【本編完結】逃げるが価値

maruko

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18 初恋

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ディナーのあとサロンに移動して口直しのお茶を飲んでいたら伯爵様に問われました。

「マイラちゃんは婚約の事どうするのかな?サラから聞いたけど逃げてきたんだろう?」

「はい、色々考えまして婚約を解消したいのですがおそらく両親は諾とは言わないでしょうし、フンバル公爵家から破棄して欲しかったのですが叶いませんでした。ですので除籍届けを出そうと思っています」

「なるほどね、だからこのタイミングで家出したんだね」

「はい、平民になれば自動的に婚約者ではなくなりますしご縁もなくなりますので」

「フンバル家が追いかけて来てるのは体裁の為かな?」

「わかりません、そもそもこの婚約の話も姉に来たのを断れなくて私に回ってきたのかなと思ってますので、私にそれほど執着はないと思うのですけど、何故か婚約が結ばれて、今考えても⋯何故でしょう?」

私はわからなくて伯爵様に質問返しをしてしまいました。

「これは、提案なんだけどね。除籍届けの提出は君の叔父さんに会えるまで一旦保留にしないか?昨日までならもし、我々と一緒のところを見つかったらまずかったけど今日で君は成人したからね。君の意思でここにいる事も可能なんだ。叔父さんと今後の事を相談してからでも遅くないと思うんだ。今、兄が君の叔父さんを探してくれてるから、それまで除籍届けは私に託してくれないかな?」

「⋯⋯一晩考えてもよろしいでしょうか?」

「いいよ一晩でも二晩でもよく考えて、他でもない君の事だからね」

伯爵様とお話ししながらアレ?と疑問に思う事を尋ねます。

「あの、先程伯爵様のお兄様が叔父を探して下さってるって⋯」

「あぁアルもサラも教えてないのかい?」

「アラ忘れてたかしら?」

「マイラ、師匠は俺の伯父さんなんだよ、父上のお兄様なんだ」

「エェッそうだったんですか?」

なんか衝撃まではいかないけどびっくりしちゃいました。

「私の兄は昔から騎士になるのが夢でね、家督を継がないって15歳の時に家出して、親に言わずに騎士団の見習いになってしまったんだ。親は反対するつもりはなかったんだけど、兄は反対されると思ったんだろうね」

そうだったんだ、師匠さんも家出して自分の道を目指したんだ、だから私の事も助けようと思ってくれたのかな。

「マイラちゃん、叔父様が見つかるまではここに住むといいわ。見つからなければずっと居てもいいのよ」

「マイラもう叔父さんの所に行かなくてもずっとここに居なよ」

サラお義母様の気遣いが嬉しいと思った途端にアルがギョッとする事を言ってきた。
叔父さんの所には行きたいのよ、私。

「サラお義母様、伯爵様ありがとうございます。叔父様が見つかるまで甘えてもよろしいでしょうか?」

お二人は微笑んで了承して下さいましたが、アルはなんだか気に食わないみたい。

「アル、何で怒ってるの?」

「怒っては⋯⋯いないよ。でもずっと住んで欲しかったのに」

「私、叔父様には会いたいし、許してもらえるなら一緒に住みたいの。私の唯一の肉親だと思ってるから」

「⋯⋯そうかごめん、マイラの気持ちに寄り添えてなかった。反省する」

「アル先走りが酷すぎるぞ、ちゃんと段階踏まないとな」

段階⋯?伯爵様は何を言ってるのかわからない。
でもなんかあるんだろうね。

それからは伯爵様の子供の頃の話や領地の話、師匠さんの話、伯爵様は話題の豊富な方で私を楽しませてくれました。

そろそろ休もうかとなった時にまたアルがエスコートを申し出てくれて、そっと手を重ねます。

「マイラちゃんおやすみなさい、また明日ね」

「お休みマイラちゃん」

「はい、伯爵様、サラお義母様もおやすみなさい」

「俺にはないのかよ」

「「あぁアルおやすみー」」

「雑ーーー、じゃあマイラ行こうか」

「うん」

二人でサロンを出たあと部屋の前に来た時にアルにおやすみを言おうとしたら、アルからプレゼントを渡されました。
アルの目の色と同じ琥珀色のトップが付いたペンダントです。
アルが付けてくれました。

「本当は迎えに来た時に渡して付けて貰おうと思ってたのに忘れちゃってて、やっぱり似合うな」

照れ笑いしながら話すアルが素敵で、私はアルが好きなんだと完全に自覚しました。

これが初恋かな

「じゃあまた明日な、おやすみマイラ」

そう言ってアルはオデコにチュッとして私を部屋に押し込みました。

えっえっえーーーー今のキスだよね。

部屋に押し込まれたまま扉を背にズルズル座り込んじゃった私を、先に帰ってベッドメイキングをしていたミナさんが訝しげに見つめるのでした。
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