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本編最終話 婚約者が好きなのです
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僕の名前はサミー・ルゥ身分は平民だ。
今日は僕が通っていた学園の卒業式だった。
卒業後は王宮で文官として就職も決まった。
特待生として奨学金を貰ったので何の心配もせずに通うことが出来た。
平民にしては順風満帆だ。
あの時、試験に間に合わなかったら、この未来は無く、
たった一人の家族である妹も養って行くことが出来なくなっていただろう。
今日は彼女も婚約者と一緒に卒業パーティに参加するはずだ。
僕は彼女に確かめなければならないことがある。
──────────────
スルベージュ王国、僕が生まれて育った国。
とても平和な国だ。
ここ70年程は戦争もなく他国とも難なく渡り合ってる。
だからこそ僕みたいな平民に生まれたものは死ぬまで平民だ。
戦争でもあれば志願して出世して、運が良ければ爵位を賜ることもできる機会があるだろうが、平和だからよっぽどの事がない限り叙爵はない。
平民の中には商会を営み手広くやって裕福なものもいるが残念ながら僕の両親は普通の親だった。
父は大きな商会の荷物係をしていたがある日、荷の下敷きになって亡くなった。
母は父の代わりに僕と妹を懸命に育ててくれた。
幸い仕事は父が努めていた商会で、雇ってもらえたし父のことがあったので給金も少し上乗せしてくれていた。
偶に僕が妹を連れて顔を出すとお手伝いと言って簡単な仕事を与えてお小遣いもくれた。
商会の会長さんが僕に読み書きを教えてくれたので僕は昼間は町の図書館で本を読み漁っていた。
妹は教会に行き併設されていた孤児院の子供達と遊んでた。
そんなある日母が流行り病に罹り亡くなってしまって僕らは二人になった。
僕が15歳、妹が8歳の時だ。
本来ならその時点で僕は働きに行き妹を養わなければならなかったのだが、会長が僕に薦めてくれたのは学園の試験を受けることだった。
僕らの国は平民の学校は一つしかない。
それも昨年出来たばかりで通えるのは10歳から14歳までだ。
僕は1年だけ通える予定だったが、母の看病もあり直ぐに辞めた。
あとは貴族の学校のみだ。
ただ一つだけ平民を受け容れてくれる学校があった。
しかも特待生として奨学金も貰える。
奨学金は返さなくてもいいし内訳の中に生活費も含んでいる。破格の待遇だ。
その試験を受けないかと薦められた。
会長曰く僕はとんでもなく頭がいいらしい。
自分では解らなかった、これが普通と思ってたから。
みんなも本の内容は1回読めば覚えられると思ってた。
しかも学園を卒業したら王宮で文官として働けるらしい。配属されるのは成績や後ろ盾になってくれる貴族によって変わるらしいけど、それも学園にいる時に後ろ盾になってくれる貴族を紹介してくれる。
僕はすぐさま会長に推薦状を書いてもらい試験を受けることにした。
試験は入学の半年前に行われる。
でも試験の3日前から妹が熱を出してしまって、寝ずの看病をした。
当日の朝、熱が下がった妹が僕に試験に行ってと涙ながらに言ってくれた。
隣の奥さんに妹を頼み家を出たんだけど、馬車乗り場が満員の列でなかなか乗れない。
待ってたら間に合わないかもと思い歩くことにした。
急ぎ足で歩いていたら途中で転んでしまって足を挫いてしまった。
蹲ってる僕に声をかけてくれたのがリリーベル様だ。
彼女自身はほぼ話さなかったけどお付きの侍女様がお嬢様に言われたからと助けてくれた。
そして試験会場の学園まで送ってくれたんだ。
行きすがら侍女様の話ではお姉さんも今日が学園の試験で付いて行ったところだそうだ。
ホントは馬車止めの所で待つように言われたけど試験後に、お腹を空かせるであろうお姉さんに差し入れを買いに行く途中で僕に気づいてくれたらしい。
リリーベル様は見た目も心も天使のような人だった。
そのおかげで僕は試験に受かり今日卒業出来た。
学園に入ってからお礼を言いたかったけど、お姉さんには内緒だと言われたし平民の俺がこちらから声をかけることも憚られた。
2年後にリリーベル様が入学した時にもお礼を言いたかったけれど周りの人が威嚇するから近寄れなかった。
