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第一章 公爵夫人になりました
正直者が馬鹿を見るなんてあってはならない!
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公爵家の庭は思ったよりも質素だったのは少しがっかり。
広めのアプローチの周りを飾る花達は丁寧な仕事を感じさせていたし、アプローチから横に逸れた小道の周りも可愛い花達が、その清らかさを遺憾なく発揮している。
にも関わらずガゼボを目指して公爵邸より奥に進むと途端に花が少ない。
ないわけではない、でも点々としているという表現でいいものか、花を抜いてる訳でもないのに所々に隙間が目立つ。
とりあえずは予定通りガゼボに向かったが、ここでまたがっかり。
「ローリーここは使用禁止区域なのかしら?」
「いえ奥様、奥様が行動される先にこのお邸で禁止の区域などありません」
「では何故。ここは行き届いてないの?」
「それは⋯⋯。私のような下のものがお話しできる事ではありませんので⋯⋯。ご容赦を」
ご容赦って言われてもね、ご容赦出来ないのだけどローリーにそれを言うわけにもいかないし。
ガゼボはもう何年も掃除がされてないのでしょうね。
朽ち果てたと言わざるおえない状態でした。
周囲の花と合わせても、こちらには人の手入れが何年もされてないと言うことなのね。
「奥様、このような場所に奥様を座らせる訳には参りません。よろしかったらこちらに」
「何をしているの!?ダルトン。立ちなさい」
「いえ⋯⋯でも⋯⋯」
呆れたことにダルトンは突然四つん這いになり、人間ベンチを己の背中で作り上げた。
何を考えてるの!私はまだうら若き16歳なのよ。
何故男の人の背中に座らなければならないのよ。
「ダルトン様それは奥様に対して非礼になります」
「ええっ!!奥様失礼いたしました。まさか失礼に当たるとは思ってもみませんでした、奥様のお疲れを少しでも癒そうと⋯⋯。申し訳ございません。申し訳ござい⋯」
「もういいわよ、そんなに謝られたら私が悪いみたいじゃない、とりあえずダルトンは立って、それからローリー私には執務室は用意されてるかしら?」
「ご案内いたします」
「ありがとう、ダルトン一緒に来て」
「畏まりました、奥様」
ハァ、サンディル様が王命を一番近しい侍従に話さなかった訳が解ったわ。
ダルトンそんな性格だと貴族社会では生き難いでしょう。
変に真っ直ぐな人だわ。
矯正なんてこんな小娘ができるのかしら?
ダルトンの話しを聞くつもりでガゼボに向かったのに出鼻を挫かれたので執務室に移動する事にしました。でも、ここはこのままにして置けないのよね。性格上。
魔法でガゼボを浄化すると、私の魔法を見て目を見張る2人。
大した事はしていないけど魔法自体が希少だから目にする機会があまりなかったのでしょうね。
まぁ花壇はあとで考えましょう。
今私がここに向かってるのをテモシーは知ってるからあとで何らかの話があるでしょう。
私はローリーに執務室に案内してもらいました。
結構な時間歩いたので少しつま先が痛むわ。
執務室に入ると一応の家具は揃っていたんだけど、これは多分私の好みに変更可能ということでしょうね。
一般的な机が主用に一つ、左に補佐用の机が2つ並んでる。
右には書棚だけど何も並べられていない。
真ん中にはソファとテーブル。
うん、質素倹約ですか?
