9 / 17
9話 勘違いの連鎖
しおりを挟む
僕たちはアップルパイやお皿を拾う手伝いをして、ダイニングへと連行された。
「やだもー! 友達じゃなくてそういう関係ならちゃんと最初に言っといてよー!」
母さんは新しいアップルパイをテーブルに置きながら僕の肩をバシッと叩く。
「いたっ、だから違うんだって……」
僕はあまり意味のない抵抗を続けている。
「あんなの見せつけておいて、今更恥ずかしがることなんかないよ!」
「ノア……ごめん……あ、美味っ……」
ジークはアップルパイをかじりながらそう言った。
「いや、もういいよ……。ホント? 領主のご子息様のお口に合ってる?」
「領主のご子息様だって!?」
母さんが声を荒らげる。
「うわ……しまった……」
その母さんの反応を見て、僕はうかつに“領主”という単語を出したのを後悔した。
「ははは……家で食べさせられていたデザートより、このアップルパイの方がよっぽど美味いよ」
「やだもー! ジークちゃんてばぁ! 大変大変、父さんに知らせないと。あんたーあんたー!」
母さんがそう言ってリビングから出て行ってしまった。
そして裏の果樹園からとんでもない台詞が聞こえてくる。
「あんた大変だよ! ノアが領主様のところへ嫁ぐかもしれないよ!」
「何だって!? 本当か!?」
「あー、ヤバいヤバいヤバい……!」
僕は頭を抱えてあたふたする。
「はっはっは! 楽しいご家族だな!」
ジークはのんきに大笑いをしている。
「ジーク、笑ってる場合じゃないからね? 母さんたち今とんでもない勘違いしてるからね、色々」
「あぁ、分かってるよ。俺が家出中で領主の家に嫁ぐのは無理かもしれないって、ちゃんと説明しとく」
「説明してくれるのそこだけなの!?」
「ははは……!」
ジークはすごく楽しそうに笑っていた。
なんだかその笑顔を見ていると、もういいやって気持ちになってくる。
その後、ジークは宣言通り家出中であることを両親に告げたが、今度は駆け落ちと勘違いされて、両親のテンションは更に上がった。
そしてその日から僕もジークも実家で寝泊まりしながら、この周辺の森や洞窟の魔物討伐を始めた。
「やだもー! 友達じゃなくてそういう関係ならちゃんと最初に言っといてよー!」
母さんは新しいアップルパイをテーブルに置きながら僕の肩をバシッと叩く。
「いたっ、だから違うんだって……」
僕はあまり意味のない抵抗を続けている。
「あんなの見せつけておいて、今更恥ずかしがることなんかないよ!」
「ノア……ごめん……あ、美味っ……」
ジークはアップルパイをかじりながらそう言った。
「いや、もういいよ……。ホント? 領主のご子息様のお口に合ってる?」
「領主のご子息様だって!?」
母さんが声を荒らげる。
「うわ……しまった……」
その母さんの反応を見て、僕はうかつに“領主”という単語を出したのを後悔した。
「ははは……家で食べさせられていたデザートより、このアップルパイの方がよっぽど美味いよ」
「やだもー! ジークちゃんてばぁ! 大変大変、父さんに知らせないと。あんたーあんたー!」
母さんがそう言ってリビングから出て行ってしまった。
そして裏の果樹園からとんでもない台詞が聞こえてくる。
「あんた大変だよ! ノアが領主様のところへ嫁ぐかもしれないよ!」
「何だって!? 本当か!?」
「あー、ヤバいヤバいヤバい……!」
僕は頭を抱えてあたふたする。
「はっはっは! 楽しいご家族だな!」
ジークはのんきに大笑いをしている。
「ジーク、笑ってる場合じゃないからね? 母さんたち今とんでもない勘違いしてるからね、色々」
「あぁ、分かってるよ。俺が家出中で領主の家に嫁ぐのは無理かもしれないって、ちゃんと説明しとく」
「説明してくれるのそこだけなの!?」
「ははは……!」
ジークはすごく楽しそうに笑っていた。
なんだかその笑顔を見ていると、もういいやって気持ちになってくる。
その後、ジークは宣言通り家出中であることを両親に告げたが、今度は駆け落ちと勘違いされて、両親のテンションは更に上がった。
そしてその日から僕もジークも実家で寝泊まりしながら、この周辺の森や洞窟の魔物討伐を始めた。
32
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる