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浮上1
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~~♪
ピッ。
朝5時。スマホのアラームが鳴る。
いつもならスッキリと目が覚めてランニングに行く用意が始められるはずが、何故かまだ頭がボーッとしていて視点もはっきりと定まらない。
見慣れない天井にしばらく?マークを浮かべつつどうにか頭が働き出してくれないかと思いながら起き上がると、自分が寝ていた場所から右斜め下の紺色で厚手のマットレスの上に左肘で己の頭を支え横向きになってこちらをじっと見つめる久志と目が合う。
「!!!???」
驚きすぎて声が出ない悲鳴を上げてしまった。
※※※※※※※※※※※※※
「お早う。良く眠れた?」
未だに心臓が口から飛び出して、彼方に飛んで行ってしまったのではないかと思う程の衝撃を受けている俺は、ベッドに座ったまま動けない。反対に久志はマットレスからゆったりと起き上がると、信じられない程爽やかな笑顔を向けてくる。
「彰、大丈夫か?」
口も身体もあわあわと震え、動けない俺の左隣に久志は腰掛けると右手で俺の頭を抱える様に腕を回す。そして、優しく髪を撫でながら左手で顎に手を添え頬にキスをしようと唇を近づけてきたのだった。
ドンッ!
寸での所で覚醒した俺は、慌てて久志を押し退けて立ち上がりベッドから降りる。
「おまっ!マジおかしいぞ!!何しようとしてんだッ!」
やはり顔が真っ赤になっているだろう俺は、叫びながらもジリジリと久志から距離を取る様に後ずさる。
「何って、朝の挨拶?声かけたのに反応がないから、まだ寝ているのかと思ったよ」
またもやにっこりと爽やかな笑顔の久志に、俺は今日絶対人類が滅亡すると思った。
「やだなぁ。俺ごときで滅ぼせちゃうなら、とっくに彰と俺だけを残して実行してるって♪」
「!?」
こ、心読まれた!?
つ~か、今また凄い破壊力の笑顔浮かべながら恐ろしい事言わなかったか!?
「彰の考えている事なら大体解るよ❤️」
『マジか!怖ッ!!』
久志から目を反らせず、戸に背を向けたまま下がりきる。漸く背に当たった引き戸をどうにか開けたくて背中に手を回して横にスライドさせ様と試みるも、俺は頭がパニック状態で自分が戸に寄っ掛かっている所為で動かない事に気付けないでいた。
「そんなに怯えられると押さえられなくなるなぁ……♪」
久志は極上の笑顔の上に更に瞳に熱を込め、まるで肉食獸が獲物を見つけたかの様にゆっくりと俺に近づいてくる。
「彰、顔色悪いよ?もう少し寝る?俺が抱き締めて温めてあげるよ?」
にこにこと優しい笑顔と俺の事が心配で堪らない。と言った口調で近づいてくる久志だが、俺は逆に恐怖心しか感じず手を伸ばしてきた久志が後少しで肩に触れそうになった瞬間『捕まるッ!』と思い、何故か死も覚悟してその場に座り込んでしまった。
ギュッと頭を抱え込む様に丸く座り込み震えていると、突然後ろの引き戸が動いた。戸に寄っ掛かっていた俺は、そのまま後ろに倒れる様に転がると、誰かに背中から抱き締められた。
「彰!」
「!?、???」
「久志、あんたが落ち着けっ!」
久志に声を荒げ、優しく抱き締めてくれながら俺の背中を撫でてくれていた人はなんと久志の姉だった。
「ら…蕾紗さん?」
「うん。彰ちゃん、私だよ。もう大丈夫だから、泣かないで?」
彼女に言われて初めて俺は止めどなく涙が流れ出ている事に気が付く。そんな俺の姿に蕾紗さんは優しく微笑み、フェイスタオルで顔を拭いてくれた。
蕾紗さんは俺達より5歳年上で医大生。
高等科までは俺達と同じ学園に通っていたが、薬品関係の研究をしたいって事で外部受験をし、見事国立の医大に入学した。
まだまだ研究したい事があるとかで、卒業せず院生になる予定らしい。
しかし、蕾紗さんは何故か俺の事を小さい頃から“ちゃん”付けで呼ぶ。俺の弟にはきちんと“君”呼びなのに、だ。一時期“ちゃん”付けが嫌で呼ばれても無視をしていたが、高校生になっても変わらないので俺は諦める事にした。きっと、俺が蕾紗さんの背を抜かせない所為で未だにもう1人いる小さな弟扱いなのだろう……。
「姉貴……」
蕾紗さんは、優しく俺を立ち上がらせて久志の視線から俺を守る様にスッと前に出て隠してくれた。女性に守られるとか情けないかも知れないが、本当に今朝の久志はおかし過ぎるし久志が俺の事を見つめて側に来るだけで俺は身体の自由がきかなくなり、呼吸が出来なくなって動けなくなってしまう。
「もう一度言うわ。久志、あんたが落ち着かなくちゃダメよ。あんた自身の所為で全てを台無しにしたいの?もしそうなったら誰よりも苦しんで後悔するのはあんたでしょう?」
一体何の話か解らなかったが、蕾紗さんの言葉に久志は歪んでしまった顔から力を抜き、少し悲しげな瞳をしたままでいつもの無表情に戻った。
「すみませんでした、姉さん。……そして彰」
名を呼ばれた時、思わず身体がビクッと震え蕾紗さんの背中にすがりついた。しかし蕾紗さんがそっと腕を背中に回して久志から俺が見える様に横にズレる。
「悪かった、彰」
ぐっと頭を下げて心からの謝罪の気持ちを表した。
久志がいつもの口調になったおかげか先程まで感じていた恐怖心は薄まり、俺はやっと声を出す事が出来た。
「……久志、一体どうしてしまったんだ?」
「……」
豹変、としか言いようがない。何故あんな風になったのか久志も蕾紗さんも原因が解っている様子なので、教えてもらいたい。
しかし久志はうつむき、無言のまま緩く頭を横に振るだけで何も言わない。
「ごめんね、彰ちゃん。昨日満月だったでしょう?それに彰ちゃんが久々にうちに泊まってくれるから久志も箍が外れちゃったのよ。でも、もうこんな事は起こさないないから。安心して?」
たしかに久しぶりに久志の実家に来た。しかし、昨日まで毎日学校で会い、部活も一緒で帰宅も学校との通学路が丁度俺の家を通った先が久志の家だから、朝晩一緒に歩いてもいた。
いくら幼なじみとは言え、男同士でそこまで一緒にいるのも変かもしれないが、今朝まで全く変かも?と疑問に思わなかった事に今更ながら気付いた俺だった。
だからこそもう一つの方も首をかしげる。
「満月だった所為で……、久志はおかしかったのか?」
未だに久志は俯いたままなので、俺は隣にいる蕾紗さんに質問をする。
「ん~、まぁ、そうね。原因は満月だけと断定は出来ないし、久志が変わったって訳じゃないんだけど……。ごめんね、まだはっきりと教えてあげられないのよ。今回の様な事は本当にもう起きないから大丈夫!だからこの話は一旦おしまいじゃダメかな?」
「まだはっきりと教えてあげられない……?」
じゃあ、いつか教えてもらえるものなのか?
しかも久志が変わった訳ではない?ならば原因は一緒にいた俺か?俺は何処か変わってしまったのか?でも、一体何処が????
