逃げるが価値

maruko

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30 懐かしい顔

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父と姉の秘密は私のような小娘が口出ししてもいいレベルの話ではありませんでした。

父はフンバル公爵家なんか目じゃない程のクソッタレぶりです。
あの男の血を引いていると思うと自分の血が呪わしい。

父と第二王子の『真実の愛』は二人で勝手に盛り上がれば別にいいけれど、何故母や関係ないひとを巻き込むのか、女性をなんだと思ってるのよ!!!


そのタイミングで部屋に女性が入ってきてお茶のお代りを入れてくれました。

私は怒りに体がぶるぶる震えて、興奮状態だったから一息つく為に気を遣ってくれたのかな?
少し興奮がおさまってそっとお茶で喉を潤すと、お茶のお代りを入れてくれた方が私をジッと見つめていました。

「サーラ?」

「お嬢様、お久しぶりです。大きくなられてお元気そうで⋯良かった」

目の前でハンカチで目を押さえながら、泣いているのは私の乳母だったサーラでした。
子供の頃に侯爵家を馘首クビになって以来の再会です。

「ここにいたの?」

「はい、奥様にバイカ家へ行くように言われましてお世話になってます。近くお嬢様がお越しになると聞きましたので伯爵様にお願いしてこちらへ来させて頂きました。お嬢様に一目だけでもお会いしとうございました」

私は立ちあがりサーラに抱きついたの。
サーラがここに居る、それだけでも母は私を疎んじていたわけではない事がわかった。

「お嬢様、ジールもバイカ伯爵家にいますよ」

「そうなの?」

「はい、こちらで結婚もして子供も2人いますよ」

「良かった幸せそうで。私あの鉢植え置いてきてしまったわ。重くて持ってこれなかったの、ジールに合わせる顔⋯ないわね」

家出のとき小さくても鉢植えだから重くて嵩張るので悲しいけど持ってこれなかったのだ。

「大丈夫さ、ジールはまた鉢植えを用意してくれるよ」

「叔父様ジールが私に鉢植えをくれた事ご存知だったのですか?」

「私がジールを侯爵家に迎えに行ったときにマイラと会ってるよ。表向きは姉上のご機嫌伺いだったけどね。その時がマイラに会った最後だ」

私が叔父様にお金を頂いた時です。
ひょっとしてあのお金はこんな時の為に渡してくれたのかもしれません。

「あの、聞きたくないけど聞きたいような。
先代陛下の第二王子様は行方不明と聞いてますが」

「あぁ世間ではそう噂されてるな、でもアルシェ侯爵が普通にしてるだろう?そして王家も表立って捜索はしてないんだ。私も探ってみたけど近衛騎士団でも捜索していない。だから秘密裏に王宮の何処かにいると思うんだよ」

「アイナのお母様はどうなさってるんですか?」

アイナの母はアイナを置き去りにしたとか、母が亡くなって引き取ったとかハッキリとは聞いていないけど。

「亡くなってるよ、表向きは病死だけど、おそらく毒かな。姉が弔ったと言っていたから、用済みになったってことだろうと思う」

「お母様は今危険ではありませんか?」

「バイカ伯爵家から侍女と料理人、あとメイドを数人回してるけど連絡はきていないから、まだ大丈夫だと思う、それにそう簡単に姉を排除する事はアルシェ侯爵も出来ないよ」

「そうですか」

お母様の味方が数名いるなら少しは安心かもしれない。

「バイカ卿、今後の話をしてもいいだろうか?」

「シルバー伯爵、はい、どういった事でしょうか」

お義父様が今後の話をしてくれるみたいです。

私も自分の気持ちを叔父様に言わなければ
さっき喉を潤したばかりなのに、乾いてくる。
緊張しながらゴクンと唾を飲み込みました。
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