61 / 86
60 掌の上
しおりを挟む
✱58話の続きです
──────────────
青年執事は自分の失態を嘆きますが今更です。
「私は奥様に相談されて取りあえず詳しい話を聞きにブルーノ夫人の元へ行きました。夫人はとても親切で、伯爵が何処でどのように愛人と過ごしているかなど証人や証拠まで合わせて呈示して下さいまして、今思えばそれを自分の目で確かめなければいけなかったのに私はブルーノ夫人を信頼してしまいました」
アホの極致です。
ミナさんが再び「アマンダの思う壺」と呟きます。
企んだ黒幕の証拠と証人って⋯あ~頭が痛い。
赤子でも解りそうな理屈です。
アマンダもあまりにも簡単に騙される執事を見てチョロいと思ったのでしょう。
後からこじつけの様にサーラが愛人の世話をしに通ってるとか、他の侍女もそんなサーラを信頼してるから協力させるのは悪手、だから若い侍女を使えとか、まぁアマンダの悪事の掌の上を転がされて、スキップでもしていたのでしょうか。
青年執事がなんとなくおかしいなと思う事もあったそうです。
でも⋯⋯それは当日の邸の中の使用人達の態度。
愛人の話しは自分が手足として使ってたつもりの若い侍女達(おそらくシェルとユリ)しか知らないはずなのに、全員が知ってるのを不思議に思ったとか。
当日でもどうにかできたでしょうに何故しない!
サーラの先触れを伯父様に伏せていたのもコイツでした。
「私の先触れの仕方も見ようによっては誤解されてしまいますね」
サーラは悔やんでるように言いましたが、まさか邸でそんな事が起こってるなんて知らなかったのだからサーラに罪はないです。
「サーラから旦那様にだけ伝えてください、先触れも奥様には内密にと言われたので、これはと思いサーラから旦那様宛の手紙を奥様と見ました。手紙には⋯「例の御方を連れて戻ります」」
サーラが青年執事の言葉に被せました、
「万が一誰かに手紙を見られても解らなくしたかったのです。普段でしたらマイラお嬢様の名前を明記していたのですが」
伯父様にサプライズと言われていたから伯母様の目に触れたとしても誰とはわからないようにしたつもりのサーラの気遣いが火に油を注いでしまったみたいですね。
しかもそれを見た伯母様と青年執事はその手紙を破り捨て、サーラの先触れも伯父様の耳には入れないようにしたのだとか。
「正妻として毅然な態度と愛人に制裁をとアマンダ様から助言をもらったの。それで、それでも私は取り乱してしまって。全てがあの方の企みなんて⋯今なら解るのだけど、それでもあの優しさが全て嘘だったなんて」
伯母様のアマンダへの全幅の信頼はそこまで大きかったのですね。
あまりにも歪なピースの筈なのにピタリとハマりすぎてます。
こんな事にならないための執事まで踊らされていますし、アマンダにしてみれば上手く行き過ぎて逆に気味悪かったのでは?
傍から見たら穴だらけの計略が絶妙なバランスで成立しています。
「マイラちゃんが来る前日の夜にメイに打ち明けた時ね主人に話すように、と進言されたのだけど私は聞く耳を持たなかった。あの時メイの言う通りにしていれば良かったのよね。私⋯離縁されるのかしら」
伯母様が恐ろしい事を呟きます。
伯父様が離縁など許すはずないので慰めるのはサーラに任せましょう。
取りあえず青年執事はどうしてるのかと彼を見るとミナさんとリアラさんに説教されています。
伯母様の家は教師の家系だと聞いたのですが、伯母様も青年執事もそうだとは思えません。
教師一家に何故あのようにおっとり系が二人も育ってしまったのか⋯⋯。
そしてなんの因果かその二人がバイカ伯爵家に来たのか。
伯母様のお父様が伯父様に、世間知らずの二人を託したのでしょうか?
私は聞いてないので知りえませんが。
あれ?
私も世間知らずです。
母と叔父様は伯父様に私を託そうとしていましたよね。
伯父様ってそういう星の元に生まれちゃったのかしら?
