【本編完結】逃げるが価値

maruko

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60 掌の上

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✱58話の続きです

──────────────

青年執事は自分の失態を嘆きますが今更です。

「私は奥様に相談されて取りあえず詳しい話を聞きにブルーノ夫人の元へ行きました。夫人はとてもで、伯爵が何処でどのように愛人と過ごしているかなど証人や証拠まで合わせて呈示して下さいまして、今思えばそれを自分の目で確かめなければいけなかったのに私はブルーノ夫人を信頼してしまいました」

アホの極致です。
ミナさんが再び「アマンダの思う壺」と呟きます。

企んだ黒幕の証拠と証人って⋯あ~頭が痛い。
赤子でも解りそうな理屈です。

アマンダもあまりにも簡単に騙される執事を見てチョロいと思ったのでしょう。

後からこじつけの様にサーラが愛人の世話をしに通ってるとか、他の侍女もそんなサーラを信頼してるから協力させるのは悪手、だから若い侍女を使えとか、まぁアマンダの悪事の掌の上を転がされて、スキップでもしていたのでしょうか。

青年執事がなんとなくおかしいなと思う事もあったそうです。
でも⋯⋯それは当日の邸の中の使用人達の態度。
愛人の話しは自分が使つもりの若い侍女達(おそらくシェルとユリ)しか知らないはずなのに、全員が知ってるのを不思議に思ったとか。

当日でもどうにかできたでしょうに何故しない!

サーラの先触れを伯父様に伏せていたのもコイツでした。

「私の先触れの仕方も見ようによっては誤解されてしまいますね」

サーラは悔やんでるように言いましたが、まさか邸でそんな事が起こってるなんて知らなかったのだからサーラに罪はないです。

「サーラから旦那様にだけ伝えてください、先触れも奥様には内密にと言われたので、これはと思いサーラから旦那様宛の手紙を奥様と見ました。手紙には⋯「例の御方を連れて戻ります」」

サーラが青年執事の言葉に被せました、

「万が一誰かに手紙を見られても解らなくしたかったのです。普段でしたらマイラお嬢様の名前を明記していたのですが」

伯父様にサプライズと言われていたから伯母様の目に触れたとしても誰とはわからないようにしたつもりのサーラの気遣いが火に油を注いでしまったみたいですね。
しかもそれを見た伯母様と青年執事はその手紙を破り捨て、サーラの先触れも伯父様の耳には入れないようにしたのだとか。

「正妻として毅然な態度と愛人に制裁をとアマンダ様から助言をもらったの。それで、それでも私は取り乱してしまって。全てがあの方の企みなんて⋯今なら解るのだけど、それでもあの優しさが全て嘘だったなんて」

伯母様のアマンダへの全幅の信頼はそこまで大きかったのですね。
あまりにも歪なピースの筈なのにピタリとハマりすぎてます。

こんな事にならないための執事まで踊らされていますし、アマンダにしてみれば上手く行き過ぎて逆に気味悪かったのでは?

傍から見たら穴だらけの計略が絶妙なバランスで成立しています。

「マイラちゃんが来る前日の夜にメイに打ち明けた時ね主人に話すように、と進言されたのだけど私は聞く耳を持たなかった。あの時メイの言う通りにしていれば良かったのよね。私⋯離縁されるのかしら」

伯母様が恐ろしい事を呟きます。
伯父様が離縁など許すはずないので慰めるのはサーラに任せましょう。

取りあえず青年執事はどうしてるのかと彼を見るとミナさんとリアラさんに説教されています。

伯母様の家は教師の家系だと聞いたのですが、伯母様も青年執事もそうだとは思えません。

教師一家に何故あのようにおっとり系が育ってしまったのか⋯⋯。

そしてなんの因果かその二人がバイカ伯爵家ここに来たのか。

伯母様のお父様が伯父様に、世間知らずの二人を託したのでしょうか?
私は聞いてないので知りえませんが。

あれ?
私も世間知らずです。
母と叔父様はに私を託そうとしていましたよね。

伯父様ってそういう星の元に生まれちゃったのかしら?

伯父様の憂いを増やさないように、やはり私はカザール辺境伯の養女になるのがいいかもしれません。

カザール辺境伯あのひとなら人を騙しても自分が騙されることはないでしょうから。


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次話から3話程、罪人達の供述の回が続きます。
不快な内容になる話しもありますのでお気をつけ下さい。

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