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第二章 サンディル過去戻り編
第二章 ➀過去戻りの前に
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「おい!見つかったぞ。お前の影武者が」
先触れもなく突然団長が家族で寛いでいるサロンに飛び込んできた。
「テモシー、ロバットの管理はお前の役目だ」
「旦那様、何度も言いますが私には魔力はないのです。
無理に決まっております。諦めてください」
父が家令のテモシーに苦言を呈すがいつもの返しをされている。
これは一種の儀式なのか?
俺はサンディル・メイナード 現在15歳。
父はウィルハイム・メイナード公爵で王弟。
この国では限りなく王家に近い家柄だ。
前述の団長とは俺が春から所属するはずの王宮魔術師団の団長ロバット・ヘンデル様だ。
それにしても団長の魔力は俺よりは少ないがなんともいえず甘い匂いがする。
これは俺だけが感じるものらしい。
俺の魔法の指南をしてくださる愛しい婚約者の母親、チェリーナ様が仰っていた。
今から4年前突然陛下が【夢見】を発現された。
夢見とはある種の未来予知だ。
これは過去に何件かの報告があるらしく、この辺は父に聞いたがそれで何を講じたのかは王家の秘匿だ。
ただ夢見は王家の者が見る事が多く、そして必ず良い事ではない。
何らかの危険察知能力ではないかと言い伝えられている。
陛下が見た夢見は、なんとも曖昧な物ではあったが内容が内容だけに極秘で熟考する事になった。
結果は禁忌の魔法【過去戻り】を実施する事
過去戻りとは文字通り過去に戻る魔法だ。
これは遥か昔の魔術の祖であったお方が作った魔法と言われているが、遥か昔過ぎて真偽の程はわからない。が、その方の保護魔法が掛かっていると云われる指南書にて記載がある魔法だった。
この指南書は代々魔術師団の団長に受け継がれるものらしい、過去戻りの他にも何件かの魔法の記載があるらしいのだが、それらは全て禁忌になっている。
この魔法が禁忌になったのはこれを作った魔術の祖が苦言を呈しているから。
この魔法を指針にして新たに魔法を作り、過去に行き歴史を変える事を懸念したからと記載があった。
その書によると、どんなにひどい過去でもそれを変えてはならない。
何故なら一人に都合が悪くても他者の幸せを奪ってはならないから。
だからこそなのか、この魔法は意識のみが過去に戻る。
意識だけなので過去を弄ることは出来ない。
指針は現在生きてる者。
その過去を遡ることによってその者や周りの者の歴史を見るという物。
今回はその魔法を使う事になった。
しかしこの魔法の最大の弱点とも言えるべき物が、莫大な魔力持ちが2人以上必要な事だ。
まず過去戻りに魔力がいる、そしてそれを維持できる魔力もいる。
過去に戻っている時は体に意識がない状態なので、戻った者は眠りに就いた状態になる。
しかし魔力ごと過去に戻っているので体にはほぼ魔力がない状態になる。
魔力を持っている者は魔力が無くなると死に至る、それを回避する為に、意識のない体に魔力を送る者がいる。
理には適っているが、これを読んだ時これって出来る奴いるのか?という感想だった。
だが、現代に居たのだ。
一人はチェリーナ様、そしてもう一人が俺だ。
本来なら例え王命でも何年も寝たきりになってしまうとか絶対嫌だ、断る。
でも今回はそうも言ってられなくなった、俺の最愛が不幸にならない為に一肌脱がなくてはならない。
俺の最愛アディルの身近にこの夢見に関係する人物がいるのだが、こいつ等がアディルに害を及ぼす存在なのだ。
まったくとんでもない者を引き取ったとスパナート伯爵に苦言を呈したかったがチェリーナ様の旦那様なのであまり大きな声では言えない。
そもそも父であるメイナード公爵にアディルとの婚約を条件にされたから俺が断る理由はないんだけれど。
そんなこんなで俺が過去に戻る事になった。
それからこの魔法に必要な魔法を団長とチェリーナ様に習う。
習得するのに2年も掛かった。
その間に魔術師団の幹部がそれぞれやれる事をやってくれていて、後は俺の影武者を見つけるだけだった。
当初は俺を病気療養中にしようかという案が有力だったが、何処まで遡ることにするかという計算をしてくれた陛下の側近が8年とかフザけた年数を叩き出したので、病気療養ではメイナード公爵家の存続に関わるため影武者を用意することになったのだ。
その件は団長が一手に引き受けたがかなり苦労していたのを俺とチェリーナ様は知っている。
条件が、魔力保持者で有る事、俺に顔が似てる事、歳が俺に近しい物、背格好が変わらぬ者。
普通に考えていないだろうと思っていたのだが⋯⋯。
居たらしい。
団長の仕事振りに俺は敬服した、普段は何考えてるかわからないフラフラフラフラしているチャラ男だと思っていた事を反省した。
俺に成りすます教授は他の者に任せて一刻も早く過去戻りをしてアディルの心を平穏に導かなければ、と言ってたら団長に国の安寧だと言われたが知った事じゃない。
俺はアディルが一番大事だ。
他はどうでもいい。
過去に戻る前に俺の影武者である、マーク・ポートに言い含めて置かなければ、これが一番大切なことだ。
「絶対にアディルに懸想するなよ。
もし破ったらお前の一族郎党全てを破壊してやる」
さぁ行こう。
先ずは指針をアーチー・スパナートにして19年前のスパナート伯爵家からスタートだ。
先触れもなく突然団長が家族で寛いでいるサロンに飛び込んできた。
「テモシー、ロバットの管理はお前の役目だ」
「旦那様、何度も言いますが私には魔力はないのです。
無理に決まっております。諦めてください」
父が家令のテモシーに苦言を呈すがいつもの返しをされている。
これは一種の儀式なのか?
