25 / 50
第二章 サンディル過去戻り編
第二章 ②
しおりを挟む
19年前に着いたのだろうか?
過去戻りをするのは勿論初めてだから、魔法を発動した時に体がフワッと浮き暗闇を彷徨う感覚の後、自然と目が開いて今だ。
邸は身に覚えのある建物。
アディルを物陰から見るのに只管通ったスパナート伯爵邸なのだが19年前なのかがわからない。
邸の中に入ってみようと思った途端、何処かの部屋に居た。
思っただけで意識を飛ばせるなんて凄いな。
そこには若いスパナート伯爵と向かい合って座ってる男女は⋯⋯女性の方には見覚えがある。
アディルの祖母だ、という事は男性は祖父か。
言い合いをしているようだな。
「だから婚約も結婚もしないと言ったじゃないですか」
「スパナート伯爵家はどうするつもりだ」
「分家から養子を貰えばいいでしょう、何に拘ってるんですか」
「拘るに決まってるだろう。何故他所から養子を貰わなければならないんだ!お前が作ればいいだけだ」
「じゃあ何処かで作ってきますよ。それでいいでしょう」
「なんて事!そんな女性の尊厳を無視するなんてアーチー私は貴方をそんな風に育ててしまったの」
「母上泣かないでください。
女性の尊厳って言いますけどね、あいつらは影では何やってるかわからない、とんでもない生き物ですよ。
常に人を貶める悪口、影では弱いものを虐める、男に猫なで声で媚を売る娼婦のように。
それを全て澄ました顔でやって退けるんですよ。
それこそうちの家系に入れたくない」
「そんな女性ばかりではないわよ。
中にはいるかもしれないけれど、実際いるかもしれないけど、でも、でも⋯⋯。では貴方は母もそんな女だと思っていたの?」
「そんなわけないでしょう。母上が特殊なんですよ。
周りが心配になるほどお人好しで、人の悪を疑わない、こちらが心配にしかなりませんね」
「母上のいいところじゃないか」
「父上がそうやって甘いから母上は悪意を持って近づかれてもわからないんですよ!
とにかく結婚の話はしないでください」
「でもね、サイフェル侯爵家の長女はとても慎ましやかな女性なのよ。
こう言ってはなんだけど侯爵が後妻を貰ってから、かなり虐げられてると聞いたわ。
先妻のお子なのに庶子とか言われてるそうよ。可哀想でしょう、だから貴方が救ってあげれば、ねっ。人助けだと思ってお願いよ」
「また可哀想が始まったんですか。父上止めてくださいよ、可哀想で結婚を押し付けられたらたまったものじゃない」
「フン、そんな事言っても結婚しないと常々言ってるお前が花嫁を連れてくるわけでもないんだからいいじゃないか、とにかく話は進めるからな」
どうにもお互いに思ってる事だけを言い合いしているが俺は少しスパナート伯爵の気持ちがわかるな。
まぁそれはともかくとしてキーワードが出たな。
サイフェル侯爵家の長女の所へ行こう。
──────────────
見たこともない所に来たがここは⋯⋯小屋か?
男女二人が抱き合ってるんだが、目のやり場に困る。
⋯⋯良かった、口づけだけだった。
13歳のときに閨ごとの授業を受けたが実際に目の当たりにするのかとドキドキしてしまった、ふぅびっくりさせるなよ。
と、思っていたら俺は驚愕した。
男の方が俺のお祖父様にそっくりだ、本人か!と思ったが目元にホクロがない。
消してないかよく観察したがそうではないようだ。
こちらも婚約の話をしている。
男に女が自分の婚約が決まりそうだと言ってるな。
男が不甲斐ない自分を責めてるみたいだ。
「もう少しだ、半年なんとかやり過ごしてくれ。そしたら迎えに来るから」って言ってる。
こちらは駆け落ちでもするつもりだったのか?
