5 / 17
作者、『入り相に十字架』を振り返る。
しおりを挟む
投稿ボタンを押して、ふーっと一息つく。
今回は苦労した。直すところが多かった。
なぜか。元原稿が、『入り相に十字架』だけ神視点の3人称で書かれていたからだ。確かに、『入り相に十字架』は3人称で書く方が格好良い。それは、認める。
あーあ、逃げられちゃった、なんて。歩が病室を出た後で、タバコをくゆらせる。シラフなリデルの描写は本当に捨てがたい。
でも、章ごとに人称を変えるのは、私の中では完全にナシ。だから『入り相に十字架』の文章は、ほとんど書き直した。
すると、文章ってやっぱり面白いな、と思う現象が起きた。
3人称で少女と表記されていた箇所を、そのまま使用したところ、一般的な少女という意味ではなく、歩から見ての少女という意味に変わり、元原稿よりもリデルが少し幼くなっていた。
本当に面白い、と思った私。リデルを少し幼いままにしてしまった。
リデルのキャラを見直そう、と元原稿を見る。
すぐに言葉が出なかった。元原稿のリデルのキャラは、問題だらけのように思えた。
まず、最初に。リデルの登場シーンで、彼女はパンクファッションに身を包み、という表現があった。
あ、パンクはダメだ、と私は思った。
何の思想も示さずに、パンクなんて出した日には、「赤いボンテージパンツ履いてりゃ、パンクになるわけじゃねえんだよ」と、怖い人に突っ込まれそうだ。
私が小説でパンクという言葉を出す日には、「小説を——、ブチ壊す」という思想で、書く。もちろん、そんな日は来ない。パンクはやめよう、パンクは。
次に。リデルの武器について。
元原稿では、リデルは十字架を持つというより、背負う勢いだった。どうもこの十字架とは、鈍器のような武器で、縦に振り上げて、縦に振り下ろして使うらしい。その証拠に、歩が攻撃をかわした後の描写では、十字架はベッドにぶっ刺さっていた。
何て、汎用性の低い武器なんだ、と私は思った。
少女が身の丈ほどの十字架を縦に振り上げてから振り下ろすまで、いったい何秒かかる。しかも、全体重をかけて振り下ろすような武器がベッドに刺さったら、絶対に抜けない。
それなのに、元原稿では十字架で合計3回も攻撃される。私は少女の武器を、ささっと槍に作り変えた。それでも結局、壁に刺さって抜けなかった。本末転倒だ。
なんとか攻撃シーンを終えて、歩が逃げるシーンを書いた私。またしても、壁にぶち当たった。
歩がエントランスの自動ドアをこじ開ける、という。
あれ、病院の自動ドアって、内鍵ついてないの?
不思議に思った私、少し調べる。なるほど。ついていないものが多そうだった。スイッチは入り口付近にありそうだが、初見では見つけられそうにない。
前に1度、知らない人が自動ドアを突き抜けていくのを、私はリアルタイムで見たことがあった。その自動ドアのガラスは人型に、くり抜かれていた。事実は小説より奇なり。
だから、無理ではないな、と私は匙を投げた。だいぶ疲れていた。私は、独りでつぶやいた。
——大変そうだけど。歩、頑張れ。
今回は苦労した。直すところが多かった。
なぜか。元原稿が、『入り相に十字架』だけ神視点の3人称で書かれていたからだ。確かに、『入り相に十字架』は3人称で書く方が格好良い。それは、認める。
あーあ、逃げられちゃった、なんて。歩が病室を出た後で、タバコをくゆらせる。シラフなリデルの描写は本当に捨てがたい。
でも、章ごとに人称を変えるのは、私の中では完全にナシ。だから『入り相に十字架』の文章は、ほとんど書き直した。
すると、文章ってやっぱり面白いな、と思う現象が起きた。
3人称で少女と表記されていた箇所を、そのまま使用したところ、一般的な少女という意味ではなく、歩から見ての少女という意味に変わり、元原稿よりもリデルが少し幼くなっていた。
本当に面白い、と思った私。リデルを少し幼いままにしてしまった。
リデルのキャラを見直そう、と元原稿を見る。
すぐに言葉が出なかった。元原稿のリデルのキャラは、問題だらけのように思えた。
まず、最初に。リデルの登場シーンで、彼女はパンクファッションに身を包み、という表現があった。
あ、パンクはダメだ、と私は思った。
何の思想も示さずに、パンクなんて出した日には、「赤いボンテージパンツ履いてりゃ、パンクになるわけじゃねえんだよ」と、怖い人に突っ込まれそうだ。
私が小説でパンクという言葉を出す日には、「小説を——、ブチ壊す」という思想で、書く。もちろん、そんな日は来ない。パンクはやめよう、パンクは。
次に。リデルの武器について。
元原稿では、リデルは十字架を持つというより、背負う勢いだった。どうもこの十字架とは、鈍器のような武器で、縦に振り上げて、縦に振り下ろして使うらしい。その証拠に、歩が攻撃をかわした後の描写では、十字架はベッドにぶっ刺さっていた。
何て、汎用性の低い武器なんだ、と私は思った。
少女が身の丈ほどの十字架を縦に振り上げてから振り下ろすまで、いったい何秒かかる。しかも、全体重をかけて振り下ろすような武器がベッドに刺さったら、絶対に抜けない。
それなのに、元原稿では十字架で合計3回も攻撃される。私は少女の武器を、ささっと槍に作り変えた。それでも結局、壁に刺さって抜けなかった。本末転倒だ。
なんとか攻撃シーンを終えて、歩が逃げるシーンを書いた私。またしても、壁にぶち当たった。
歩がエントランスの自動ドアをこじ開ける、という。
あれ、病院の自動ドアって、内鍵ついてないの?
不思議に思った私、少し調べる。なるほど。ついていないものが多そうだった。スイッチは入り口付近にありそうだが、初見では見つけられそうにない。
前に1度、知らない人が自動ドアを突き抜けていくのを、私はリアルタイムで見たことがあった。その自動ドアのガラスは人型に、くり抜かれていた。事実は小説より奇なり。
だから、無理ではないな、と私は匙を投げた。だいぶ疲れていた。私は、独りでつぶやいた。
——大変そうだけど。歩、頑張れ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

死界、白黒の心霊写真にて
天倉永久
ホラー
暑い夏の日。一条夏美は気味の悪い商店街にいた。フラフラと立ち寄った古本屋で奇妙な本に挟まれた白黒の心霊写真を見つける……
夏美は心霊写真に写る黒髪の少女に恋心を抱いたのかもしれない……
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/3/14:『かげぼうし』の章を追加。2025/3/21の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/13:『かゆみ』の章を追加。2025/3/20の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/12:『あくむをみるへや』の章を追加。2025/3/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。
2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる