【本編完結】逃げるが価値

maruko

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21 告白

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朝の仕度を終えてミナさんの案内で食堂に向かいます。

食堂につくとサラお義母様だけが座ってました。

「サラお義母様お待たせして申し訳ありません」

「大丈夫よ、そんなに待ってはいないわ」

私は伯爵様とアルを待つのかと思ったら朝食が運ばれてきました。

「主人とアルは今執務室でお話ししてるの、長くなりそうだから先に済ませてくれって言われてるのよ、だから先に食べちゃいましょっ」

朝食はベーコンエッグとロールパン、それにサラダと珈琲が付いていて前世のモーニングを思い出しました。

パンが焼きたてでフワフワしていて美味しい。

食事を終えて珈琲を飲んでいたら、アルと伯爵様が来て席に着かれました。

私は食事を終えていたので部屋に戻ろうと思い「お先に失礼します」と席を立とうとするとアルに部屋で待ってるように言われました。
了承してミナさんと部屋に戻ります。

暫くするとアルが部屋に来てピクニックに行こうと誘ってくれました。

アルに連れられて馬車で向かったのは伯爵邸の裏庭です。
昨日歩くと遠いと言っていた裏庭。

凄く広いです。

野菜畑、麦畑、そして薬草かな?薬草畑、その先に牛舎、鶏ゴヤ、ねぇ広すぎる。

あまりの広さに目をシュパシュパしてたらどうやら目的地に着いたみたい。
馬車を降りると色とりどりの花畑です。

二人で手を繋いで四阿を目指してます。
なんだかんだ私、手を繋ぐのに慣れちゃったんでしょうか?

馬車を降りたらアルが手を出してきたので自然に手を繋ぎました。

「明日、学園の寮に戻るんだ。暫くは会えなくなる」

歩きながらアルが言っています。
アルと会えなくなる、会えなくなる、会えなくなる。

その言葉が私の頭の中で何度も何度も繰り返され暴れ回ります。

四阿に着いてアルがお茶を入れてくれました。

温かくて、カップを両手で包み込むと急に現実が押し寄せます。

(アルに会えなくなる)

昨日気づいたアルへの恋心と会えなくなる寂しさと⋯。

何も話せなくなってしまいました。今、口を開くと告白してしまいそうです。
まだ私には婚約者がいるから、そんな言葉は言ってはいけないから、口を噤みます。

「戻る前に言いたい事があるんだ、聞いてくれる?」

口を開けない私はコクリと頷きました。

「俺、ずっとマイラが好きだったんだ、子供の時からずっと。絵画教室で会うのが楽しみで、絵を習うよりマイラの顔を見に行ってるような感じでさ。でもマイラが婚約しただろう、ショックでその時に本当はこっちに帰ろうと思ったんだけど、やっぱり諦められなくて、相手がクソッタレだ、って聞いてたから尚更。絶対にマイラが苦労すると思って見守る事にして王都に残ってた」

「⋯⋯」

「案の定、マイラはあまり婚約者の話を振っても嫌がってたし、好きじゃないのはわかってたからさ、でも俺の進学もあったから最後まで見守る事もできなくなって、手紙も書いたけど届いてないんだろう?」

「!!!」

「その顔は届いてないんだね、あの姉かなぁ。あいつ性格悪いし。それからも偶に王都に出た時はマイラの学園の外で待ち伏せとかしたんだけど会えなくて⋯会えないはずだよ、通えてなかったなんて。俺あの日マイラの家に行ったんだ、そしたらマイラが出てきて様子がなんとなく変だったから俺、マイラの後をつけてたんだ。気持ち悪いだろ?黙ってようかと思ったけど、行動が男らしくないんだから、嘘つかずに話せって父上に怒られた」

「じゃあ偶然じゃなかったの?」

「マイラが侯爵邸から出てきたのは偶然だけど、あの場所で会ったのは偶然じゃなくて先回りして偶然のフリをしたんだ、絶対に家出だと思ったから、マイラが俺の知らない所に行くなんて我慢出来なかった」

「そう、そうなんだ」

私は不謹慎にも顔がニヤけてしまう。
アルは真剣に話してくれてるのに⋯⋯。
嬉しい、嬉しい、私凄く嬉しいと思ってる。
全然気持ち悪くなんかない。
タンキ様なら気持ち悪いけど、アルなら嬉しい一択だ。

むしろ今ニヤけてしまってる私の顔の方が気持ち悪いかも。

「アル、ごめんね。私今凄く気持ち悪いかも、顔がニヤけてしまうの!嬉しくて!変な顔でごめんなさい」

ニヤけた顔のままアルに告げると
アルは素敵な笑顔で

「気持ち悪くなんかないよ、可愛いよ」

私の初恋は実を結びそうです。
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