上 下
31 / 34

番外編エミリー 裏設定の婚約者

しおりを挟む
私達4人は驚愕。
なんであんなに王女様が居たんだろう。
かくれんぼな訳ないし、何かあったとしか思えない。

「あっ!」

「どうしたエミリー」

お父さんに手招きして耳打ち。
(私、自己紹介してないし、ここうちとしか言ってない)
(!!!お前は馬鹿か。王女様が先にお名を言ったって事か?)
(そうそう)
顔面真っ青になったお父さんが、深々と王女様に頭を下げる。
私もお母さんも弟も同じく倣う。

「頭を上げてください、恩人の方に頭を下げさせるなど、あってはならない事ですわ」

「ありがとうございます、こちらこそ恐縮にございます。私共はこの地で商会を営んでおります。
家長のトーマス・バートン、こちらは妻のリンダ、娘のエミリー、息子のニードです。
知らない事とはいえ、この様な場所へ王女殿下を案内してしまい、誠に申し訳ありませんでした」

お父さんに倣ってみんなで頭を下げる。

「では、私をこちらまで運んで下さったのはエミリー嬢なんですね。本当にありがとうございました。
貴方が助けて下さらなかったら私は今頃どうなっていたか⋯先程の医師が申しておりました、腕が折れていると、この状態であのような場所に何時間、いえ何日もいたかと思うと⋯⋯頭を下げたくらいでは足りませぬ。
本当に⋯本当に⋯」

王女様が泣いてしまった、そりゃそうだよね。
泣くよね、あんなとこに夜もいたら怖すぎるよ、しかも王女だもん。

「医師によると今夜は熱が出るそうです。お休みになられた方がよろしいかと思われますが、殿下、お口に合うかは解りませんが食事を用意しております。
消化の良いものにしておりますのでお召し上がりになってお薬を飲まれませんか?」

「はい、何から何までありがとうございます、あの⋯ソフィーアと呼んで頂けませんか?
申し訳ないのですが貴方方以外の者に王女と解ってしまうのが、今大変不都合なのです」

「⋯気が付きませんで⋯そうですね。ではソフィーア様と呼ばせて頂きます。
恐縮にございますがこちらにいる間は取引先のご令嬢という事にさせて頂きますので、ご安心を」

お父さんの言葉にまた涙ぐんでしまったソフィーア様。何があったか解かんないけど気の毒だ。
手が折れてるから、食事の介助をしようかなと思ってたら、気の利くニードがもうリゾットを運んでた。
料理長、作り直してくれたんだね。
ソフィーア様はお腹空いてたんだね、ペロリと食べきった。お代わりも言ってみたけど遠慮したのか、高貴な方はお代わりとかしないのか、結構ですと言われた。
お薬を飲んたあとは、休んだほうがいいからとみんなで部屋を退出したんだけどさ。
ここでふと思う。
ねぇ私は何処で寝ればいいの?
取りあえずは、みんなで応接室に向かってるんだが、後で確認しないと下手したら寝る場所ないぞ。
自分でベッドシーツとか敷くの辛すぎる。

応接室でお茶をお母さんが準備してる間に、もう一度詳しく話せとお父さんに言われたんだけど、また話すの!
泣くぜ!
どうもソフィーア様が見つかった場所よりもボレロを見つけた場所の方を気にしてるみたいだ。
家の使用人には内緒だから、取引先の令嬢として私達も接するようにと私とニードは再度の注意を受けた。
ライラにも内緒と言う事に、まぁ小さいから聞いても解らないかもしれないけれど、念には念を入れとかないとね。
どういう経路でソフィーア様がこんな事になったのかは話してくれるの待ちだから、それから対策を立てる事になった。
ここでお母さんに何処で寝るのか聞いたら、やっぱり準備してなかった。
メイドに客間を用意してと言ってくれた。
良かった、だってもう眠いんだもん。

──────────────

次の朝、とっても良い天気で気分爽快。
着替えるために自分の部屋に戻ると、ソフィーア様は起きていた。寝れたのかな?