その後名残惜しそうに別れた2人は小屋を出たので迷ったが男の方についていってみる。
一軒の家に入っていったので続く、これは平民の生活なのかな?
入ってすぐがキッチンでこんな作り見たことないな。
男は中にいた母親らしき女性にジョイと呼ばれてる。
男が奥の部屋に行ったので付いていこうとした時、壁に飾っている絵が目に入った。
髪の色が違うが顔は俺のお祖父様にそっくりな絵が置いてあった。
さっきの男とも髪の色以外そっくりだ。
これは⋯⋯どう考えてもお祖父様の兄弟の家ではないのか?
ではジョイと呼ばれた男は父の従兄弟になるのか?
ではメリルが王家の血を?
チェリーナ様はキャンベラの方ではないかと言っていたが⋯⋯。
いや、まだ決めつけるのは早計だ。
じっくり観察しなければ、俺が観察した物を戻った時に皆が見るのだから。
男は部屋に着替えに行っていたみたいだ。
戻ってキッチンの前にあるテーブルに着く。
「なぁ母さん、あの人はまだ生きてるの?」
「まだ王家から発表がないから死んではいないんじゃない」
「早く死んでくれないかな、病気なんだろう」
「しっ!滅多な事言わないで、お願いだから。貴方まで生きてるだけで罪に問われたら、私は生きていけないわ」
「母さん、でも時間があまりないんだ。ティーナが侯爵から婚約を言い渡されてる。
スパナート伯爵家らしいんだ、侯爵家は金がなくなってきたからティーナを売るつもりなんだ」
「まぁお嬢様が?お労しい。奥様が早世したばっかりにあんな目に合って挙句に売られるように婚約しなければならないのね」
「だから早く救わないと行けないんだよ。
あの女が死んだら睨みを利かす者が居なくなって、父さんが受け取るはずの王家の遺産の分配もらえるんだろう。
そしたらこの国を3人で出るつもりなのに。
半年前に伯父さんが知らせてくれた時は保って一年って言ってたけど、一刻も早く欲しいんだ」
会話からして王族の家系に間違いない。
何かの罪で廃嫡されて平民に落とされたのか?
いや、しかしその様な記載は王家の記録にはなかったはずだ。
王族は四代前までは調べたのだからな。
⋯⋯⋯隠されていた真実なのか。
2人は食事を始めたので、先程のサイフェル侯爵家の方に飛んだ。
さっきの女が⋯嘘だろ、ここの長女だったよな。
床拭きをしているんだが、この女がティーナか。
凄いな、絵に描いたような虐げ方だ。
何度も廊下を汚されて、その度に拭き直しだ。
食事は普通に与えてる。
侯爵が高く売れたと下品に笑ってるが、こんな奴、我が国にいたかな?
覚えがないぞ、帰ったら調べてみよう。
ティーナの部屋は、昼間のあの小屋の近くだった。
この女を虐げる為だけに建てたのか?
自分の娘だろうにあの侯爵は酷すぎる、これはアディルの祖母じゃなくても救いたくなるぞ。
何故か別の若い女がその部屋に入って行ったから付いていったら、ティーナに罵詈雑言浴びせてる。
でもティーナも言い返してるな、虐げられてるわりに気が強いのか?
どうもあのジョイって男の取り合いをしてるみたいだな。
まぁ王家の出自なら美男子だもんな。
ジョイは我が国有数の商会、ダンテ商会で働いてるのか。
ダンテ商会も見た方が良さそうだ。
不思議な事に意識しか飛ばしてないが疲れると眠くなるみたいだ。
浮遊してるだけなのに疲れるってあるのか?
