は一切しないと誓います!」
ここで、ザグバン卿が登場する。
「手を切っただと? 組織が解体されてなくなっただけだろう。私はね、今まで表向きの君に騙されていたと知り、怒っているのだよ。もう顔も見たくないのだ。さっさと出て行ってくれないか。衛兵!」
「「はっ!」」
脇からすぐに衛兵が飛び出し、元セネト卿とアイーダを摘んで都の入り口へと連れていった。
周りを囲んでいた人々は気の済むまで大笑いをすると、満足そうに散り散りになっていった。
ザグバン卿がランス様に気付き、すぐにこちらへ寄ってくる。
「これはこれは、ディオール公爵閣下ではございませんか。お恥ずかしいところをお見せしてしまったようで、申し訳ございません」
彼の会釈を返すように、ランス様もまた会釈をしたので、僕も一緒にお辞儀をした。
「いえ、こちらこそ損な役回りを押し付けてしまったようで……。ところで別件なのですが、"サラエ村跡"の慰霊碑の建設に人員を割いて頂いたとか……あの村は、この子の故郷なのです。この場を借りて御礼申し上げます」
サラエ村……それが今から行く僕の故郷の名前なんだ……。僕はより一層深く頭を下げた。
「いえいえ、こちらも大したことは出来ませんで、恐縮でございます。そちらは確か、リィン子爵ルミエル様……そうでしたか、あの村のご出身で……。この度は誠にお悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます……」
僕は再度頭を下げた。僕の村は廃村になってしまったけど、事実が公になった事でたくさんの人が鎮魂の祈りを捧げてくれたようだ。こちらのザグバン卿もそのお一人。僕からも、精一杯の感謝の意を示した。
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ザグバン卿と別れを告げるとザグバン首都を後にする。
馬に跨がって走る道中、人々に石を投げられながら逃げていく元セネト卿とアイーダの姿を捉えた。彼らの記事は隣国へも伝わっている。このまま国外へ追放になっても彼ら没落貴族に待っているのは、石を投げられてあちこちの町を追われる生活だ。ある意味死罪より辛いのでは。そう思うと、ほんの少しだけ、彼らを気の毒に思った。
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