「おはようございます。眠れましたか?」

「おはようございます、眠れたわ。普段しない早起きまでしちゃったわ」

「眠れたなら良かったです。ソフィーア様、私着替えますけど、ソフィーア様も私の服に一旦着替えますか?
多分あとで父が着替えを用意してきてくれると思いますけど、どうされますか?」

「貸して頂けるの?」

「ハイ、お好きなの選んで下さい。気に入るのがあるか解らないですけど我慢してくださいね。着替えは私が手伝いますので」

「ありがとう。選ばせてもらうわね」

ソフィーア様はベージュのワンピースを選んだ、私の服の中でも割と地味な物だが、流石です。値段はとんでもなくお高い生地のワンピースです。お父さんが最近、いち推しで仕入れてる、ジョーゼットのワンピースだ。
私は普通の水色の綿生地のワンピースにした。
ソフィーア様は吊ってる腕が痛むのか、着るとき少し痛がった。
今度からはメイドを手配しないとね。
私じゃまだ子供だから上手にお手伝い出来ないや。
顔も洗えないだろうからぬるま湯とタオルを持ってきたら上手に自分で拭いてた。

「エミリー嬢、エミリーと呼んでもいいかしら?」

「どうぞ、どうぞ。あっ!ソフィーア様、私平民なので行儀作法とか習ってないんです。
来年になったらお父さんが家庭教師とマナーの教師を呼ぶから勉強しろって言われてるけど、今はまだ何も知らないです(ホントは少しは知ってるけどね)失礼な事するかもしれないし、言葉遣いもちゃんとできないかも知れないけれど、許してくださいね」

「大丈夫よ。むしろ気安くしてもらえる方が今は安心出来るの。こちらからお願いするわ」

「わかりました~よろしくお願いします」

「えぇよろしくね。エミリー朝早くから申し訳ないんだけど早急に、バートン氏に話したいの。取次を頼めるかしら?」

「それは直ぐ取り次ぎますけど、質問です!ソフィーア様。おいくつですか?」

「えっ?今年10歳になりましたの。まだまだ子供っぽくて」

いや照れてるけど充分しっかりしてるから、やっぱり王女ともなると普通の10歳じゃないね。
態度も言葉遣いも王族流石だよ。
頼まれたのでお父さんに声掛けに行こうとしたら、本人がやって来た。

「おはようございます、ソフィーア様。
もう起きてらしたのですね。食事をどうするか聞きにきました」

お父さんが?
何か変だなと訝しんでたら

「今、エミリーに取次をお願いしてたのですがお話があるのですけど朝食後によろしいですか?」

「畏まりました。食事はこの部屋で?」

「えぇ、エミリーと一緒にいいかしら?」

「どうぞ、まだ礼儀もなってない娘ですが。
エミリー食事を運ばせるから、手が不自由だろうからお助けして差し上げなさい」

「ハイ」

「ではソフィーア様。食事が終わる頃また伺います」

「えぇ、お待ちしてます」

ソフィーア様は朝食のパンを大層気に入って4個も食べてた。
食事を終えてお父さんを呼びに行こうとするとソフィーア様は、場所は応接室が有るならばそこで人払いをしてほしいと言ってきた。
お父さんに伝えたら、「エミリー覚悟しておくように」って言われた。えっ、怖いんですけど~
お父さんは解ってたのかな?
ソフィーア様がこんな風に言い出す事。
まぁ私もなんとな~く解ってたけどね、普通の10歳じゃないんで。
タリスティアで平和に過ごすつもりがこんな事になるなんてなぁ。
1回目の時、私とソフィーア様には接点はなかったんだけど同じ事起きてたんじゃないのかな?
その時は、どんな風に危機を乗り越えたのかな?
ん~思い出せ、思い出せエミリー。
ソフィーア様は乙女ゲームではスルベージュの王太子の婚約者だった。
でも実はこれ裏設定になるんだよね。
何故なら3回失敗するまではとしか出ていない。
偶然知ったんだけど王太子ルートを3回失敗した後に、王太子のセリフが変わって、アレッ?って思って4回目を始めたら婚約者はソフィーア・タリスティアって出て、無茶苦茶スムーズに攻略出来るようになるの。
何か謎だったのよね~関係あるかな?今回の事と。
取りあえずソフィーア様を呼んでこよう。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

処理中です...