俺はサンディル・メイナード 現在15歳。
父はウィルハイム・メイナード公爵で王弟。
この国では限りなく王家に近い家柄だ。
前述の団長とは俺が春から所属するはずの王宮魔術師団の団長ロバット・ヘンデル様だ。
それにしても団長の魔力は俺よりは少ないがなんともいえず甘い匂いがする。
これは俺だけが感じるものらしい。
俺の魔法の指南をしてくださる愛しい婚約者の母親、チェリーナ様が仰っていた。
今から4年前突然陛下が【夢見】を発現された。
夢見とはある種の未来予知だ。
これは過去に何件かの報告があるらしく、この辺は父に聞いたがそれで何を講じたのかは王家の秘匿だ。
ただ夢見は王家の者が見る事が多く、そして必ず良い事ではない。
何らかの危険察知能力ではないかと言い伝えられている。
陛下が見た夢見は、なんとも曖昧な物ではあったが内容が内容だけに極秘で熟考する事になった。
結果は禁忌の魔法【過去戻り】を実施する事
過去戻りとは文字通り過去に戻る魔法だ。
これは遥か昔の魔術の祖であったお方が作った魔法と言われているが、遥か昔過ぎて真偽の程はわからない。が、その方の保護魔法が掛かっていると云われる指南書にて記載がある魔法だった。
この指南書は代々魔術師団の団長に受け継がれるものらしい、過去戻りの他にも何件かの魔法の記載があるらしいのだが、それらは全て禁忌になっている。
この魔法が禁忌になったのはこれを作った魔術の祖が苦言を呈しているから。
この魔法を指針にして新たに魔法を作り、過去に行き歴史を変える事を懸念したからと記載があった。
その書によると、どんなにひどい過去でもそれを変えてはならない。
何故なら一人に都合が悪くても他者の幸せを奪ってはならないから。
だからこそなのか、この魔法は意識のみが過去に戻る。
意識だけなので過去を弄ることは出来ない。
指針は現在生きてる者。
その過去を遡ることによってその者や周りの者の歴史を見るという物。
今回はその魔法を使う事になった。
しかしこの魔法の最大の弱点とも言えるべき物が、莫大な魔力持ちが2人以上必要な事だ。
まず過去戻りに魔力がいる、そしてそれを維持できる魔力もいる。
過去に戻っている時は体に意識がない状態なので、戻った者は眠りに就いた状態になる。
しかし魔力ごと過去に戻っているので体にはほぼ魔力がない状態になる。
魔力を持っている者は魔力が無くなると死に至る、それを回避する為に、意識のない体に魔力を送る者がいる。
理には適っているが、これを読んだ時これって出来る奴いるのか?という感想だった。
だが、現代に居たのだ。
一人はチェリーナ様、そしてもう一人が俺だ。
本来なら例え王命でも何年も寝たきりになってしまうとか絶対嫌だ、断る。
でも今回はそうも言ってられなくなった、俺の最愛が不幸にならない為に一肌脱がなくてはならない。
俺の最愛アディルの身近にこの夢見に関係する人物がいるのだが、こいつ等がアディルに害を及ぼす存在なのだ。
まったくとんでもない者を引き取ったとスパナート伯爵に苦言を呈したかったがチェリーナ様の旦那様なのであまり大きな声では言えない。
そもそも父であるメイナード公爵にアディルとの婚約を条件にされたから俺が断る理由はないんだけれど。
そんなこんなで俺が過去に戻る事になった。
それからこの魔法に必要な魔法を団長とチェリーナ様に習う。
習得するのに2年も掛かった。
その間に魔術師団の幹部がそれぞれやれる事をやってくれていて、後は俺の影武者を見つけるだけだった。
当初は俺を病気療養中にしようかという案が有力だったが、何処まで遡ることにするかという計算をしてくれた陛下の側近が8年とかフザけた年数を叩き出したので、病気療養ではメイナード公爵家の存続に関わるため影武者を用意することになったのだ。
その件は団長が一手に引き受けたがかなり苦労していたのを俺とチェリーナ様は知っている。
条件が、魔力保持者で有る事、俺に顔が似てる事、歳が俺に近しい物、背格好が変わらぬ者。
普通に考えていないだろうと思っていたのだが⋯⋯。
居たらしい。
団長の仕事振りに俺は敬服した、普段は何考えてるかわからないフラフラフラフラしているチャラ男だと思っていた事を反省した。
俺に成りすます教授は他の者に任せて一刻も早く過去戻りをしてアディルの心を平穏に導かなければ、と言ってたら団長に国の安寧だと言われたが知った事じゃない。
俺はアディルが一番大事だ。
他はどうでもいい。
過去に戻る前に俺の影武者である、マーク・ポートに言い含めて置かなければ、これが一番大切なことだ。
「絶対にアディルに懸想するなよ。
もし破ったらお前の一族郎党全てを破壊してやる」
さぁ行こう。
先ずは指針をアーチー・スパナートにして19年前のスパナート伯爵家からスタートだ。
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