78 / 86
77 あと少し
しおりを挟む
体が起き上がれて、お医者様に「もう大丈夫」と言ってもらえたのは、それから更に3日経ってからだった。
起き上がった時はゆっくりだったけど少し目眩がした。
久しぶりに足裏に感じる床を軽く踏みしめて「あぁ生きてる」と感じた。
目を覚ましてから毎日アルが邸に訪い、朝から晩まで私のベッドサイドを占領していた。
辺境伯と「ここに住む」「駄目だ」を二人で毎日繰り広げ、私の心に潤いを与えてくれる。
今日も私の目眩に気づき、しっかりと抱きしめてくれた。
「マイラ、俺の事忘れてただろう。これからはいつでも俺の事考えて、お願いだから一瞬でも俺の事忘れないで」
私の行為はアルにも疵を課してしまった。
「わかった、ごめんなさい」
私が謝るとぎゅっと抱く力に更に力が込められる。
アルの胸の音が鮮明に聞こえてくる。
ドクンドクン⋯⋯生きてる。
私の生きてる証もアルに聞こえているといいな。
久しぶりに部屋から出て執務室へ向かうと、お父様が仕事をされてる。
「おっ来たな、それじゃあそろそろ。始めないとね、時間と日にちの調整してくるよ」
そう言って、持ってた書類を端に寄せ、立ち上がり王宮へ打ち合わせに出かけていった。
私はサンルームに足を運び、そこでお茶をするつもりだったけど、久しぶりに歩いたので、足の力が限界だった。
たちまち車椅子に乗せられ(準備万端)アルに押されて向かった。
二人でお茶を飲みながら、ベッドの住人になっていた期間の話しをアルは教えてくれた。
王家が血眼になって探してた誓約書は母が持っていた事がわかった為。
探す物が「鍵」に変更になったと教えてくれました。
アルは母が持ってることは承知してるみたいだけれどどこにという事は知らないみたい。
その事にホッとする。
少しでも母の尊厳を守らなければ。
鍵は恐らく侯爵が肌見離さず持ってるというのが全員一致の意見
相当油断しなければ外す事も人目に晒すこともないだろうから元第二王子を使うそうです。
どう使うかはアルは教えてもらってなくて辺境伯曰く「任せとけ」だそう。
断罪はその時に行うと言う事。
母はそのタイミングで王家が保護してくれるそうです。
そしてみんなが困ってるのがアイラの進退。
産まれた過程や顔の色彩、そして何より第二王子ソックリの美形は間違いなく彼の血を引いていて、王族なのだけれど、性格を矯正できるかは本人次第だそうで、一旦は王家が保護して、経過観察になるそうです。
血が一滴も入ってない癖に侯爵にソックリだと陛下が仰ってるそうです。
伯母様が「環境が人を作る」って言ってたから、そういうことなのかな。
ここまでは現段階では今後の計画。
侯爵が第二王子と画策したバイオリーの独立の件は国を一部でも乗っ取るということになる。
国盗りの罪は計画しただけでも恐れ多い罪。
一族にまで罰が及んでしまう。
だから先に私を戸籍から抜かないと私も処罰対象になってしまうと言う事で、あの狐狸の攻防をあっさり「王命」でバッサリいっちゃって、目出度く私は養女になる事ができたとか。
ただそれはアイラも同じなので保護は王家がするけどアイラも何処かの養女になるそうです。
今私は『マイラ・アルシェ』ではなく『マイラ・カザール』になりました。
「王命」発動をこんな事に使ってもいいのかな?
