【本編完結】逃げるが価値

maruko

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72 父娘

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辺境伯の話しの後、食堂に案内され昼食になりました。

その後は、私と伯母様は蚊帳の外になった。
カザール辺境伯は蚊帳の外好きだな、直ぐ私を外しやがる。
でも実際に私には“力”がない
外されても仕方ないね。

伯母様と私、ミナさんで“私の部屋”に案内された。
本当にカザール辺境伯あの人仕事が早い。

「寂しくなるけど、近いものね。遊びに来てね」

伯母様が寂しそうに仰っしゃる。
行けるのならば毎日でも行きます!と心の中で誓う

正直私はここの養女になって何をすればいいのか皆目見当もつかない。

そしてあの方を父と呼べるのかしら?
後でお幾つなのか調べなきゃ
見た目は叔父様より随分若く見えるのだけど⋯。

お義父様の時は、自然に呼べたのになぁ

私の部屋で伯母様とお茶をしていたら、伯母様が何かを考えている様子。物思いに更けていたので声をかけずに私は私で先程の話しを思い出してみる。

先程の話しは私には何故か霞がかかったように現実味がない感じ。

思うのは父の事。

私は父と話した事があったかな?
数えるほどしかないその出来事は全くというほど覚えてない。
それもおかしな話だなと思う。

数えるほどしかないならばきっと鮮明な思い出として残っているはず、だって父娘だから、それが一般的だ。

私の記憶の中の父は、
アイラの横で微笑む父
食堂に私が来ると立ち上がる父
執事に命令してる父
廊下を歩く父
⋯あとは⋯⋯。
食堂以外は全て私が物陰から眺めた父だ。

会話をしたことがないことに今更ながら気づく。
そして笑ってしまう。

これが父娘?
はっ!そんなわけないじゃない。

自虐的な微笑みを浮かべた私の背中をいつの間にか物思いから開放された伯母様が擦ってくれる。

「子は親を選べないのよ」

「⋯⋯」

「環境はとても大事なの。それは人を作るの、子の成長も同じ。だから貴方は逃げて来たのでしょう」

そうだった、あの生活に我慢できなくて私は『逃げた』逃げる事が正解だと思ったから。


しっかりと父と決別しなければ。

そして父と元第二王子を断罪しなければいけない。

あの二人の為にこの地はとんでもない事になった。
そのせいで母はあのあくまに嫁がなければいけなかったしアイラの母は命を落とした。

この地に住む全ての人が被害を受けた。

その清算もしないままに、新たに罪を犯した二人はどうやっても追い詰めなければ。

私に出来ることって何かな?

『逃げる』事しか出来なかったけど、今度は『立ち向かう』

その勇気をここにいる人や支えてくれた人に貰ったのだもの。



話し合いが終わった辺境伯に、明日早速王都に向けて出発すると言われた。





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