【本編完結】逃げるが価値

maruko

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29 両親

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✱今回のお話はR15対応です

注)マイノリティーな話が出てきます
 そして、最低な男の話も出てきます
 ご注意下さい。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「マイラ、アイラが王弟の子供っていうのは一部では有名な話なんだよ」

「そうなんですか?」

「おそらく、それもあってフンバル公爵家は婚約の申込みをしたんだろう」

お義父様はお姉様の出自を知っていたんですね。
何故王家で引き取っていないのでしょう?

アレッ第ニ王子様って確か行方不明ではなかったかしら?

「マイラ、今回君が家を出てから姉から密かに手紙をもらってるんだ」

「お母様からですか?」

「あぁそうだよ。逃してほしいってね」

「えっ!まさかお母様がそんな事を言うはずは⋯⋯」

「今までの事を思ったらマイラがそういうのも頷けるけど、姉は決して本心から君を疎んじてたわけじゃない。その理由を今から話すよ」


お母様はお父様の秘密を初夜の事後にお父様本人から聞かされたそうです。

お父様は当時の第ニ王子様と密かに心も体も通じ合っていたそうです。
でも侯爵家の嫡男であるお父様には妻そして子供が必要でした。
ただ第ニ王子様との関係を清算するつもりがないお父様は、秘密を守り逆らえない妻を望んでいました。

お見合いの相手は皆様、蔑ろにしていい方々ではなかったので断るように誘導していたようです。
容姿のせいではなかったのですね。
おそらく前侯爵のお祖父様には容姿のせいだと思い込ませたのかもしれません。

そこへ都合のいい女、私の母との話があり渡りに船とばかりに婚約、婚姻したというのが父の秘密だそうです。

初夜のしかも事後に話を聞いたお母様はバイカ伯爵家じっかの為に耐える道を選んだというのが真実でした。

その後の話が正直私には受け付けられない事でしたが第ニ王子と父には『真実の愛』の為に必要な事だったようです。

父は母と婚姻後別邸で第二王子と生活を始めました。
母の元には年に1回義務で閨に訪れるだけです。
ただ母は3年たっても子を授かれませんでした。
3年で3回の閨で子を授かる確率の方が低いと思いますが父はそれがの限界だったようです。

なかなか子供に恵まれない両親に業を煮やした第二王子が、他に子供を作ろうと選んだ相手が父の姉でした。
私は実姉と聞いていましたが、お祖父様の妾の連れ子だったそうです。

ただ父は母との閨も苦痛であったのに、自分の父の妾の子になど無理だと第二王子に伝えました。
すると苦痛は二人で分かち合おうと言って、なんと3人で共にと⋯⋯。

その後、身篭った彼女が産んだのがアイナでした。

それを母が聞いたのが奇跡的に4回目の閨で私を身篭った事がわかった時でした。

乳飲み子を連れてきた父にアイナの出自を聞いて、あまりの事に倒れた母に追い打ちをかけるように父はこの子を大切に育てろと⋯腹の子はどうでもいいと⋯。

そういえばアイナは金髪で翡翠色の瞳をしています。
王家の色が入っていますので真実第二王子の子なのでしょう。

愛する人の娘だから父は大事にしているのですね。
そして、都合のいい女の娘だから私はどうでもいいという事。

話を聞いて今までの事がしっくり来ました。

その話を叔父様が聞いたのが、滞在していた10日間の時でした。
叔父様は母に離縁すればと進言しましたが、まだその時はバイカ伯爵家は、支援を受け続けている時でした。
今離縁しても、伯爵家も領地の民もみんなで共倒れになるだけだからと母は離縁に頷かなかったそうです。

その時に母は私の事をお願いしたそうです。

いつか、バイカ伯爵家に引き取って欲しいと、大切に育ててあげてほしいと、ここにいても幸せになれないからと。

その話を聞いた叔父様は、バイカ伯爵家を継いでいた兄に相談して、援助を受けなくてもいいように必死に家を立て直し、やっと私を迎えに行けたのが私が10歳の時でした。

でも、私を家に縛り付ける為に断れない公爵家との縁談を父が結んでしまい引き取ることが出来なかったそうです。
だからフンバル公爵家が落ちぶれる事がわかっていてもどうでも良かったんですね。

父は姉が苦労しないように私に補佐をさせるつもりです。

父は人でなしでした。

母は表立って私に触れる事も出来なくて、私に申し訳ない、逃げきってほしい、助けてあげてほしいと叔父様に手紙を送ってきたそうです。

その手紙の筆跡は殴り書きしたようだから、もしかしたら母も窮地に陥ってるかもしれないと叔父様が言いました。

それなのに私は母の顔が思い浮かばないのです。
後ろ姿しか思い出せません。
その事が悲しくて悲しくて⋯⋯。

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