やはり権力って強いし怖いな。
辺境伯が言ってたとおり、私への虐待によりタンキ様との婚約もあっさりと破棄。
慰謝料を『マイラ・カザール』として請求したそうで、無茶苦茶法外な金額を突きつけてるそうです。
恐らくそのまま没落することでしょう。
私が最後に文句でも言いたいなら対面の機会を設けると言ってくれたけど、会話が出来ない人と話すのは疲れるから遠慮しました。
彼は平民になっても意外と逞しく生き延びそうだなとまぁそれは勝手な主観だけど。
もうすぐ終わるんだという実感が湧いてきた。
母を助け出すまでもう少し、あと少し。
起き上がった時はゆっくりだったけど少し目眩がした。
久しぶりに足裏に感じる床を軽く踏みしめて「あぁ生きてる」と感じた。
目を覚ましてから毎日アルが邸に訪い、朝から晩まで私のベッドサイドを占領していた。
辺境伯と「ここに住む」「駄目だ」を二人で毎日繰り広げ、私の心に潤いを与えてくれる。
今日も私の目眩に気づき、しっかりと抱きしめてくれた。
「マイラ、俺の事忘れてただろう。これからはいつでも俺の事考えて、お願いだから一瞬でも俺の事忘れないで」
私の行為はアルにも疵を課してしまった。
「わかった、ごめんなさい」
私が謝るとぎゅっと抱く力に更に力が込められる。
アルの胸の音が鮮明に聞こえてくる。
ドクンドクン⋯⋯生きてる。
私の生きてる証もアルに聞こえているといいな。
久しぶりに部屋から出て執務室へ向かうと、お父様が仕事をされてる。
「おっ来たな、それじゃあそろそろ。始めないとね、時間と日にちの調整してくるよ」
そう言って、持ってた書類を端に寄せ、立ち上がり王宮へ打ち合わせに出かけていった。
私はサンルームに足を運び、そこでお茶をするつもりだったけど、久しぶりに歩いたので、足の力が限界だった。
たちまち車椅子に乗せられ(準備万端)アルに押されて向かった。
二人でお茶を飲みながら、ベッドの住人になっていた期間の話しをアルは教えてくれた。
王家が血眼になって探してた誓約書は母が持っていた事がわかった為。
探す物が「鍵」に変更になったと教えてくれました。
アルは母が持ってることは承知してるみたいだけれどどこにという事は知らないみたい。
その事にホッとする。
少しでも母の尊厳を守らなければ。
鍵は恐らく侯爵が肌見離さず持ってるというのが全員一致の意見
相当油断しなければ外す事も人目に晒すこともないだろうから元第二王子を使うそうです。
どう使うかはアルは教えてもらってなくて辺境伯曰く「任せとけ」だそう。
断罪はその時に行うと言う事。
母はそのタイミングで王家が保護してくれるそうです。
そしてみんなが困ってるのがアイラの進退。
産まれた過程や顔の色彩、そして何より第二王子ソックリの美形は間違いなく彼の血を引いていて、王族なのだけれど、性格を矯正できるかは本人次第だそうで、一旦は王家が保護して、経過観察になるそうです。
血が一滴も入ってない癖に侯爵にソックリだと陛下が仰ってるそうです。
伯母様が「環境が人を作る」って言ってたから、そういうことなのかな。
ここまでは現段階では今後の計画。
侯爵が第二王子と画策したバイオリーの独立の件は国を一部でも乗っ取るということになる。
国盗りの罪は計画しただけでも恐れ多い罪。
一族にまで罰が及んでしまう。
だから先に私を戸籍から抜かないと私も処罰対象になってしまうと言う事で、あの狐狸の攻防をあっさり「王命」でバッサリいっちゃって、目出度く私は養女になる事ができたとか。
ただそれはアイラも同じなので保護は王家がするけどアイラも何処かの養女になるそうです。
今私は『マイラ・アルシェ』ではなく『マイラ・カザール』になりました。
「王命」発動をこんな事に使ってもいいのかな?
やはり権力って強いし怖いな。
辺境伯が言ってたとおり、私への虐待によりタンキ様との婚約もあっさりと破棄。
慰謝料を『マイラ・カザール』として請求したそうで、無茶苦茶法外な金額を突きつけてるそうです。
恐らくそのまま没落することでしょう。
私が最後に文句でも言いたいなら対面の機会を設けると言ってくれたけど、会話が出来ない人と話すのは疲れるから遠慮しました。
彼は平民になっても意外と逞しく生き延びそうだなとまぁそれは勝手な主観だけど。
もうすぐ終わるんだという実感が湧いてきた。
母を助け出すまでもう少し、あと少し。
701
お気に入りに追加
2,028
あなたにおすすめの小説
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる