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番外編エミリー 王家の再生

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その日から暫くは外に出られないってことで、私と弟はソフィーア様が家の中でも楽しめるように二人で相談した。
そこでお父さんの商会から色々持ってきてもらったんだ。
実は今私が商会で商品開発してた物が試作品でできてる。
おもちゃの木琴だ。
この世界、ピアノは有るのに木琴はなかった。
少なくとも私の周りにはなかったからお父さんに言ってみたら、お父さんが大工さんを連れてきた。
いやせめて音楽わかる人にして欲しかったよ。
でもこれが以外に大当たり。
大工さん細かい作業上手で木を切り出して長さ調節とか無茶苦茶上手くて、私の説明に追いついてくれた。
バチに苦労するんじゃないかと思ってたけど器用な人は違うね。
球体木で作るのって難しいんじゃないのかな?
これもあっという間に作ってくれた。
あくまでも子供用のおもちゃ仕様なんで、丁度手に持って運べるように箱型にして開いたら木琴って形。
これを大々的に売り出す予定。
既に貴族とかからは打診が来てるんだって。
お父さんは学園や教会の学校とかに卸したいんだけどね。
それを持ってきて、ソフィーア様に遊びませんか?って言ったら感動してた。
やったぁ!上手く行けば王室御用達だ。
あとは画板と絵の具、ここまでいくと前世の学校の教材なんだけど、正直それくらいしか思いつかない。
魔法のある世界だったら他にもゴリ押しで作れるかもだけど、この世界は魔法がない。
色々考えたら、知識があまりないなら文房具あたりが一番無難に作れる。
1回目の時、オーランが文房具を先に開発したのはそういう事なのかも。
文房具も一応提案している。
1回目でオーランがシャーペン開発してたけどあれどうやって作ったんだろう、謎。
うちでは鉛筆までしか作れないみたいだけど、それでも割と画期的。
インクだとやたら滲むしね。
消しゴム作りたいんだけど作り方が解らないし、ゴムの木があるか探すところから、だから最近の私の愛読書は植物図鑑だ。
これが結構勉強になるんだよね~
化粧水とか作れないかな?
今考え中なんだ。
と、色々ソフィーア様と弟に今考えてる開発途上の商品の説明をしてたら、完全に二人に怪しまれた。
いや~私の想像力だよと誤魔化したけど、誤魔化し切れずに前世の話をした。
序でに乙女ゲームの話と死に戻りの件も。
洗いざらいぶちまけちゃった、テヘ。
ソフィーア様は乙女ゲームに反応して、無茶苦茶突っ込んで聞いてくる。
貴方も悪役令嬢だよって言えなくなったよ。
弟とか完全に可哀想な目で私を見てるんだけど、それはどういう心境なんだろう。
お姉ちゃん悩むぜ。

そんなこんなで3日程たった頃、うちにソフィーア様のお祖父様の公爵がお忍び的な感じで訪ねてきた。

「ソフィ、よくぞ無事で居てくれた。
悪者は粗方退治したからな、もう安心していいぞ」

「⋯⋯お祖父様⋯。お手数かけて、私、私怖かったです」

感動の対面からソフィーア様は号泣。
そうだよね、ここで楽しそうに振る舞っていても、怖くて怖くてたまらなかった筈、私達に心配かけまいと頑張って居られたんだろうと思うと、私も、なんと弟も号泣、貰い泣きしちゃったよ。

そのあとお父さんも合流して応接室でお話を聞いた。
公爵様は子供にも詳らかに話す姿勢、これがしっかり者のソフィーア様を作ったんだなと感心した。

今回の事を画策したのはやはりエリザベス陣営。
正確に言うとエリザベスを隠れ蓑にした陣営。
これも結構な前からの確執になるんだって、そもそもソフィーア様のお祖母様、前王妃様が第二側妃様を王室に入れたのは、トップシークレット中のシークレットが関係してた。
なんと、エリザベス様は陛下の子じゃなかった。
陛下の弟の子、しかもこの王弟様、世間に隠してる所謂前陛下の隠し子。
そしてそのお作りになった課程も襲ったって、いや~こんな事言ったらなんだけど前陛下もその隠し子も碌な奴じゃない、不敬だけど声を大にして言いたい。
だから侯爵家に責任を取る形で第二側妃様にしたと。
なんで不肖の弟の責任を陛下が取らなきゃなのかと思うけど、これには侯爵の思惑が乗っかってた。
タリスティアでは女王の制度がないわけじゃない、ただ前例がないから出来れば男児が王太子にって形取ってる。
ここで王位継承権を曲がりなりにもエリザベスも持っちゃったから、早々にソフィーア様のお兄さんを立太子したかったのに、爺さんがまた邪魔する。
この爺さんが最悪な人なんだな、前王妃様も相当苦労したらしいし今も苦労してる。
だって一緒に離宮に隠居して引っ込んだのも監視するためなんだもん。
最悪な夫だよね。
しょうがないから、ここは爺さんの意を組まないと最悪王弟の子が王位に立ってしまう。
ソフィーア様のお兄さんを亡きものにしてね。
あ~王族怖い、怖い。
で、現王太子を王妃に作ったと⋯⋯この時はソフィーア様のお母様の第一側妃様より陛下の方が精神的に参っていたらしい。
よく考えたら可愛そうだよね~陛下。
実の父親に媚薬盛られるし、隠し子の尻吹かなきゃなんないし、好きでもない女に必死に子供作んなきゃだし。
王様も大変だ。
そんな事を経て、今回のソフィーア様の件なんだけど。
子供のイタズラ程度は、エリザベス本人が侍女を買収してやった事らしいんだけど、原因はヤキモチ。
公爵様曰くエリザベスは自分が陛下の子では無い事を知らない模様、まぁ言わないよね。
王室のトップシークレットだから、王弟の存在さえ貴族でもほぼ知ってる人いない、だから噂にすらなってないんだよね。
それなのに隣国スルベージュの王太子の婚約者が何故妹なのか、同じ年なんだから自分だろうって考え、まぁそうなるのはわかる。
陛下にしてみればスルベージュとは今後も友好を築いて行きたいから、自分の子の方を嫁がせたい。
スルベージュ国が安定してるしね。
それに、婚約打診の話が来た時に王太子とソフィーア様一度顔合わせをしてるみたい。
その時に偶然エリザベスも王太子見て一目惚れしたんだって、それで嫌がらせ。
まぁ10歳だからイタズラ程度しかできないよね、蜘蛛が毒蜘蛛じゃないだけ病んでる王女ではない模様。
でも、これをその王弟と侯爵がうまい事利用しようとしたんだって。
侯爵って娘襲われたのに王弟と手を結ぶって事は、襲われたのも嘘なんじゃないかな?
前王妃を丸め込むために計画したとしか思えない。
ここまで来ると王家乗ったりだよね。
でもソフィーア様誘拐してその後どうするつもりだったんだろう。
私の疑問に公爵様が教えてくれた。

「前王妃と陛下への交渉材料にするつもりだったらしい。碌でもない奴は碌でもない事しか考えないんだよ。露見したときの事とか、全く考えてない。
我が公爵家は王家の為にと尽力して来た自負がある。
だから娘が婚約者候補になった時も、娘の気持ちの優先よりも王家の事を考えた。
誰が婚約者になっても協力するつもりでいたんだ、それが我が公爵家の矜持だ。
なのに前陛下はとんでもない事しかしない、前王妃様がいなければ娘を側妃になど上げなかった。
でも私は今回の事でそれが間違ってたと気付いたんだ。
我が公爵家が前に出て入れば、後手に回らなければ、ここまで王家の醜聞が増える事はなかったかも知れないからね。
王弟どもはソフィを使って、エリザベスの立太子を画策したんだよ。笑えるだろう。
そんな事できる訳が無い、例えソフィーアが捕まっていたままだとしても⋯⋯それが王族なのだから。
もう私は黙ってるのを止めたんだ、前王妃様も同じ気持ちだ。近いうちに王家から公式発表があるからね」

公爵様の話では、まず前陛下は北の古城に幽閉。
王弟は毒杯、侯爵はお家取り潰しで本人は処刑。エリザベスは戒律の厳しい修道院へ、第二側妃は南の塔に幽閉。
ここで、種明かしされたんだけど実は現王妃のご実家の伯爵家、今の伯爵が前陛下の隠し子と判明したんだって、だから肩入れしてたみたい。
前陛下って前王妃様と結婚前にも隠し子作ってて養子に出してるんだよ。
しかも結構な若い時。ホント何考えてるんだろう。
えっ!でも孫と息子を結婚させるつもりだったの?と思ったら、なんと養女だったらしい。その時点でアウトだよね。
タリスティアでは養女は王妃になれないんだもん。
だから、現王妃も処罰対象で、どっかに幽閉か修道院に入れるみたい。
で、問題は王太子。
いくら王妃の資格のない人が産んだとしても陛下の子に変わりはない。
でも第一側妃様、ソフィーア様のお母さんが自分が育てると言ったんだって、できてるお人や~。
ただ、王太子降ろされてソフィーア様のお兄さんが立太子する。
公爵様の本気を見た。
でも⋯⋯⋯
この数日の間に、王家の膿を出すのができたなら、もっと早くにできたでしょう公爵~と心の中で突っ込みは忘れない。

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