何となく自分の体を触ってみたが、何か変わった様には見えない。
「ふふ、彰ちゃん可愛い❤」
突然ギュッと蕾紗さんに抱き締められて頬にキスをされた。
『うわっ、蕾紗さんの唇柔け~!ヤバッ気持ち良い……』
柔らかい唇の気持ち良さに顔が赤くなり、俺は気持ちが舞い上がってしまった。
「!?」
俺がポーッと舞い上がった瞬間、先程まで俯いていた久志がガバッと顔を上げ、蕾紗さんを睨む。
それこそ目力だけで殺せるんじゃないかと思える程恐い顔で。(もしあの目が俺に向けられていたら、俺は即心筋梗塞を起こして天に召せる自信がある)
「頭、冷えた?」
そんな目力レーザーなんぞ全く気になっていない様子の蕾紗さんはやおら俺の手を引き、もう片方の空いている手には俺のスーツケースを持ってすたすたと久志の部屋を出ていく。
ピッ。
朝5時。スマホのアラームが鳴る。
いつもならスッキリと目が覚めてランニングに行く用意が始められるはずが、何故かまだ頭がボーッとしていて視点もはっきりと定まらない。
見慣れない天井にしばらく?マークを浮かべつつどうにか頭が働き出してくれないかと思いながら起き上がると、自分が寝ていた場所から右斜め下の紺色で厚手のマットレスの上に左肘で己の頭を支え横向きになってこちらをじっと見つめる久志と目が合う。
「!!!???」
驚きすぎて声が出ない悲鳴を上げてしまった。
※※※※※※※※※※※※※
「お早う。良く眠れた?」
未だに心臓が口から飛び出して、彼方に飛んで行ってしまったのではないかと思う程の衝撃を受けている俺は、ベッドに座ったまま動けない。反対に久志はマットレスからゆったりと起き上がると、信じられない程爽やかな笑顔を向けてくる。
「彰、大丈夫か?」
口も身体もあわあわと震え、動けない俺の左隣に久志は腰掛けると右手で俺の頭を抱える様に腕を回す。そして、優しく髪を撫でながら左手で顎に手を添え頬にキスをしようと唇を近づけてきたのだった。
ドンッ!
寸での所で覚醒した俺は、慌てて久志を押し退けて立ち上がりベッドから降りる。
「おまっ!マジおかしいぞ!!何しようとしてんだッ!」
やはり顔が真っ赤になっているだろう俺は、叫びながらもジリジリと久志から距離を取る様に後ずさる。
「何って、朝の挨拶?声かけたのに反応がないから、まだ寝ているのかと思ったよ」
またもやにっこりと爽やかな笑顔の久志に、俺は今日絶対人類が滅亡すると思った。
「やだなぁ。俺ごときで滅ぼせちゃうなら、とっくに彰と俺だけを残して実行してるって♪」
「!?」
こ、心読まれた!?
つ~か、今また凄い破壊力の笑顔浮かべながら恐ろしい事言わなかったか!?
「彰の考えている事なら大体解るよ❤️」
『マジか!怖ッ!!』
久志から目を反らせず、戸に背を向けたまま下がりきる。漸く背に当たった引き戸をどうにか開けたくて背中に手を回して横にスライドさせ様と試みるも、俺は頭がパニック状態で自分が戸に寄っ掛かっている所為で動かない事に気付けないでいた。
「そんなに怯えられると押さえられなくなるなぁ……♪」
久志は極上の笑顔の上に更に瞳に熱を込め、まるで肉食獸が獲物を見つけたかの様にゆっくりと俺に近づいてくる。
「彰、顔色悪いよ?もう少し寝る?俺が抱き締めて温めてあげるよ?」
にこにこと優しい笑顔と俺の事が心配で堪らない。と言った口調で近づいてくる久志だが、俺は逆に恐怖心しか感じず手を伸ばしてきた久志が後少しで肩に触れそうになった瞬間『捕まるッ!』と思い、何故か死も覚悟してその場に座り込んでしまった。
ギュッと頭を抱え込む様に丸く座り込み震えていると、突然後ろの引き戸が動いた。戸に寄っ掛かっていた俺は、そのまま後ろに倒れる様に転がると、誰かに背中から抱き締められた。
「彰!」
「!?、???」
「久志、あんたが落ち着けっ!」
久志に声を荒げ、優しく抱き締めてくれながら俺の背中を撫でてくれていた人はなんと久志の姉だった。
「ら…蕾紗さん?」
「うん。彰ちゃん、私だよ。もう大丈夫だから、泣かないで?」
彼女に言われて初めて俺は止めどなく涙が流れ出ている事に気が付く。そんな俺の姿に蕾紗さんは優しく微笑み、フェイスタオルで顔を拭いてくれた。
蕾紗さんは俺達より5歳年上で医大生。