目かな。
俺は、過去戻りの仕組みを手探りつつ、観察を毎日続けて行った。
過去戻りをするのは勿論初めてだから、魔法を発動した時に体がフワッと浮き暗闇を彷徨う感覚の後、自然と目が開いて今だ。
邸は身に覚えのある建物。
アディルを物陰から見るのに只管通ったスパナート伯爵邸なのだが19年前なのかがわからない。
邸の中に入ってみようと思った途端、何処かの部屋に居た。
思っただけで意識を飛ばせるなんて凄いな。
そこには若いスパナート伯爵と向かい合って座ってる男女は⋯⋯女性の方には見覚えがある。
アディルの祖母だ、という事は男性は祖父か。
言い合いをしているようだな。
「だから婚約も結婚もしないと言ったじゃないですか」
「スパナート伯爵家はどうするつもりだ」
「分家から養子を貰えばいいでしょう、何に拘ってるんですか」
「拘るに決まってるだろう。何故他所から養子を貰わなければならないんだ!お前が作ればいいだけだ」
「じゃあ何処かで作ってきますよ。それでいいでしょう」
「なんて事!そんな女性の尊厳を無視するなんてアーチー私は貴方をそんな風に育ててしまったの」
「母上泣かないでください。
女性の尊厳って言いますけどね、あいつらは影では何やってるかわからない、とんでもない生き物ですよ。
常に人を貶める悪口、影では弱いものを虐める、男に猫なで声で媚を売る娼婦のように。
それを全て澄ました顔でやって退けるんですよ。
それこそうちの家系に入れたくない」
「そんな女性ばかりではないわよ。
中にはいるかもしれないけれど、実際いるかもしれないけど、でも、でも⋯⋯。では貴方は母もそんな女だと思っていたの?」
「そんなわけないでしょう。母上が特殊なんですよ。
周りが心配になるほどお人好しで、人の悪を疑わない、こちらが心配にしかなりませんね」
「母上のいいところじゃないか」
「父上がそうやって甘いから母上は悪意を持って近づかれてもわからないんですよ!
とにかく結婚の話はしないでください」
「でもね、サイフェル侯爵家の長女はとても慎ましやかな女性なのよ。
こう言ってはなんだけど侯爵が後妻を貰ってから、かなり虐げられてると聞いたわ。
先妻のお子なのに庶子とか言われてるそうよ。可哀想でしょう、だから貴方が救ってあげれば、ねっ。人助けだと思ってお願いよ」
「また可哀想が始まったんですか。父上止めてくださいよ、可哀想で結婚を押し付けられたらたまったものじゃない」
「フン、そんな事言っても結婚しないと常々言ってるお前が花嫁を連れてくるわけでもないんだからいいじゃないか、とにかく話は進めるからな」
どうにもお互いに思ってる事だけを言い合いしているが俺は少しスパナート伯爵の気持ちがわかるな。
まぁそれはともかくとしてキーワードが出たな。
サイフェル侯爵家の長女の所へ行こう。
──────────────
見たこともない所に来たがここは⋯⋯小屋か?
男女二人が抱き合ってるんだが、目のやり場に困る。
⋯⋯良かった、口づけだけだった。
13歳のときに閨ごとの授業を受けたが実際に目の当たりにするのかとドキドキしてしまった、ふぅびっくりさせるなよ。
と、思っていたら俺は驚愕した。
男の方が俺のお祖父様にそっくりだ、本人か!と思ったが目元にホクロがない。
消してないかよく観察したがそうではないようだ。
こちらも婚約の話をしている。
男に女が自分の婚約が決まりそうだと言ってるな。
男が不甲斐ない自分を責めてるみたいだ。
「もう少しだ、半年なんとかやり過ごしてくれ。そしたら迎えに来るから」って言ってる。
こちらは駆け落ちでもするつもりだったのか?
その後名残惜しそうに別れた2人は小屋を出たので迷ったが男の方についていってみる。
一軒の家に入っていったので続く、これは平民の生活なのかな?
入ってすぐがキッチンでこんな作り見たことないな。
男は中にいた母親らしき女性にジョイと呼ばれてる。
男が奥の部屋に行ったので付いていこうとした時、壁に飾っている絵が目に入った。
髪の色が違うが顔は俺のお祖父様にそっくりな絵が置いてあった。
さっきの男とも髪の色以外そっくりだ。
これは⋯⋯どう考えてもお祖父様の兄弟の家ではないのか?
