劇場型殺人“アリス”

野田莉帆

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作者、『罪人はアリアを歌う』を振り返る。

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「ぬるい、ぬるーい、ぬるぅーい、ぬるってる(あ、内輪ネタだ)」

 何度も何度も口に出したが、それでも足りないくらい描写がぬるいので、諦めた私は「ぬるり、ぬるり」と歌いながら書き上げて、『罪人はアリアを歌う』を振り返る。

 読んだ小説によく影響される私。

 今までグロとホラーに関しては「苦手なんですぅ」とかわいこぶって、ろくに読まなかった。

 結果、影響される小説もない。参考にできる資料もない(怖がりのため、見ることができないと思われた)。そうして、感じるのは描写の限界だった。

 元原稿には、えぐみがあった。が、メアは顎が強すぎると思うくらい、ばりばり食べている上に、歩はお腹を開かれてしまっていた。異臭がしそうだった。

 仕方ない。これで行こう、と投稿した第10部分。ぬるいのに、私が自分で怖いと思う点が2点ある。

 1点め。「家へと足を進めようとした時、鈍い衝撃が歩の頭部を打った」という箇所。

 リアが歩の手を引いているから、後ろから殴ったとなると、メアしかいない。武器になるものを隠し持っている様子はなかったから、素手での攻撃のはず。

 でも、歩とメアの身長差って、30cmはあると思う。手が届かないとまでは言わないが、殴って昏倒させることは無理では……?

 作者さえも感じられなかった存在。まるで、黒ずくめの仲間のように、もう1人。歩の背後から忍び寄る影があるとしか、私には思えなかった。恐ろしい。

 でも、こういう怖さは、好きかもしれない。例えば、さりげなく太陽が東に沈んでいく描写があって、この世界が現実ではないことを知る怖さ。

 ただ、文章力がないと、バグだとしか思われないことを初めて、私は理解した。残念なことだ。

 2点め。「無邪気な笑い声が、いつまでも響いていた」という箇所。

 描写がぬるすぎて、忘れ去られているかもしれない。が、歩の耳はもう片方も切り取られる寸前だった。それでも、いつまでも笑い声が響いているなんて。恐ろしい。

 耳を失っても聞こえている声が消えることはない。歩の中に、双子の声はずっと残るのだ。

 心に引っかかるところがあって、やたら解説っぽくなってしまった。書きたかったのは、こういう怖さなのに。読み返して、思う。

 ——やっぱり、ただのバグっぽいな。
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