高等科までは俺達と同じ学園に通っていたが、薬品関係の研究をしたいって事で外部受験をし、見事国立の医大に入学した。
まだまだ研究したい事があるとかで、卒業せず院生になる予定らしい。
しかし、蕾紗さんは何故か俺の事を小さい頃から“ちゃん”付けで呼ぶ。俺の弟にはきちんと“君”呼びなのに、だ。一時期“ちゃん”付けが嫌で呼ばれても無視をしていたが、高校生になっても変わらないので俺は諦める事にした。きっと、俺が蕾紗さんの背を抜かせない所為で未だにもう1人いる小さな弟扱いなのだろう……。
「姉貴……」
蕾紗さんは、優しく俺を立ち上がらせて久志の視線から俺を守る様にスッと前に出て隠してくれた。女性に守られるとか情けないかも知れないが、本当に今朝の久志はおかし過ぎるし久志が俺の事を見つめて側に来るだけで俺は身体の自由がきかなくなり、呼吸が出来なくなって動けなくなってしまう。
「もう一度言うわ。久志、あんたが落ち着かなくちゃダメよ。あんた自身の所為で全てを台無しにしたいの?もしそうなったら誰よりも苦しんで後悔するのはあんたでしょう?」
一体何の話か解らなかったが、蕾紗さんの言葉に久志は歪んでしまった顔から力を抜き、少し悲しげな瞳をしたままでいつもの無表情に戻った。
「すみませんでした、姉さん。……そして彰」
名を呼ばれた時、思わず身体がビクッと震え蕾紗さんの背中にすがりついた。しかし蕾紗さんがそっと腕を背中に回して久志から俺が見える様に横にズレる。
「悪かった、彰」
ぐっと頭を下げて心からの謝罪の気持ちを表した。
久志がいつもの口調になったおかげか先程まで感じていた恐怖心は薄まり、俺はやっと声を出す事が出来た。
「……久志、一体どうしてしまったんだ?」
「……」
豹変、としか言いようがない。何故あんな風になったのか久志も蕾紗さんも原因が解っている様子なので、教えてもらいたい。
しかし久志はうつむき、無言のまま緩く頭を横に振るだけで何も言わない。
「ごめんね、彰ちゃん。昨日満月だったでしょう?それに彰ちゃんが久々にうちに泊まってくれるから久志も箍が外れちゃったのよ。でも、もうこんな事は起こさないないから。安心して?」
たしかに久しぶりに久志の実家に来た。しかし、昨日まで毎日学校で会い、部活も一緒で帰宅も学校との通学路が丁度俺の家を通った先が久志の家だから、朝晩一緒に歩いてもいた。
いくら幼なじみとは言え、男同士でそこまで一緒にいるのも変かもしれないが、今朝まで全く変かも?と疑問に思わなかった事に今更ながら気付いた俺だった。
だからこそもう一つの方も首をかしげる。
「満月だった所為で……、久志はおかしかったのか?」
未だに久志は俯いたままなので、俺は隣にいる蕾紗さんに質問をする。
「ん~、まぁ、そうね。原因は満月だけと断定は出来ないし、久志が変わったって訳じゃないんだけど……。ごめんね、まだはっきりと教えてあげられないのよ。今回の様な事は本当にもう起きないから大丈夫!だからこの話は一旦おしまいじゃダメかな?」
「まだはっきりと教えてあげられない……?」
じゃあ、いつか教えてもらえるものなのか?
しかも久志が変わった訳ではない?ならば原因は一緒にいた俺か?俺は何処か変わってしまったのか?でも、一体何処が????
何となく自分の体を触ってみたが、何か変わった様には見えない。
「ふふ、彰ちゃん可愛い❤」
突然ギュッと蕾紗さんに抱き締められて頬にキスをされた。
『うわっ、蕾紗さんの唇柔け~!ヤバッ気持ち良い……』
柔らかい唇の気持ち良さに顔が赤くなり、俺は気持ちが舞い上がってしまった。
「!?」
俺がポーッと舞い上がった瞬間、先程まで俯いていた久志がガバッと顔を上げ、蕾紗さんを睨む。
それこそ目力だけで殺せるんじゃないかと思える程恐い顔で。(もしあの目が俺に向けられていたら、俺は即心筋梗塞を起こして天に召せる自信がある)
「頭、冷えた?」
そんな目力レーザーなんぞ全く気になっていない様子の蕾紗さんはやおら俺の手を引き、もう片方の空いている手には俺のスーツケースを持ってすたすたと久志の部屋を出ていく。
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