感情を喰らう魔王は勇者を殺せるか?

昆布海胆

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異世界編

第8話 魔王の威圧で死に掛けた

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「せぇええええええええ!!!」

振りぬかれた巨大な腕を駆け上がる1人の女。
その手に握られた剣が光を放ち腕に小さな傷を負わせながら女は肩へと駆け上がろうとしていた。
だが・・・

「遅い!」
「っ?!」

逆の腕で蝿を叩き潰すようにその体は腕に叩きつけられた。
全身の骨がグチャグチャに砕ける音と共に吐血をする女の苦悶に満ちた声が聞こえる。

魔王ガランドは勇者と対峙していた。
腕に小さな切り傷を残されたが結果は一方的であった。
大きさは強さ、もちろんそれだけではないが圧倒的な力量の差がそこにはあった。

グチャっと地面に落ちた勇者だった物がピクピクと痙攣をしていた。
虫の息、その言葉を表すように虚ろな瞳で骨の突き出した腕を震えながら伸ばして折れた剣の方へ近づける。

「お前達人間はいつもそうだ、弱く勝てないという事実を認めようとしない」

そのままでも直ぐに死ぬのは目に見えていた。
だが魔王ガランドは敢えて止めをさす。
無慈悲な一撃、だが少しでも苦しむ時間を短くしてやろうと言う思いがあったのかもしれない。
足で女の頭部を一気に踏み潰した。

「今日の勇者も変わらんな・・・」

そこに在ったのは人だった物。
原形すら留めていない肉片を魔王ガランドは火の魔法で燃やす。
肉の焦げる匂いが一瞬だけして骨すらも解けて死体は完全に消え去る。
勇者との戦いでは一切魔法をしようしていないにも関わらずその力の差に勇者は手も足も出ていなかったのだ。

「ほぅ・・・目が覚めたのか?」

その巨体にも拘らず魔王ガランドは真央の存在に気が付いた。
昨日と同じ様に女の勇者を殺して見せた魔王ガランドに真央はその姿を見せて話を始める。

「娘さん、サリアの件でお話があります」
「なんだ?」
「俺に彼女を下さい」

真央の見詰めるその瞳に魔王ガランドは一切の感情を向けず目を閉じて一言告げる。

「失せろ、ここに居る事は許可してやる。だが娘達は次の魔王の妃になる器。貴様にその価値は無い」

圧倒的な威圧が真央を襲う。
昨日までの真央であれば意識をかき消されその場に崩れ去って居たであろう。
だが先程ジュリアと性行為を行なった事で彼女の感情を喰らい真央は耐え抜いて見せたのだ。

「ほぅ、昨日よりもマシにはなっているようだ。だがその程度では」

そう言って魔王ガランドは片手を上げて人差し指を真央の方へ向けた。
指先から不可視の威圧が出て真央を貫いた。
それは実際には何も出ていない、物質も気体すらも出ていない。
意識、それが真央を貫いたのだ。

「かぁ・・・ぁ・・・」

呼吸が詰まる、まるで心臓を鷲掴みにされたような圧迫された感覚に真央は膝を着いた。
呼吸が制限され脳に血が行かなくなり視界が徐々にブラックアウトしていく・・・

「止めて魔王様!」

そこへ紫の女が飛び出してきた。
サリアである。
そのまま魔王と真央の間に立ち両手を広げて魔王ガランドを睨み付ける。

「サリアか・・・その魔人は少し痛い目を見てもらわないといかん・・・」
「もう十分よ」
「・・・本当に惚れているのだな」

魔王ガランドのその言葉に視線を反らさずサリアはしっかりと頷き返した。
それを見て魔王ガランドは指を曲げて真央を威圧から解放した。

「ゲホッゲホッ!ゲホッゲホッゲホッ・・・」

突然の解放に慌てて新鮮な空気を吸い込んで咽た真央。
土気色になりつつあった顔に赤みが戻りだす。
あのままサリアが止めていなければ真央は生きては居なかったであろう。

「少し時間をやる、しっかりと考えろ・・・娘よ・・・」

そう言って魔王ガランドはその巨体を闇の中へ沈めた。
いや、闇がガランドを運んだようにも見えた。

「真央、大丈夫?」
「あ・・・あぁ・・・すまないサリア」
「ううん、部屋に戻りましょ」

そう言ってサリアは真央の腕を肩に掛けて自らの部屋へと真央を連れて行く・・・
その部屋に入ると同時にサリアは真央に濃厚なキスを行なった。

「んぶっ?!」

驚きに一瞬目が開いたが極度の疲労の為に直ぐに目が沈む。

「少し休むといいわ」
「あぁ・・・すまない・・・サ・・・リア・・・」

そうして、真央はサリアのベットで寝息を立てるのであった。
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