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11話 謎の扉と消えない傷痕
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⸺⸺翌朝。
「うーん……良く寝たぁ」
ベッドから起き上がってうーんと伸びをする。ベッドってすごい。ぐっすり眠れたし、身体も痛くない。
「夢じゃ……ない」
僕はちゃんとディオール公爵の屋敷にいる。本当にもう、アイーダお嬢様のお世話をしなくていいんだ。
心が跳ね上がった僕は部屋中を見渡し、入ったことのない扉があることに気付く。
何だろうこの扉。物置か何かがあるのかな?
そう思って気楽に扉を押してみる。特に鍵もかかっておらず、すぐにキィッと開いた。
扉の先へ一歩足を踏み入れて、僕は絶叫する。
「ぎゃぁぁぁぁっ! ランス様のお部屋!?」
その扉は隣のランス様のお部屋と繋がっていたようで、パンイチでまさに着替え中のランス様とバチッと目が合った。彼はふっと吹き出した。
「そんな監獄に来てしまったような反応をしなくても良いだろう」
「す、すすすすすみません! 僕、まさか部屋同士が繋がってるなんて思わなくて……!」
ペコペコとひたすらに平謝りをする。
「そういう造りなんだ、気にする必要はないし、今みたいに気軽に訪ねて来るといい」
ランス様は着替えながら何でもないようにそう言った。
「ふぇぇ……今だってお着替え中だったし、僕にはちょっとハードルが高いです……」
「着替えを見られるくらい別にどうってことはないが……お前は嫌なんだな。不用意に押し掛けるのはやめておこう」
「僕は……その……」
着替えを見られるのは嫌だ。だって、あちこちに虐待された傷痕があるから。でも、嫌だなんてハッキリ言ったら失礼だろうか。そう思うと自然と寝間着の袖をキュッと引っ張っていた。
気付けばランス様が目の前にいて、僕の右の手首を持ち上げた。
「良いんだ、ルミエル。可哀想に、こういう傷があちこちにあるのだな……。大丈夫、俺はお前が嫌がる事は何一つしないと誓う。この傷も何とかしてやれたらいいが……ひとまずこれで勘弁してくれないか」
ランス様はそう言って自身の身に着けていた幅の広いブレスレットを僕の右腕に通した。僕にはぶかぶかだったので、ブレスレットの裏でサイズを調整してくれ、ピタッと腕に収まった。不思議な紋章の入ったブレスレットだ。この紋章、どこかで見たことがあるけど……。
僕が気になってしょうがなかった痣は、ブレスレットに隠れて綺麗に見えなくなった。
「こ、こんな高そうなもの……いけません……。ランス様の大切な物なのに……」
口ではそう言っても、心は嬉しさで一杯になり、ボロボロと涙が零れ落ちる。
「"俺の付き人"の証だ。俺はそのうち新しい物を新調するから気にするな。それとも、俺のお古よりもその新しい方がいいか?」
どっちにしても、新しいブレスレットを買ってもらってしまう事になる。それなら……。
「い、いえ! 僕、新しい物よりも……"これ"が良いです……」
右手首をギュッと握り締め、泣きながらはにかむ。
一方でランス様は、手のひらで額を覆い、沈黙していた。
「あの……ランス様?」
「い、いや……何でもない、気にするな。とにかく気に入ってくれたなら良かった。ほら、お前も顔を洗って着替えて来い。一緒に朝食を食べに行こう」
「はい、すぐに支度してきます!」
寝間着の袖で涙を拭き、自分の部屋へと戻っていく。僕の去り際にランス様が「可愛すぎるだろ……」と悶えていたなんて、僕は全く知りもしなかった。
「うーん……良く寝たぁ」
ベッドから起き上がってうーんと伸びをする。ベッドってすごい。ぐっすり眠れたし、身体も痛くない。
「夢じゃ……ない」
僕はちゃんとディオール公爵の屋敷にいる。本当にもう、アイーダお嬢様のお世話をしなくていいんだ。
心が跳ね上がった僕は部屋中を見渡し、入ったことのない扉があることに気付く。
何だろうこの扉。物置か何かがあるのかな?
そう思って気楽に扉を押してみる。特に鍵もかかっておらず、すぐにキィッと開いた。
扉の先へ一歩足を踏み入れて、僕は絶叫する。
「ぎゃぁぁぁぁっ! ランス様のお部屋!?」
その扉は隣のランス様のお部屋と繋がっていたようで、パンイチでまさに着替え中のランス様とバチッと目が合った。彼はふっと吹き出した。
「そんな監獄に来てしまったような反応をしなくても良いだろう」
「す、すすすすすみません! 僕、まさか部屋同士が繋がってるなんて思わなくて……!」
ペコペコとひたすらに平謝りをする。
「そういう造りなんだ、気にする必要はないし、今みたいに気軽に訪ねて来るといい」
ランス様は着替えながら何でもないようにそう言った。
「ふぇぇ……今だってお着替え中だったし、僕にはちょっとハードルが高いです……」
「着替えを見られるくらい別にどうってことはないが……お前は嫌なんだな。不用意に押し掛けるのはやめておこう」
「僕は……その……」
着替えを見られるのは嫌だ。だって、あちこちに虐待された傷痕があるから。でも、嫌だなんてハッキリ言ったら失礼だろうか。そう思うと自然と寝間着の袖をキュッと引っ張っていた。
気付けばランス様が目の前にいて、僕の右の手首を持ち上げた。
「良いんだ、ルミエル。可哀想に、こういう傷があちこちにあるのだな……。大丈夫、俺はお前が嫌がる事は何一つしないと誓う。この傷も何とかしてやれたらいいが……ひとまずこれで勘弁してくれないか」
ランス様はそう言って自身の身に着けていた幅の広いブレスレットを僕の右腕に通した。僕にはぶかぶかだったので、ブレスレットの裏でサイズを調整してくれ、ピタッと腕に収まった。不思議な紋章の入ったブレスレットだ。この紋章、どこかで見たことがあるけど……。
僕が気になってしょうがなかった痣は、ブレスレットに隠れて綺麗に見えなくなった。
「こ、こんな高そうなもの……いけません……。ランス様の大切な物なのに……」
口ではそう言っても、心は嬉しさで一杯になり、ボロボロと涙が零れ落ちる。
「"俺の付き人"の証だ。俺はそのうち新しい物を新調するから気にするな。それとも、俺のお古よりもその新しい方がいいか?」
どっちにしても、新しいブレスレットを買ってもらってしまう事になる。それなら……。
「い、いえ! 僕、新しい物よりも……"これ"が良いです……」
右手首をギュッと握り締め、泣きながらはにかむ。
一方でランス様は、手のひらで額を覆い、沈黙していた。
「あの……ランス様?」
「い、いや……何でもない、気にするな。とにかく気に入ってくれたなら良かった。ほら、お前も顔を洗って着替えて来い。一緒に朝食を食べに行こう」
「はい、すぐに支度してきます!」
寝間着の袖で涙を拭き、自分の部屋へと戻っていく。僕の去り際にランス様が「可愛すぎるだろ……」と悶えていたなんて、僕は全く知りもしなかった。
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