【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音

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11話 波乱の遠征パーティ

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 僕がその日の自分で決めている討伐ノルマを終えてアジトへ帰宅すると、今日も町に出かけていたヴォルクが僕を出迎えた。

「ヴォルク! 帰ってたんだね!」
「ん、お前への依頼を持って帰ってきた」

 ヴォルクはそう言って1枚の用紙を渡してくる。

「何これ……?」

 それは『牙狼』の魔道士に対する北の隣国からの魔物の討伐要請だった。

 このギルドに魔道士は僕しかおらず、つまり『牙狼』での僕の頑張りがギルドに評価されて、遂に僕に対して直接依頼が来たと言うことになる。

「北のハールス王国からの魔物の討伐依頼だ。あのあたりは装甲の硬い魔物が多いから、この国からも魔道士がよく派遣されんだよ」

「わぁ、それが僕に……? すごいなぁ。でも、ハールス王国って、遠そうだね……」

「片道5日は最低でもかかるな。だから、パーティを組んでいく。俺とお前と……」

 ヴォルクと一緒に片道5日の旅行? 僕はそう思うと嬉しくなってしまった。

 しかし、このタイミングでケントとルークが討伐から帰還する。

「それ、俺も参加するからっ」
 と、ケント。

「俺も行く。これでパーティ編成は完了だな」
 と、ルーク。

「ふざけんなよ。てめぇら盗み聞きしてやがったな」
 ヴォルクは一気に不機嫌になる。

「行き帰りだけで10日もヴォルクに独り占めなんて絶対させない」
「あまり一緒に戦闘に行ったことのない他のメンバーよりも、一緒に討伐経験のある俺が行くほうが絶対良い」

 ケントもルークも降りる気はなさそうだ。

「嫌だ、お前らだけは絶対に嫌だ」

 ヴォルク……“ダメ”とかじゃなくてもう“嫌”って言っちゃってるし。個人的な理由丸出しだよ……。

「なら、エミルに決めてもらおう?」
 と、ケント。やっぱ……そうなりますか……。

「んだな。今回のメインはエミルだからな」
 ルークもそう言ってうなずく。

「チッ。しゃーねぇ。エミル、お前が決めろ」
 と、ヴォルク。

「えっと……僕……」

 ヴォルクは、前に宿屋に連れ込んで説教したから、僕が断るって思ってそんな余裕な顔してるのかな。

 でも、僕だって、正直このメンバー以外あんまり知らないんだもん、そんなのやだよ。

「僕、他の人のことあんまり分からないから……この4人で行きたい」

「やったー! エミル大好きちゅーしていい?」
 とケントが迫って来たので、僕は「ちゅーはだめ!」と断固拒否した。

 すると、そんな僕の抵抗を見てか、ヴォルクは「ま、いいか……」と納得した。

「エミルありがとな。これからしばらくよろしく」

 そう言ってルークが握手を求めてきたので、僕は自然に「うん、よろしくね」と握手を返すと、頭上から舌打ちが聞こえてきた……。

 握手くらい良くない!?



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