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7 王妃とは
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騎馬の師匠さんに手を合わせながらよろしくお願いしますと言って見送ってから今度は1台の馬車に3人で乗った。
アルは私が不安そうに見えたのか一生懸命楽しい話をしてくれる。
今行ってる学園のこととか、お兄様の事とかね。
話を聞いてたら羨ましくなった。
だって私が同じ話をしようと思ってもちっとも楽しい話にならないもんね。
そんな事を思いながら聞いてたから私の表情を読んだアルが黙ってしまった。
暫くの沈黙。
口火を切ったのは伯爵夫人
「マイラ、そんな顔しないで、大丈夫よきっと大丈夫。叔父様に会えるわ。私達が絶対に無事に叔父様の所へ連れて行ってあげるから、嫌なことは考えずにこれからの楽しいことを考えましょっ」
折角同行してもらってるのに私ってば二人に気を使わせてしまった。
こんなところがだめなのね!
変わらなきゃ、弱気な私はサヨナラだ。
「えぇ伯爵夫人、励まして下さってありがとうございます。そうですね、叔父様の所へ何が何でも辿りつかなくてわ。逃げた意味がないですもの、改めて同行してくださりありがとうございます。そしてよろしくお願いします」
捕まることを危惧してたわけじゃなかったけれど、ただアルが羨ましかっただけだけれど、気持ち吹っ切って気合を入れ直す。
「そういえばシルバー領はどういった所ですか?勉強不足で良く知らないので教えてもらえませんか?」
前の私なら知らないことが恥だと思って聞きたくても聞けない性格だったけど、前世を思い出した私は聞けるのよ。
だって『聞くのは一時の恥、聞かぬは一生の恥』ってこの言葉を知ってるもん。
「そうねぇ今は初夏だから茶摘みの時期ね」
「お茶ですか?」
「そうなの、シルバー領はお茶が名産なの。ありとあらゆるお茶を製造、販売しているのよ。それで成り立っていると言っても過言ではないわ」
そうだったのね、毎日飲んでるお茶は主にシルバー領のものだったみたい。
「この前は王太子様が視察に来たんだぜ、俺も案内役を仰せつかったよ」
あぁ王太子か、また負の感情が戻ってくる。
「なんだよ、王太子様嫌いか?」
「違うわよ、それは不敬だわ。姉が王太子の婚約者候補に上がってて、それを思い出しちゃった」
「あぁあの姉がね。無理なんじゃない?あっそうか!猫かぶってたなあの女。俺と兄上にはバレちゃってるけどね。王太子様気付けるのか?」
「王太子様は気づけるかもだけど、それだけでは決めないのが婚約者よ。実家の後ろ盾とか周りの派閥とかそういうのも関係するから、人柄はほぼ関与無しの時もあるの」
「そうなのか母上。知らなかった⋯⋯でも王太子が絶対に嫌って言えばなんとかなるんじゃない?」
「アル⋯アル!私はお姉様が別に婚約者になっても構わないわよ。ただ王太子様=姉って図式が頭に入っちゃってるから暗くなっただけ、気を使わせちゃってごめんね」
「いや~俺が嫌だよ、あんな裏表有りまくりの猫かぶりが将来の王妃殿下とか。仕える気にならないじゃないか」
アルの言葉に夫人が辛辣に現実を突きつける。
「何言ってるの、アル。裏表合って猫かぶりなんて社交なんてみんなそうじゃない、ある意味王妃に一番近いんじゃないかしら」
「うぇ~そうなの~がっかり」
アルが顔の表情筋を全て手放してオマケに口をへの字にしながら舌まで出す、そんな変顔見たら笑うしかないじゃない。
淑女に有るまじき『ブワッッッッ』と吹き出して慌てて手で口元を抑えながら上目遣いで笑ったら伯爵夫人も扇子を口元に当てて笑ってる。
その仕草はさすが貴族夫人と思って尊敬しちゃう。
馬車の中で3人
不敬にも理想の王妃像を話していたら次の目的地、本日のお宿に到着した。
アルは私が不安そうに見えたのか一生懸命楽しい話をしてくれる。
今行ってる学園のこととか、お兄様の事とかね。
話を聞いてたら羨ましくなった。
だって私が同じ話をしようと思ってもちっとも楽しい話にならないもんね。
そんな事を思いながら聞いてたから私の表情を読んだアルが黙ってしまった。
暫くの沈黙。
口火を切ったのは伯爵夫人
「マイラ、そんな顔しないで、大丈夫よきっと大丈夫。叔父様に会えるわ。私達が絶対に無事に叔父様の所へ連れて行ってあげるから、嫌なことは考えずにこれからの楽しいことを考えましょっ」
折角同行してもらってるのに私ってば二人に気を使わせてしまった。
こんなところがだめなのね!