伯父様の憂いを増やさないように、やはり私はカザール辺境伯の養女になるのがいいかもしれません。
カザール辺境伯なら人を騙しても自分が騙されることはないでしょうから。
✎ ------------------------
次話から3話程、罪人達の供述の回が続きます。
不快な内容になる話しもありますのでお気をつけ下さい。
──────────────
青年執事は自分の失態を嘆きますが今更です。
「私は奥様に相談されて取りあえず詳しい話を聞きにブルーノ夫人の元へ行きました。夫人はとても親切で、伯爵が何処でどのように愛人と過ごしているかなど証人や証拠まで合わせて呈示して下さいまして、今思えばそれを自分の目で確かめなければいけなかったのに私はブルーノ夫人を信頼してしまいました」
アホの極致です。
ミナさんが再び「アマンダの思う壺」と呟きます。
企んだ黒幕の証拠と証人って⋯あ~頭が痛い。
赤子でも解りそうな理屈です。
アマンダもあまりにも簡単に騙される執事を見てチョロいと思ったのでしょう。
後からこじつけの様にサーラが愛人の世話をしに通ってるとか、他の侍女もそんなサーラを信頼してるから協力させるのは悪手、だから若い侍女を使えとか、まぁアマンダの悪事の掌の上を転がされて、スキップでもしていたのでしょうか。
青年執事がなんとなくおかしいなと思う事もあったそうです。
でも⋯⋯それは当日の邸の中の使用人達の態度。
愛人の話しは自分が手足として使ってたつもりの若い侍女達(おそらくシェルとユリ)しか知らないはずなのに、全員が知ってるのを不思議に思ったとか。
当日でもどうにかできたでしょうに何故しない!
サーラの先触れを伯父様に伏せていたのもコイツでした。
「私の先触れの仕方も見ようによっては誤解されてしまいますね」
サーラは悔やんでるように言いましたが、まさか邸でそんな事が起こってるなんて知らなかったのだからサーラに罪はないです。
「サーラから旦那様にだけ伝えてください、先触れも奥様には内密にと言われたので、これはと思いサーラから旦那様宛の手紙を奥様と見ました。手紙には⋯「例の御方を連れて戻ります」」
サーラが青年執事の言葉に被せました、
「万が一誰かに手紙を見られても解らなくしたかったのです。普段でしたらマイラお嬢様の名前を明記していたのですが」
伯父様にサプライズと言われていたから伯母様の目に触れたとしても誰とはわからないようにしたつもりのサーラの気遣いが火に油を注いでしまったみたいですね。
しかもそれを見た伯母様と青年執事はその手紙を破り捨て、サーラの先触れも伯父様の耳には入れないようにしたのだとか。
「正妻として毅然な態度と愛人に制裁をとアマンダ様から助言をもらったの。それで、それでも私は取り乱してしまって。全てがあの方の企みなんて⋯今なら解るのだけど、それでもあの優しさが全て嘘だったなんて」
伯母様のアマンダへの全幅の信頼はそこまで大きかったのですね。
あまりにも歪なピースの筈なのにピタリとハマりすぎてます。
こんな事にならないための執事まで踊らされていますし、アマンダにしてみれば上手く行き過ぎて逆に気味悪かったのでは?
傍から見たら穴だらけの計略が絶妙なバランスで成立しています。
「マイラちゃんが来る前日の夜にメイに打ち明けた時ね主人に話すように、と進言されたのだけど私は聞く耳を持たなかった。あの時メイの言う通りにしていれば良かったのよね。私⋯離縁されるのかしら」
伯母様が恐ろしい事を呟きます。
伯父様が離縁など許すはずないので慰めるのはサーラに任せましょう。
取りあえず青年執事はどうしてるのかと彼を見るとミナさんとリアラさんに説教されています。
伯母様の家は教師の家系だと聞いたのですが、伯母様も青年執事もそうだとは思えません。
教師一家に何故あのようにおっとり系が二人も育ってしまったのか⋯⋯。
そしてなんの因果かその二人がバイカ伯爵家に来たのか。
伯母様のお父様が伯父様に、世間知らずの二人を託したのでしょうか?
私は聞いてないので知りえませんが。
あれ?
私も世間知らずです。
母と叔父様は伯父様に私を託そうとしていましたよね。
伯父様ってそういう星の元に生まれちゃったのかしら?
伯父様の憂いを増やさないように、やはり私はカザール辺境伯の養女になるのがいいかもしれません。
カザール辺境伯なら人を騙しても自分が騙されることはないでしょうから。
✎ ------------------------
次話から3話程、罪人達の供述の回が続きます。
不快な内容になる話しもありますのでお気をつけ下さい。
688
お気に入りに追加
2,028
あなたにおすすめの小説
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。
音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。
アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる