逃げるが価値

37 養女

「⋯⋯⋯養女⋯ですか？」

「そうそう、私の養女。ねっ！これで解決」

はぁぁぁぁぁ何が解決なんだろう。
私が馬鹿なのか、意味がわからない。
お義父様、助けて下さい～～。

「なるほど、それは妙案ですね」

⋯⋯⋯お義父様⋯⋯お前もか。

どっかで聞いた覚えのある言葉が脳裏に浮かぶ。
古代ギリシャ人は、やはり頭が良いのぅ。

って浸ってる場合じゃない。
やはり私が馬鹿なんだ！！
二人の考えを理解できない。

お義父様お願いお願い！
説明プリーズ。

本日2度目の上目遣いでお義父様を見る。
今度はスルーされなかった！

「マイラ、アルと君を婚約させたいって私達皆が思ってることを理解してくれるかい？」

「はい、ありがとうございますお義父様。お義父様、サラお義母様と呼ぶ事をお許し頂いていますので、わかっています」

「うん、それと同時に私達はアルを平民にはしたくない事もわかってほしい。今回王家の叙爵を受けたのもアルの為に受けたんだ。このままだとアルは自分で爵位を掴みとるか平民になるかの選択肢しかなかったからね。嫡男以外の貴族子息ならそういうものだ。現に私もそうだった。ただ私は兄のおかげでその苦労がなかっただけだ」

そうだった、貴族とは長子が主に優遇される。
次男以降、次女以降は自分で道を切り開かなくてはならない。そうしなければ貴族ではいられないのです。

でも貴族子女は主に当主より道を作ってもらえる。
それが嫁入り先の選定だ。
嫁げばその問題を解決できる。

だけど子息は違う。
騎士になって一代限りの爵位を受けるか、婿入りするしかない。

ただアルは結婚しない宣言をしていたので騎士爵一択だった。
お義父様たちも本人もそれは納得していたけど、ここで王家が伯爵家を叙爵するという、それなら貰えるものは貰って、ついでに兄と息子の貴族籍も安泰の道が手っ取り早いじゃないか！とシルバー家は考えた、ということです。

それだと私はアルの、シルバー家の足枷になってるわ。

ここに来て私は安易にプロポーズを受けてしまった自分を呪った。
私は浅はかだ。
自分の身の上を哀れに思っていたんだろう。
私は可哀想な人で辛い目にあったから優しくされても当然なんだって何処かで自分をそう思っていたんじゃないの？

私は無意識に守られる事が当たり前になってしまってた。
アルとサラお義母様によって色んな初めてを教えてもらって浮かれてたんだ。

そんな私の気持ちを察したのか、っていうか人の気持ちを察することが出来たのか辺境伯が教えてくれます。
(私、辺境伯には失礼な事思っても気にならなくなってきた)

「ほら！だから私の養女になるのが一番いいんだよ。だってマイラ、考えてみてごらん。君は今の時点でフンバルとは縁を結びたくない、だから家出したんだろう？でも除籍したらシルバーの次男とは愛人になる事でしか縁を結べないんだよ。でもアルシェの籍に入っていたら侯爵の言いなりになるしかない。どこかの養女になるしか手はないけど侯爵がそれを認めると思うかい？」

そうだ父が認めるわけはない。
あの人はアイラが幸せになること以外は全部駒なんだから、私を簡単に手放さないだろう。
除籍したところで私を捕まえて侯爵家いえに監禁でもして働かせる事も可能なんだ。
嫌だゾッとする。

「シルバー伯爵達は君をバイカ伯爵の養女にして次男と婚姻させるつもりでいたようだよ、それを私に後押ししてほしいっていうのが今回の私へのお願いだったんだ。そうだね伯爵」

「仰っしゃるとおりです」

「だったらそんな回りくどい事せずに私の養女になれば誰にも文句は言わせないよ。ねっマイラ。いい考えだろう」

そうだ！
今この時点でそれが一番の解決策で、お義父様や叔父様が私の為に必要以上に無理をする事もないんだ。

私は今日一番の笑顔を目の前のニヤけた顔の御方に向けた。