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番外編アリー お母様の過去
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その日私はお母様に呼ばれたわ。
10歳のときからおよそ8年、私はお母様と数える程しか会話をしていない。
私がオーランとの婚約を望んだ時からお母様は私に失望されたのでしょう。
何故なのかは私には未だ解らないけれど、確かにあの時から話しかけられる事はなかったように思います。
久しぶりのお母様の部屋
深呼吸を3回もして同じ数だけノックをすると
「お入りなさい」と優しく声がかかる。
ドキドキしながら中に入ると8年前よりも家具の配置が少し変わったように思う。
「アリーよく来てくれたわね。ここにお座りなさい
あぁ待って顔をよく見せて、少し痩せたかしら?」
昔と変わらずお母様は私を軽く抱きしめてソファを薦めてくれる。
お母様の機嫌の良さに困惑してしまう。
お母様どうされたんでしょう?
私はお母様に失望されて嫌われてると思っていたのだけど今日のお母様は子供の時に戻ったみたい。
困惑もしているけれど嬉しさが勝ってしまう。
侍女がテーブルにお茶を用意して下がると、お母様が徐に話し始めた。
「アリー。突然呼ばれてびっくりしたでしょう?
私は先ず貴方に謝らなければならないわ。
自分の事で頭がいっぱいで母親なのにあなたの事を顧みることをしなくて随分と放って置いてしまったわ。
本当にごめんなさい。弱い母親でごめんなさい。今更謝って済むことではないかもしれないわね。
あなたの気持ちを考えると⋯⋯
でもずっと話さなければいけない事があって私に勇気がなくて話せなかったの⋯⋯
聞いてもらえないかしら?」
私が黙って頷くとお母様は話し始めた。
その話はとても信じられないような、ともすれば有り得るような話だった。
お母様の生まれ育った国が遠いラシュトニア王国だった事
お母様が公爵令嬢だった事
王太子の婚約者だった事
祖父と一緒に冤罪で財産没収の上国外追放された事
話を聞いているうちに体が固まってしまった私の隣にお母様が来てくれて背中を擦ってくれる。
「あとで考えれば気づけた事だったのよ。父が横領をしたと証拠も揃ってると言われたけれど父は投獄されずにそのまま国外追放だったの。
本来なら投獄後に裁判があるはずなのに、でも私達は甘んじて罰を受け入れたの。
財産没収とされたけど公爵家だもの。うちには隠し財産もあったのよ。でもね一族に迷惑がかかるのは必須だから父はみんなとそれを分配してから国を出たの。
あぁ言ってなかったわね。私の母、あなたのお祖母様は私が子供の時に亡くなってたのよ。私とお父様は二人っきりの家族だったの」
お母様はその時を思い出したのかハンカチで目元を抑えてから続きをお話されました。
「最初はね命の危険も考えて少しでも遠くに行こうと必死で旅をしたわ。一つ国を抜け二つ目の国を通り過ぎた頃には段々と旅が楽しくなったの。ラシュトニアではお父様と二人で過ごす時間なんてなかなか取れなかったし、貴族にはもう戻れないけど二人で生きていくにはこれでいいかもなってお父様もある時仰ってたわ。
そうしていくうちに手持ちの財産があるうちに商売を始めようって、そして過ごしやすそうな国へ辿り着いたらそこに定住しようって決めたの」
その旅の途中でこの国に寄ったそう。
ここに定住する予定はなかったけれどお父様と知り合って仲良くなって、離れがたいなと思ってる時にお祖父様が病で亡くなってしまったそうです。
「お父様が亡くなる少し前にね。偶に連絡を取り合ってた親類からの伝言が届いていたの。でも間に何人も入っているので時間の経過もわからないし、信用度も薄いからとお父様は気に留めてなかったのだけれど、私達の冤罪が晴れたという伝言だったの。
私、お父様が亡くなったときに頼れるのがエージェストしかいなくて、その話をしてラシュトニアの事を調べてもらえないかとお願いしようと思ってたの、でもねその前にエージェストがプロポーズしてくれたのよ。
私とっても嬉しかった。だってその時私は平民だったのよ。なのに身分の事も何もかも心配しなくていいからって言ってくれて⋯本当に幸せだったの、アリー、あなたが10歳の時まではね」
✎ ------------------------
※エージェストはアリーの父です。
10歳のときからおよそ8年、私はお母様と数える程しか会話をしていない。
私がオーランとの婚約を望んだ時からお母様は私に失望されたのでしょう。
何故なのかは私には未だ解らないけれど、確かにあの時から話しかけられる事はなかったように思います。
久しぶりのお母様の部屋
深呼吸を3回もして同じ数だけノックをすると
「お入りなさい」と優しく声がかかる。
ドキドキしながら中に入ると8年前よりも家具の配置が少し変わったように思う。
「アリーよく来てくれたわね。ここにお座りなさい
あぁ待って顔をよく見せて、少し痩せたかしら?」
昔と変わらずお母様は私を軽く抱きしめてソファを薦めてくれる。
お母様の機嫌の良さに困惑してしまう。
お母様どうされたんでしょう?