変わらなきゃ、弱気な私はサヨナラだ。
「えぇ伯爵夫人、励まして下さってありがとうございます。そうですね、叔父様の所へ何が何でも辿りつかなくてわ。逃げた意味がないですもの、改めて同行してくださりありがとうございます。そしてよろしくお願いします」
捕まることを危惧してたわけじゃなかったけれど、ただアルが羨ましかっただけだけれど、気持ち吹っ切って気合を入れ直す。
「そういえばシルバー領はどういった所ですか?勉強不足で良く知らないので教えてもらえませんか?」
前の私なら知らないことが恥だと思って聞きたくても聞けない性格だったけど、前世を思い出した私は聞けるのよ。
だって『聞くのは一時の恥、聞かぬは一生の恥』ってこの言葉を知ってるもん。
「そうねぇ今は初夏だから茶摘みの時期ね」
「お茶ですか?」
「そうなの、シルバー領はお茶が名産なの。ありとあらゆるお茶を製造、販売しているのよ。それで成り立っていると言っても過言ではないわ」
そうだったのね、毎日飲んでるお茶は主にシルバー領のものだったみたい。
「この前は王太子様が視察に来たんだぜ、俺も案内役を仰せつかったよ」
あぁ王太子か、また負の感情が戻ってくる。
「なんだよ、王太子様嫌いか?」
「違うわよ、それは不敬だわ。姉が王太子の婚約者候補に上がってて、それを思い出しちゃった」
「あぁあの姉がね。無理なんじゃない?あっそうか!猫かぶってたなあの女。俺と兄上にはバレちゃってるけどね。王太子様気付けるのか?」
「王太子様は気づけるかもだけど、それだけでは決めないのが婚約者よ。実家の後ろ盾とか周りの派閥とかそういうのも関係するから、人柄はほぼ関与無しの時もあるの」
「そうなのか母上。知らなかった⋯⋯でも王太子が絶対に嫌って言えばなんとかなるんじゃない?」
「アル⋯アル!私はお姉様が別に婚約者になっても構わないわよ。ただ王太子様=姉って図式が頭に入っちゃってるから暗くなっただけ、気を使わせちゃってごめんね」
「いや~俺が嫌だよ、あんな裏表有りまくりの猫かぶりが将来の王妃殿下とか。仕える気にならないじゃないか」
アルの言葉に夫人が辛辣に現実を突きつける。
「何言ってるの、アル。裏表合って猫かぶりなんて社交なんてみんなそうじゃない、ある意味王妃に一番近いんじゃないかしら」
「うぇ~そうなの~がっかり」
アルが顔の表情筋を全て手放してオマケに口をへの字にしながら舌まで出す、そんな変顔見たら笑うしかないじゃない。
淑女に有るまじき『ブワッッッッ』と吹き出して慌てて手で口元を抑えながら上目遣いで笑ったら伯爵夫人も扇子を口元に当てて笑ってる。
その仕草はさすが貴族夫人と思って尊敬しちゃう。
馬車の中で3人
不敬にも理想の王妃像を話していたら次の目的地、本日のお宿に到着した。
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