だけどおそらく声をかけられる機会は今日だけだ。
今後は会う接点もない。
学園で彼女の婚約者について他に思い合う人がいるんじゃないかという噂があった。
貴族は政略結婚が当たり前で好きでも何でもなくても結婚しないといけないと聞いた。
僕が心配することじゃないかもしれない。
でも大恩人のリリーベル様が幸せじゃないなら僕は何をしても彼女が幸せになるようにお助けしなければならない。それがあの日僕と妹の人生を救ってくれたリリーベル様への恩返しだ。
パーティも佳境に入りダンスで疲れたのかリリーベル様が壁際の椅子に座ってた。
意を決して近づいて僕は話しかけた。
「リリーベル様。礼儀に反しますがお声をかけさせて頂きました、本日卒業のDクラスだった サミー・ルゥです」
「あの⋯⋯⋯初めまして」
「実は初めましてではありません。3年前に道端で足を挫いた所をこの学園に送っていただいた者です」
「あぁ!あの時の!わぁご卒業おめでとうございます。ご立派になられたんですね、あらっ先輩に向かって失礼しました」
キレイなお辞儀でリリーベル様は応えてくれた。
「あの時のお礼が遅くなり申し訳ありません。改めましてあの時送ってくださったおかげで今後の道が開けました。本当にありがとうございました」
リリーベル様は当たり前の事をしただけなので気にするなと言ってくれた、あまり長く話せないと思ったので僕はホントに聞きたかったことを聞いた。
「失礼を承知で聞きます。婚約者の方とは政略とかではないですか?リリーベル様はお幸せになれますか?」
僕の問にびっくりした顔をしたリリーベル様は
真っ直ぐに僕を見て、そしてにっこり笑って言った。
「私はとても幸せです。
それに私は婚約者が好きなのです」
その笑顔を見て僕は確信した
彼女は幸せになれると
end
✼•┈┈┈┈•✼
「婚約者が好きなのです」の本編はここで終了です
ここまでお読み頂きありがとうございました。
次回から番外編に移ります
楽しんで頂けますと作者も嬉しいです。
今後共よろしくお願いします(,,ᴗ ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚
今日は僕が通っていた学園の卒業式だった。
卒業後は王宮で文官として就職も決まった。
特待生として奨学金を貰ったので何の心配もせずに通うことが出来た。
平民にしては順風満帆だ。
あの時、試験に間に合わなかったら、この未来は無く、
たった一人の家族である妹も養って行くことが出来なくなっていただろう。
今日は彼女も婚約者と一緒に卒業パーティに参加するはずだ。
僕は彼女に確かめなければならないことがある。
──────────────
スルベージュ王国、僕が生まれて育った国。
とても平和な国だ。
ここ70年程は戦争もなく他国とも難なく渡り合ってる。
だからこそ僕みたいな平民に生まれたものは死ぬまで平民だ。
戦争でもあれば志願して出世して、運が良ければ爵位を賜ることもできる機会があるだろうが、平和だからよっぽどの事がない限り叙爵はない。
平民の中には商会を営み手広くやって裕福なものもいるが残念ながら僕の両親は普通の親だった。
父は大きな商会の荷物係をしていたがある日、荷の下敷きになって亡くなった。
母は父の代わりに僕と妹を懸命に育ててくれた。
幸い仕事は父が努めていた商会で、雇ってもらえたし父のことがあったので給金も少し上乗せしてくれていた。
偶に僕が妹を連れて顔を出すとお手伝いと言って簡単な仕事を与えてお小遣いもくれた。
商会の会長さんが僕に読み書きを教えてくれたので僕は昼間は町の図書館で本を読み漁っていた。
妹は教会に行き併設されていた孤児院の子供達と遊んでた。
そんなある日母が流行り病に罹り亡くなってしまって僕らは二人になった。
僕が15歳、妹が8歳の時だ。
本来ならその時点で僕は働きに行き妹を養わなければならなかったのだが、会長が僕に薦めてくれたのは学園の試験を受けることだった。
僕らの国は平民の学校は一つしかない。
それも昨年出来たばかりで通えるのは10歳から14歳までだ。
僕は1年だけ通える予定だったが、母の看病もあり直ぐに辞めた。
あとは貴族の学校のみだ。