私はお母様に失望されて嫌われてると思っていたのだけど今日のお母様は子供の時に戻ったみたい。
困惑もしているけれど嬉しさが勝ってしまう。
侍女がテーブルにお茶を用意して下がると、お母様が徐に話し始めた。
「アリー。突然呼ばれてびっくりしたでしょう?
私は先ず貴方に謝らなければならないわ。
自分の事で頭がいっぱいで母親なのにあなたの事を顧みることをしなくて随分と放って置いてしまったわ。
本当にごめんなさい。弱い母親でごめんなさい。今更謝って済むことではないかもしれないわね。
あなたの気持ちを考えると⋯⋯
でもずっと話さなければいけない事があって私に勇気がなくて話せなかったの⋯⋯
聞いてもらえないかしら?」
私が黙って頷くとお母様は話し始めた。
その話はとても信じられないような、ともすれば有り得るような話だった。
お母様の生まれ育った国が遠いラシュトニア王国だった事
お母様が公爵令嬢だった事
王太子の婚約者だった事
祖父と一緒に冤罪で財産没収の上国外追放された事
話を聞いているうちに体が固まってしまった私の隣にお母様が来てくれて背中を擦ってくれる。
「あとで考えれば気づけた事だったのよ。父が横領をしたと証拠も揃ってると言われたけれど父は投獄されずにそのまま国外追放だったの。
本来なら投獄後に裁判があるはずなのに、でも私達は甘んじて罰を受け入れたの。
財産没収とされたけど公爵家だもの。うちには隠し財産もあったのよ。でもね一族に迷惑がかかるのは必須だから父はみんなとそれを分配してから国を出たの。
あぁ言ってなかったわね。私の母、あなたのお祖母様は私が子供の時に亡くなってたのよ。私とお父様は二人っきりの家族だったの」
お母様はその時を思い出したのかハンカチで目元を抑えてから続きをお話されました。
「最初はね命の危険も考えて少しでも遠くに行こうと必死で旅をしたわ。一つ国を抜け二つ目の国を通り過ぎた頃には段々と旅が楽しくなったの。ラシュトニアではお父様と二人で過ごす時間なんてなかなか取れなかったし、貴族にはもう戻れないけど二人で生きていくにはこれでいいかもなってお父様もある時仰ってたわ。
そうしていくうちに手持ちの財産があるうちに商売を始めようって、そして過ごしやすそうな国へ辿り着いたらそこに定住しようって決めたの」
その旅の途中でこの国に寄ったそう。
ここに定住する予定はなかったけれどお父様と知り合って仲良くなって、離れがたいなと思ってる時にお祖父様が病で亡くなってしまったそうです。
「お父様が亡くなる少し前にね。偶に連絡を取り合ってた親類からの伝言が届いていたの。でも間に何人も入っているので時間の経過もわからないし、信用度も薄いからとお父様は気に留めてなかったのだけれど、私達の冤罪が晴れたという伝言だったの。
私、お父様が亡くなったときに頼れるのがエージェストしかいなくて、その話をしてラシュトニアの事を調べてもらえないかとお願いしようと思ってたの、でもねその前にエージェストがプロポーズしてくれたのよ。
私とっても嬉しかった。だってその時私は平民だったのよ。なのに身分の事も何もかも心配しなくていいからって言ってくれて⋯本当に幸せだったの、アリー、あなたが10歳の時まではね」
✎ ------------------------
※エージェストはアリーの父です。
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