逃げるが価値

maruko

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馬車の中ではお義父様と私とミナさんで黙々とサンドイッチを食べてます。

モグモグモグモグ⋯⋯3人とも無言で食べてます。

出発直前のアルとヤイナさんを私が見た事で、お二人は私から今、目を反らしてます。

ここは聞かない方がいいような気がしてきたので私から話題を振りましょう。
だってお二人は私の為に付いて来てくれてるのですからこれ以上気を使わせるのは良くないですね。

「お義父様、私辺境の事を良く知らないので教えて頂けますか?確かバイオリー領ですよね」

私が話し出すとあからさまにホッとしているミナさんが木のカップにお茶を注いで渡してくれます。

お茶が美味しい、勿論サンドイッチも美味しかったです。

「今辺境を治めているのはカザール辺境伯なんだよ」

「そうなんですか?領地名はバイオリーだと記憶していたのですが⋯⋯」

以前、家庭教師に習った時はバイオリーだったと記憶していたんだけど間違えて覚えていたのかしら?

「以前はね、バイオリー辺境伯が治めていたんだけど彼は後継を作らなかったんだ。異例ではあるけど遺言で王家に領地毎爵位を返上したんだよ。その後、王家からカザール様が臣籍降下して治めてらっしゃる。今はカザール領と名前が変更してるんだ。マイラが知らなくてもしょうがないよ、昨年代わったからね」

「昨年ですか、そうだったんですね。教えて頂きありがとうございます」

「マイラの叔父上は旧バイオリー騎士団に所属していたんだよ。今辺境にはカザール様が王都から連れて行ったカザール騎士団と2つの騎士団がある。隣国との国境付近には元々居たバイオリー騎士団がいて、こちら側のセザン伯爵領との境と辺境伯邸にはカザール騎士団が配置されてるんだ」

「では叔父様は隣国との国境付近にいらっしゃるのですね」

「いや、今はカザール騎士団の所属だ」

お義父様が云うには、カザール様が治めるようになって何名かがバイオリー騎士団を離れたそうです。その中に叔父様がいらっしゃるみたい。
だから旧を付けていたんですね。

今はセザン伯爵領との境に配置されてるそうなので2日で着くそうです。

今私が気になることを聞いてみよう。

「お義父様、叔父様は結婚されていらっしゃいますか?」

「いや兄の手紙では触れてなかったが、おそらく独身だと思うよ、約束した人はいるかもしれないが、マイラを心配しているって直ぐに会いに来るって言ってたらしいからな。結婚していたら直ぐに会いに行くとは流石に言わないだろう」

「叔父様は私に会いに来て下さるって仰ってたんですね」

「そうだよ、でも兄が止めた。もしも万が一侯爵家から探す為に早馬でも来てしまったら、叔父上が居ないと不自然だろう、だからこちらからマイラを連れて行くことにしたんだ。それにそれが最初の約束だからね」

「師匠さんのお気遣いに感謝します」

お義父様がニッコリ笑って頭を撫でてくれます。
頭を撫でられるのが嬉しいし、幸せを感じます。
侯爵家を出てからみんなが私の頭を撫でてくれるから、きっと幸せに感じるのかも。

「お義父様これをお願いします」

私はお義父様に除籍届を預ける事にしました。
信頼しているし、アルとの婚約を考えてくださったシルバー伯爵家にお任せするのが一番いいと思ったから。

「んっしっかり預かった。叔父上と話し合う時はマイラも同席して欲しい。自分の口からハッキリと話すんだよ、今までの事、これからの事」

「はい、ありがとうございます、よろしくお願いします」

セザン伯爵領の少し手前で馬の交換の為に休憩にしようとお義父様に言われたので馬車を降りると、5名の護衛騎士さんがいました。
全然気づかなかった。
皆さんプロですね、気取られることなく付いてきてくれてました。

私達は馬の交換の為に一軒のお邸に入ります。
なんとミナさんのご実家のルーチェ男爵家だそうです。
ここで暫く休憩して雨足が悪ければ、お泊りするかもとミナさんが言ってました。

ルーチェ男爵様と奥様、ミナさんのお兄様と若奥様にご挨拶させて頂いたのですが、なんとミナさんのお兄様はジョルデ叔父様のご友人でした。

そして一緒に同行されるそうです。

何故かはわかりませんが、ちっぽけな私の家出が段々大事おおごとになってきて、今私は変な脇汗を見られないようにするのに苦労しています。
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