ただ一つだけ平民を受け容れてくれる学校があった。
しかも特待生として奨学金も貰える。
奨学金は返さなくてもいいし内訳の中に生活費も含んでいる。破格の待遇だ。
その試験を受けないかと薦められた。
会長曰く僕はとんでもなく頭がいいらしい。
自分では解らなかった、これが普通と思ってたから。
みんなも本の内容は1回読めば覚えられると思ってた。
しかも学園を卒業したら王宮で文官として働けるらしい。配属されるのは成績や後ろ盾になってくれる貴族によって変わるらしいけど、それも学園にいる時に後ろ盾になってくれる貴族を紹介してくれる。
僕はすぐさま会長に推薦状を書いてもらい試験を受けることにした。
試験は入学の半年前に行われる。
でも試験の3日前から妹が熱を出してしまって、寝ずの看病をした。
当日の朝、熱が下がった妹が僕に試験に行ってと涙ながらに言ってくれた。
隣の奥さんに妹を頼み家を出たんだけど、馬車乗り場が満員の列でなかなか乗れない。
待ってたら間に合わないかもと思い歩くことにした。
急ぎ足で歩いていたら途中で転んでしまって足を挫いてしまった。
蹲ってる僕に声をかけてくれたのがリリーベル様だ。
彼女自身はほぼ話さなかったけどお付きの侍女様がお嬢様に言われたからと助けてくれた。
そして試験会場の学園まで送ってくれたんだ。
行きすがら侍女様の話ではお姉さんも今日が学園の試験で付いて行ったところだそうだ。
ホントは馬車止めの所で待つように言われたけど試験後に、お腹を空かせるであろうお姉さんに差し入れを買いに行く途中で僕に気づいてくれたらしい。
リリーベル様は見た目も心も天使のような人だった。
そのおかげで僕は試験に受かり今日卒業出来た。
学園に入ってからお礼を言いたかったけど、お姉さんには内緒だと言われたし平民の俺がこちらから声をかけることも憚られた。
2年後にリリーベル様が入学した時にもお礼を言いたかったけれど周りの人が威嚇するから近寄れなかった。
だけどおそらく声をかけられる機会は今日だけだ。
今後は会う接点もない。
学園で彼女の婚約者について他に思い合う人がいるんじゃないかという噂があった。
貴族は政略結婚が当たり前で好きでも何でもなくても結婚しないといけないと聞いた。
僕が心配することじゃないかもしれない。
でも大恩人のリリーベル様が幸せじゃないなら僕は何をしても彼女が幸せになるようにお助けしなければならない。それがあの日僕と妹の人生を救ってくれたリリーベル様への恩返しだ。
パーティも佳境に入りダンスで疲れたのかリリーベル様が壁際の椅子に座ってた。
意を決して近づいて僕は話しかけた。
「リリーベル様。礼儀に反しますがお声をかけさせて頂きました、本日卒業のDクラスだった サミー・ルゥです」
「あの⋯⋯⋯初めまして」
「実は初めましてではありません。3年前に道端で足を挫いた所をこの学園に送っていただいた者です」
「あぁ!あの時の!わぁご卒業おめでとうございます。ご立派になられたんですね、あらっ先輩に向かって失礼しました」
キレイなお辞儀でリリーベル様は応えてくれた。
「あの時のお礼が遅くなり申し訳ありません。改めましてあの時送ってくださったおかげで今後の道が開けました。本当にありがとうございました」
リリーベル様は当たり前の事をしただけなので気にするなと言ってくれた、あまり長く話せないと思ったので僕はホントに聞きたかったことを聞いた。
「失礼を承知で聞きます。婚約者の方とは政略とかではないですか?リリーベル様はお幸せになれますか?」
僕の問にびっくりした顔をしたリリーベル様は
真っ直ぐに僕を見て、そしてにっこり笑って言った。
「私はとても幸せです。
それに私は婚約者が好きなのです」
その笑顔を見て僕は確信した
彼女は幸せになれると
end
✼•┈┈┈┈•✼
「婚約者が好きなのです」の本編はここで終了です
ここまでお読み頂きありがとうございました。
次回から番外編に移ります
楽しんで頂けますと作者も嬉しいです。
今後共よろしくお願いします(,,ᴗ ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚
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