ではジョイと呼ばれた男は父の従兄弟になるのか?
ではメリルが王家の血を?
チェリーナ様はキャンベラの方ではないかと言っていたが⋯⋯。
いや、まだ決めつけるのは早計だ。
じっくり観察しなければ、俺が観察した物を戻った時に皆が見るのだから。
男は部屋に着替えに行っていたみたいだ。
戻ってキッチンの前にあるテーブルに着く。
「なぁ母さん、あの人はまだ生きてるの?」
「まだ王家から発表がないから死んではいないんじゃない」
「早く死んでくれないかな、病気なんだろう」
「しっ!滅多な事言わないで、お願いだから。貴方まで生きてるだけで罪に問われたら、私は生きていけないわ」
「母さん、でも時間があまりないんだ。ティーナが侯爵から婚約を言い渡されてる。
スパナート伯爵家らしいんだ、侯爵家は金がなくなってきたからティーナを売るつもりなんだ」
「まぁお嬢様が?お労しい。奥様が早世したばっかりにあんな目に合って挙句に売られるように婚約しなければならないのね」
「だから早く救わないと行けないんだよ。
あの女が死んだら睨みを利かす者が居なくなって、父さんが受け取るはずの王家の遺産の分配もらえるんだろう。
そしたらこの国を3人で出るつもりなのに。
半年前に伯父さんが知らせてくれた時は保って一年って言ってたけど、一刻も早く欲しいんだ」
会話からして王族の家系に間違いない。
何かの罪で廃嫡されて平民に落とされたのか?
いや、しかしその様な記載は王家の記録にはなかったはずだ。
王族は四代前までは調べたのだからな。
⋯⋯⋯隠されていた真実なのか。
2人は食事を始めたので、先程のサイフェル侯爵家の方に飛んだ。
さっきの女が⋯嘘だろ、ここの長女だったよな。
床拭きをしているんだが、この女がティーナか。
凄いな、絵に描いたような虐げ方だ。
何度も廊下を汚されて、その度に拭き直しだ。
食事は普通に与えてる。
侯爵が高く売れたと下品に笑ってるが、こんな奴、我が国にいたかな?
覚えがないぞ、帰ったら調べてみよう。
ティーナの部屋は、昼間のあの小屋の近くだった。
この女を虐げる為だけに建てたのか?
自分の娘だろうにあの侯爵は酷すぎる、これはアディルの祖母じゃなくても救いたくなるぞ。
何故か別の若い女がその部屋に入って行ったから付いていったら、ティーナに罵詈雑言浴びせてる。
でもティーナも言い返してるな、虐げられてるわりに気が強いのか?
どうもあのジョイって男の取り合いをしてるみたいだな。
まぁ王家の出自なら美男子だもんな。
ジョイは我が国有数の商会、ダンテ商会で働いてるのか。
ダンテ商会も見た方が良さそうだ。
不思議な事に意識しか飛ばしてないが疲れると眠くなるみたいだ。
浮遊してるだけなのに疲れるってあるのか?
目かな。
俺は、過去戻りの仕組みを手探りつつ、観察を毎日続けて行った。
94
お気に入りに追加
940
あなたにおすすめの小説
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない
望月 或
恋愛
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」
ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。
まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。
彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。
そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。
仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。
そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。
神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。
そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった――
※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。
※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。
大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました
ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。
愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
完結まで執筆済み、毎日更新
もう少しだけお付き合いください
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
王妃の鑑
ごろごろみかん。
恋愛
王妃ネアモネは婚姻した夜に夫からお前のことは愛していないと告げられ、失意のうちに命を失った。そして気づけば時間は巻きもどる。
これはネアモネが幸せをつかもうと必死に生きる話
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる