【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音

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13話 寝たフリ

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 翌日も汽車の中で1日を過ごした。

 3日汽車で北へ向かったあと、そこからは2日かけて現地まで徒歩で行く。なんとも遠い道のりだ。



 そしてその日の夜。僕はヴォルクに言われた通り寝たふりをして待っていた。

 やがて2人の寝息が聞こえてくると、ヴォルクがごそごそと僕のベッドへと潜り込んできた。

 本当に来てくれた。しかも、2人が寝てからすぐだ。
 僕は嬉しくなってヴォルクの方を向く。

「お、ちゃんと起きてたじゃねぇか」
 ヴォルクがそうコソッと言う。

「うん。偉い?」
 僕もコソッと返す。

「あぁ、偉い偉い」
 彼はそう言って僕の頭をヨシヨシと撫でる。

「じゃぁ、ご褒美ちょうだい? ん」
 僕はいつものように調子に乗ってそう言うと、目をつぶりキスをしてというアピールをした。

 どうせ“調子に乗んな”とか言ってデコピンでもされるかと思ったけど、すぐに彼の唇が僕の唇に重なってちょっとビックリした。


 やがて唇が離れると、ヴォルクは僕の服を脱がせようとしてくる。

「ちょ、ちょっと待って」
 僕は小声で制止する。

「ぁあ? 待てる訳ねーだろアホか」

 待てないって……ヴォルク、僕に欲情してくれてるんだ……。
 それはちょっと嬉しい……けど!

「だ、ダメだよ2人とも起きちゃう」

「いいだろ別にこの際起きようがなんだろうが」
 何を言ってるんだこの人!?

「だ、だめだめだめだめ……ホント、ダメだってば」

「るせぇな」
「ん……」

 僕はキスで文句を塞がれる。そして再び動き出すヴォルクの手。

「んんんー!」

 僕がヴォルクの胸板をドンドンと叩きまくっていると、パチッと音がして室内の電気が灯った。

「あ?」
 ヴォルクが唇を離し、2人で見上げる。

 するとそこには怒りでわなわなと震えるケントとルークの姿があった。

「ヴォルク……てめぇ何してんのか分かってんのか……?」
 と、ルーク。

「エミルから離れてよこのドスケベ変態野郎……!」
 と、ケント。

「ぁあ? こいつは俺のもんだ。俺がどーしようが俺の勝手だろうが」
 ヴォルクはもはや開き直っている。

「なら、俺らも行動に出るまでだ……」
 ルークはそう言って手錠のような謎の拘束具を取り出す。

 何それルークどこで手に入れたの!?

「念の為秘密の店で買っといて良かったね~」
 ケントも同じものを持っている。

 秘密の店って何!?

「あ? てめぇらそれで俺のもんを拘束してどうする気だ。どっちが変態野郎だよクソが!」

 え、僕あれで拘束されるの!?

「何か勘違いしてねぇかお前……?」
 ルークはそう言って意地悪く微笑むとケントと同時にヴォルクへと飛びかかった。




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