逃げるが価値

maruko

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22 婚約(仮)

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向かい側に座っていたアルは私の横へ来て立ったまま私を抱きしめてくれました。

「ねぇマイラ、俺の告白が嬉しいのは、俺期待してもいいか?マイラも同じ気持ちと思ってもいいか?」

今は言ってはいけないのに私は頷いてしまいます。

「アル、私も貴方の事が好きだと思う。初恋なの。アルは恋まで私の初めてを頂いちゃったね」

「嬉しいな!だって俺もマイラが初恋だからさ、お互い様だね」

私達お互い様でした。
とても嬉しいけど現実はそんなに簡単ではないのです。

「マイラ、これからの事を話そう」

「うん」

アルは昨日から伯爵様に私との事を相談していました。
伯爵様が私に除籍届を待つように言ったのはアルの相談を聞いてたからです。

アルの家は来月、伯爵位はそのままで侯爵を賜る事が決定しているそうです。

今回、師匠さんをお迎えに行ったのは、伯爵位を師匠さんに貰ってもらう為に行ったのだという事、そしてアルは師匠さんの養子になって伯爵位を継ぐらしいです。

私が除籍して平民になってしまうとアルと婚約出来なくなるから、待ったをかけたんだそうです。

「今朝、師匠から連絡が入ってマイラの叔父さん見つかったんだって、だから父上が一緒に辺境に行って下さるから。そこで話しをしてくれる、婚約解消と俺と新たに婚約する事を。マイラ、クソッタレと婚約解消出来たら俺と婚約してくれる?」

私の横で今度は跪いてアルは真剣な眼差しで私を見つめています。

「ありがとうアル、私も貴方と婚約したいです」

私は叔父様が見つかったという朗報をすっ飛ばしてアルに返事をしました。

不意に叔父様の事を思い出して

「叔父様、見つかったの?嬉しい」

遅ればせながら叔父様の事も喜びました。
でもアルの告白のほうが破壊力満点です、恋する乙女は恋の方に重きを置くのだと身を持って知りました。


それから私達は手を繋いで花畑を散策して、明日の準備をするべく伯爵邸に戻りました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


部屋に戻る前にアルと二人で伯爵様の執務室へ向かいます。
アルが結果を報告するそうです。
部屋にノックをして「俺です」とアルが言うと「入れ」とイケボが返ってきます。
アルももっと大人になるとイケボになるのかしら?
どうでもいいような想像をしてたら呆けてしまってました。

執務室にはサラお義母様がソファに座ってました。
私達を待ってたみたいです。

「上手くいったのかしら?」

「父上、母上、俺とマイラはマイラの婚約が解消されたら婚約を結びたいです。二人の同意です、よろしくお願いします」

アル格好いい~
アルの言葉と共に二人でお辞儀をしました。

伯爵様もサラお義母様も喜んでくれてます。

「じゃあ早々にマイラちゃんの叔父上の所に行って色々解決しないとな。明日出発してもいいかい?」

「お手数おかけします伯爵様。よろしくお願いします」

「うんうん。マイラちゃん、私の事もサラみたいにお義父様と呼ぶ事をお願いしたいんだけどいいかな?」

「お義父様ですか?いいのですか?」

「いいさ、だっていずれ呼ぶことになるからな」

「ありがとうございます、お義父様、サラお義母様」

「じゃあ、明日の準備を始めよう」

執務室を退室して部屋に戻ると既にミナさんが準備を始めてくれてました。

一緒に手伝おうと思ったら、サラお義母様が買い物に行こうと呼んでいるからエントランスに来るようにとメリー様が言いに来ました。

準備の手を止めてミナさんとエントランスに行きます。
買い物って?

お義母様が辺境までは馬車だと2日かかるから服が足りないそうです。
いや足りてると思うのですが⋯⋯言いかけたけど遮られてそのまま連れて行かれました。
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