まぁ暫くは執務をすること無いと決まっていたのでこんなものでしょう。
流石に掃除は行き届いていたからホッと胸を撫で下ろす。
「ダルトン座って、ローリーお茶と軽食をお願いできる?小腹が空いたから話の後に食べたいの」
ローリーは直ぐ様部屋をあとにして用意をしてくれた。
「奥様、お話の間は私は下がっていたほうがよろしいですか?」
「ごめんなさいね。ここにいてもらえる?後ろに控えてもらってて大丈夫だけど、長くなると困るから椅子に座っててね。貴方が居ないと扉を開けて話さないといけないから」
今日初めて会った男の人と二人は流石に不味いわ。
それからダルトンの身の上を訊ねると待ってましたとばかりに喋る喋る、お茶も飲まずに喋る喋る。
最初はびっくりしたけれど段々面白くなって喋らせていた、それに気づいたローリーの肩が軽く揺れているから笑いを我慢してるのでしょう。
ダルトンはシェード子爵の次男坊さんでした。
6歳でサンディル様の元へ、最初は見習いから始まり10歳の時に正式に侍従として側にいたとの事です。
彼の母がサンディル様の乳母だったようね。
乳兄弟はお兄様の方みたい、本来なら侍従になるのはお兄様だったようだけど、あまり丈夫じゃなかったのでダルトンに側仕えの話が来たのですって、割と特殊ね。
それからはずっとそばに居たみたい。
でも今から7年前に急に魔術師団の仕事が多忙になるから少し休んでくれと言われて今に至ると⋯⋯。
実はサンディル様が公爵を継いだ事も知らなかったようで、メイナード公爵が婚姻すると聞いた時も王弟だと思ってたらしいわ。
それがメイナード公爵の歳を妹に聞いてサンディル様と解ってご挨拶をと訪ねてきたと。
護衛騎士に門の所で止められたけれど気にせず中まで来たみたい、護衛騎士も可哀想に思ったのかしら。
今までの7年間何していたのか聞いたら、子爵家を継いだお兄様の手伝いで領地を任されていたのですって、お兄様の側に居なくていいのかと訊ねたら手紙を書きますとか言うから、ちょっと慌てたわ。
事後報告でいいのかしら?
「ねぇダルトン一旦子爵家に戻ってちゃんとご家族と話しをして来て、そして身の回りの準備をしてから来て頂戴。あなたの部屋は用意しておくから」
「部屋は以前の場所で構いませんが」
「旦那様がどういう意図で貴方を離したか私はまだ聞いてないし、それに以前の場所はおそらく旦那様に近い所でしょう?
今度からはそういう訳にはいかないから、私の側仕えなんだからね!
だから手紙とかで済まさないで、ちゃんと話してきてね。シェード子爵の領地なら往復も含めて5日もあればゆっくり準備してこちらに来られるでしょう?」
「奥様ありがとうございます」
「それと、シェード子爵に手紙を書くからそれを持って行って、出発は少し待ってね」
私にお礼を言って直ぐ様立ち上がろうとしたので慌てて止めたわ。
多分サンディル様の乳兄弟なら侍従関係の解消と諸々の話を聞いているかもしれないからダルトンだけなら戻さないかもしれないので、子爵にちゃんとダルトンと雇用契約を結んだ旨を手紙にしたため彼に渡したら、また泣いてるし⋯⋯。
泣き上戸も直さないといけないわね。
──────────────
夕食のあと予定通り私とマーク様はサロンでお茶をする事に、そこへテモシーがエントランスに来た男性を伴って来た。
「奥様、こちらは執事のドーランです。
昨日と今朝はマーク様の魔術師団の仕事の代わりをしていましたので紹介が遅れました」
「奥様お初にお目にかかります。ドーランと申します、誠心誠意奥様にも仕えさせて戴きますのでお見知りおきください」
「初めましてアディルよ。よろしくね」
エントランスにテモシーと来たのは仕事の話でもしていた途中だったからでしょう。
ダルトンにさぞ慌てたでしょうね。
「あのアディル嬢」
「マーク様、普段呼びで出てしまったら困るのは私ではないので、まぁマーク様も困らないでしょうけど。アディルと呼んで頂いて構いません」
「うっ、解った。何故ダルトンを?」
「その前にダルトンの侍従解消の経緯を教えて貰えるかしら?」
テモシーとドーランの方を向いて訊ねると、今回はドーランが答えてくれるみたい。
