逃げるが価値

maruko

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12 初めてのメニューと恋の予感

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二人は同時に驚いていて、そして段々目が吊り上がって来てちょっと怖いんだけど⋯。

「まさかそこまでとは⋯⋯マイラちゃんデビュタントは義務なの。でも実は抜け道もあったりするのよ。体の弱い子とかは社交がなかなか出来ないから免除されたりしているの。おそらくそういう事にしているのかもしれないわね」

「でもさぁ学園に入学してたらマイラが健康なのはバレるだろう。どんな風に誤魔化してるのかな?」

「あ、あのね。学園は入学したんだけどあんまり行かせてもらえてなくて、主に家で家庭教師から公爵家の執務を学んでいるの。入学してから10日位は行ったかな?ハハハ⋯⋯」

「「⋯⋯⋯⋯」」

二人は無言で私を見てるんだけど、学園にもまともに行ってない子って駄目なんだよね。
恥ずかしい。
下を向いてたらサラお義母様が急に提案してきた。

「ねぇマイラちゃん、叔父様に会えてから相談の上でいいんだけど伯爵家うちに行儀見習いに来ない?公爵家での行儀見習いは忘れていいわよ、それは行儀見習いとは言わないから。の行儀見習いに、ね」

「でも、私は平民になるので。ご奉公に行くのでは駄目ですか?」

「それは駄目よ、それでは使用人じゃない。平民が行儀見習いに行っては駄目って決まりはないから大丈夫よ。ぜひ叔父様に相談してくれないかしら?」

「使用人でもいいんですけど⋯⋯」

「「ダメ」」

二人にダメ出しされたので叔父様に相談して了承してもらったら行くという事になりました。

シルバー領の中ほどに来たよとアルが言ったタイミングで食事をする事に、荷物の馬車は先に伯爵邸に向かうそうなので、サラお義母様の侍女さんともここで合流しました。
ずっと荷物の馬車に居たそうです。
知らなかった。
ひょっとしたら私がいたからかしら?

「さぁ何でも好きな物を食べてね」

そのお店は大きな食堂でした。
『トラント食堂』って看板があったけど、食堂っていう広さじゃない気がする。
中は前世のファミレスみたいな作りで、奥に個室がありました。
私達が案内されたのは個室の一番奥で、裏庭に面していたんだけど、裏庭っていうより庭園。
眺めが最高に良い。

座って直ぐにオーナーが給仕を伴って来られてサラお義母様に挨拶されてました。
流石、領主の奥様ですよね。
挨拶の後にメニューを配られたけれど、よくわからなかった。
私、今世でメニュー見た事ない。
この2日間の宿ではメニューとかなくて出された物を食べてたし、料理の名前がわからないって今更ながら恥ずかしくなった。

「マイラ、外食も初めてか?」

アルが優しく聞いてくれたけどオーナーさんもまだいらっしゃるから恥ずかしくて返事が出来ずに、辛うじて頷くと、アルはわかってくれたみたい。

「嫌いな食べ物は無い?それじゃあ俺と一緒でいいよな。じゃあ、これとこれとこれ2つずつ。デザートはケーキをいくつか見繕って欲しい」

「では私はこれとこれね。あぁアルはサラダを頼んでないからこれは2つにして、デザートはいらないから紅茶を食後にお願い」

二人でメニューを決めてくれてホッと一息。

「サラお義母様、アル。ご迷惑おかけしてスミマセン。料理に名前があるのは解っているのですが、今まで出された物を食べるだけで料理の名前を知らずに過ごして来てしまって⋯お恥ずかしいです」

「食事の時は料理長の説明はなかったのかしら?」

「私は食事は時間をずらされていたので家族の食事が終わりそうな時に呼ばれてましたから。デザートだけはなんとなくわかったんですけど」

「「「はぁ?」」」

また声が揃ってます。
今回はサラお義母様の侍女さんも入りました。

昼食は軽くって言ってたけどテーブルには沢山の料理が並んでます。
私の目の前にはお皿だけですが⋯⋯。

「マイラ、オーナーに頼んで全部大皿にしてもらったんだ、今から給仕が説明しながら皿にのせてくれるからな」

アルがそう言うと給仕の方が料理の説明をしてくれました。
どれがいいか聞かれたので、先ずはサラダかなと思って「サラダを」って言うと給仕の方が取り分けたあと、ドレッシングをかけながらサラダの中身も説明してくれました。

そんな風に取り分けたら中身の説明って流れで食べていたので料理の名前がわかります。

サラお義母様とアル、オーナー様の気遣いが嬉しいな。

楽しい食事はいつもよりも沢山食べられました。
どの料理も美味しかった。

「これも初めてだね。またマイラの初めて頂きました」

食後にアルに言われた言葉にまた胸がドキドキして顔が真っ赤になるのを止めることが出来ませんでした。

私⋯アルに恋してるのかな?


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