「僭越ながら私の方から、マーク様はあまりご存じないので。
ダルトン様は貴族の子息にも関わらず昔から嘘がつけないお人でして、サンディル様もダルトン様に今回の件を話すかどうかかなり迷っておいででした。
今この邸には王家に敵対する輩が何名か潜んでおります。前公爵様の時代からですので誰なのかというのは調べが付いておりますが、敢えて泳がしている最中でしたので、解雇はウィルハイム様がお許しになりませんでした。それであるならば、もし此度の王命を万が一にもダルトンから漏れてしまったりすればダルトンを処罰せねばなりません。それで王命の無事解決が成すまで邸から離そうということになりました」
ドーランの説明は私が考えていた通りだった。
ダルトンがあまりにも裏表のない、言わば貴族においては不的確な人物だから仲間はずれにしたって事よね。
それはそうかもしれないけれど⋯⋯。
真っ直ぐな正直者で素直なダルトンがその性格故に仕えていた主から離される。
そんな事あってはならないわ。
私が許せない。
広めのアプローチの周りを飾る花達は丁寧な仕事を感じさせていたし、アプローチから横に逸れた小道の周りも可愛い花達が、その清らかさを遺憾なく発揮している。
にも関わらずガゼボを目指して公爵邸より奥に進むと途端に花が少ない。
ないわけではない、でも点々としているという表現でいいものか、花を抜いてる訳でもないのに所々に隙間が目立つ。
とりあえずは予定通りガゼボに向かったが、ここでまたがっかり。
「ローリーここは使用禁止区域なのかしら?」
「いえ奥様、奥様が行動される先にこのお邸で禁止の区域などありません」
「では何故。ここは行き届いてないの?」
「それは⋯⋯。私のような下のものがお話しできる事ではありませんので⋯⋯。ご容赦を」
ご容赦って言われてもね、ご容赦出来ないのだけどローリーにそれを言うわけにもいかないし。
ガゼボはもう何年も掃除がされてないのでしょうね。
朽ち果てたと言わざるおえない状態でした。
周囲の花と合わせても、こちらには人の手入れが何年もされてないと言うことなのね。
「奥様、このような場所に奥様を座らせる訳には参りません。よろしかったらこちらに」
「何をしているの!?ダルトン。立ちなさい」
「いえ⋯⋯でも⋯⋯」
呆れたことにダルトンは突然四つん這いになり、人間ベンチを己の背中で作り上げた。
何を考えてるの!私はまだうら若き16歳なのよ。
何故男の人の背中に座らなければならないのよ。
「ダルトン様それは奥様に対して非礼になります」
「ええっ!!奥様失礼いたしました。まさか失礼に当たるとは思ってもみませんでした、奥様のお疲れを少しでも癒そうと⋯⋯。申し訳ございません。申し訳ござい⋯」
「もういいわよ、そんなに謝られたら私が悪いみたいじゃない、とりあえずダルトンは立って、それからローリー私には執務室は用意されてるかしら?」
「ご案内いたします」
「ありがとう、ダルトン一緒に来て」
「畏まりました、奥様」
ハァ、サンディル様が王命を一番近しい侍従に話さなかった訳が解ったわ。
ダルトンそんな性格だと貴族社会では生き難いでしょう。
変に真っ直ぐな人だわ。
矯正なんてこんな小娘ができるのかしら?
ダルトンの話しを聞くつもりでガゼボに向かったのに出鼻を挫かれたので執務室に移動する事にしました。でも、ここはこのままにして置けないのよね。性格上。
魔法でガゼボを浄化すると、私の魔法を見て目を見張る2人。
大した事はしていないけど魔法自体が希少だから目にする機会があまりなかったのでしょうね。
まぁ花壇はあとで考えましょう。
今私がここに向かってるのをテモシーは知ってるからあとで何らかの話があるでしょう。
私はローリーに執務室に案内してもらいました。
結構な時間歩いたので少しつま先が痛むわ。
執務室に入ると一応の家具は揃っていたんだけど、これは多分私の好みに変更可能ということでしょうね。
一般的な机が主用に一つ、左に補佐用の机が2つ並んでる。
右には書棚だけど何も並べられていない。
真ん中にはソファとテーブル。
うん、質素倹約ですか?
まぁ暫くは執務をすること無いと決まっていたのでこんなものでしょう。
流石に掃除は行き届いていたからホッと胸を撫で下ろす。
「ダルトン座って、ローリーお茶と軽食をお願いできる?小腹が空いたから話の後に食べたいの」
ローリーは直ぐ様部屋をあとにして用意をしてくれた。
「奥様、お話の間は私は下がっていたほうがよろしいですか?」
「ごめんなさいね。ここにいてもらえる?後ろに控えてもらってて大丈夫だけど、長くなると困るから椅子に座っててね。貴方が居ないと扉を開けて話さないといけないから」
今日初めて会った男の人と二人は流石に不味いわ。
それからダルトンの身の上を訊ねると待ってましたとばかりに喋る喋る、お茶も飲まずに喋る喋る。
最初はびっくりしたけれど段々面白くなって喋らせていた、それに気づいたローリーの肩が軽く揺れているから笑いを我慢してるのでしょう。
ダルトンはシェード子爵の次男坊さんでした。
6歳でサンディル様の元へ、最初は見習いから始まり10歳の時に正式に侍従として側にいたとの事です。
彼の母がサンディル様の乳母だったようね。
乳兄弟はお兄様の方みたい、本来なら侍従になるのはお兄様だったようだけど、あまり丈夫じゃなかったのでダルトンに側仕えの話が来たのですって、割と特殊ね。
それからはずっとそばに居たみたい。
でも今から7年前に急に魔術師団の仕事が多忙になるから少し休んでくれと言われて今に至ると⋯⋯。
実はサンディル様が公爵を継いだ事も知らなかったようで、メイナード公爵が婚姻すると聞いた時も王弟だと思ってたらしいわ。
それがメイナード公爵の歳を妹に聞いてサンディル様と解ってご挨拶をと訪ねてきたと。
護衛騎士に門の所で止められたけれど気にせず中まで来たみたい、護衛騎士も可哀想に思ったのかしら。
今までの7年間何していたのか聞いたら、子爵家を継いだお兄様の手伝いで領地を任されていたのですって、お兄様の側に居なくていいのかと訊ねたら手紙を書きますとか言うから、ちょっと慌てたわ。
事後報告でいいのかしら?
「ねぇダルトン一旦子爵家に戻ってちゃんとご家族と話しをして来て、そして身の回りの準備をしてから来て頂戴。あなたの部屋は用意しておくから」
「部屋は以前の場所で構いませんが」
「旦那様がどういう意図で貴方を離したか私はまだ聞いてないし、それに以前の場所はおそらく旦那様に近い所でしょう?
今度からはそういう訳にはいかないから、私の側仕えなんだからね!
だから手紙とかで済まさないで、ちゃんと話してきてね。シェード子爵の領地なら往復も含めて5日もあればゆっくり準備してこちらに来られるでしょう?」
「奥様ありがとうございます」
「それと、シェード子爵に手紙を書くからそれを持って行って、出発は少し待ってね」
私にお礼を言って直ぐ様立ち上がろうとしたので慌てて止めたわ。
多分サンディル様の乳兄弟なら侍従関係の解消と諸々の話を聞いているかもしれないからダルトンだけなら戻さないかもしれないので、子爵にちゃんとダルトンと雇用契約を結んだ旨を手紙にしたため彼に渡したら、また泣いてるし⋯⋯。
泣き上戸も直さないといけないわね。
──────────────
夕食のあと予定通り私とマーク様はサロンでお茶をする事に、そこへテモシーがエントランスに来た男性を伴って来た。
「奥様、こちらは執事のドーランです。
昨日と今朝はマーク様の魔術師団の仕事の代わりをしていましたので紹介が遅れました」
「奥様お初にお目にかかります。ドーランと申します、誠心誠意奥様にも仕えさせて戴きますのでお見知りおきください」
「初めましてアディルよ。よろしくね」
エントランスにテモシーと来たのは仕事の話でもしていた途中だったからでしょう。
ダルトンにさぞ慌てたでしょうね。
「あのアディル嬢」
「マーク様、普段呼びで出てしまったら困るのは私ではないので、まぁマーク様も困らないでしょうけど。アディルと呼んで頂いて構いません」
「うっ、解った。何故ダルトンを?」
「その前にダルトンの侍従解消の経緯を教えて貰えるかしら?」
テモシーとドーランの方を向いて訊ねると、今回はドーランが答えてくれるみたい。
「僭越ながら私の方から、マーク様はあまりご存じないので。
ダルトン様は貴族の子息にも関わらず昔から嘘がつけないお人でして、サンディル様もダルトン様に今回の件を話すかどうかかなり迷っておいででした。
今この邸には王家に敵対する輩が何名か潜んでおります。前公爵様の時代からですので誰なのかというのは調べが付いておりますが、敢えて泳がしている最中でしたので、解雇はウィルハイム様がお許しになりませんでした。それであるならば、もし此度の王命を万が一にもダルトンから漏れてしまったりすればダルトンを処罰せねばなりません。それで王命の無事解決が成すまで邸から離そうということになりました」
ドーランの説明は私が考えていた通りだった。
ダルトンがあまりにも裏表のない、言わば貴族においては不的確な人物だから仲間はずれにしたって事よね。
それはそうかもしれないけれど⋯⋯。
真っ直ぐな正直者で素直なダルトンがその性格故に仕えていた主から離される。
そんな事あってはならないわ。
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