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第129話 神は逃げ出した。しかし、回り込まれてしまった

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「そうそう、君には教えてあげないと駄目なことがあったんだったよタツヤ君」

マリスが突然表情を物凄く嬉しそうにしながら上機嫌に語り出す。

「前世で君を殺したのはね、僕なんだよ!」
「何?」
「君は選んだのは本当に偶然でね、丁度家族が居なくて簡単だったから君が食べてる餅を細工してね」
「なるほどね。」

ゴンザレス太郎はもう呆れて何も言えなかった。
これからのマリスの事を思うと気の毒で気の毒で…
思わず笑いが込み上げてきた。

「ハハハハハハー!そうかそうか~いや~一応その体が女の娘だからあまり酷いこともって悩んだけどこれなら大丈夫だね」
「何笑ってるのか知らないけど不愉快だよ、そんな余裕もここまでさ」

マリスの顔に獰猛な肉食獣の様な笑みが浮かぶ。
自分が負けるはずはないと心から信じきってるその目を絶望に染めれると感じたゴンザレス太郎は心底嬉しくて仕方がなかった。

「どうでも良いけどその体で戦うつもりなのかい?」
「君は知らないと思うけどあれからこの世界はアップデートしてね、僕は新しく追加された数々の魔法もアイテムも全て自由に使えるし、君を絶望させて神に逆らった愚かさを嘆いて土下座させながら殺してやるよ!」

マリスは手から地面に砂を溢した。
いつもの赤砂だ。
これがいつものマリスの手だ。

「そんな10年前と同じ手を使ってて勝てると思ってるのがおかしくて仕方無いよ」

ゴンザレス太郎は再び笑いだす。

「その笑みもここまでだ!神に逆らった事を後悔するといいさ!さぁ出てこい新しい魔物達!」

マリスが手を振り下ろしあの魔物を召喚した動きのまま固まる…

「あれ?」
「プッアハハハハハハハハ!!!」

ゴンザレス太郎の高らかな笑い声が響く。

「な、何故だ?!何故魔物が生まれない!?」

何度も腕を振り下ろし魔物を生み出そうと繰り返すがその手は空を切るばかりで何も起こらない。

「おいたしちゃダメだよミリーちゃん」
「何を言ってる?私は神のマリスだぞ!」
「お前はやり過ぎたんだ。もう謝っても許す気は無いから覚悟した方がいいよ」

ゴンザレス太郎の気配に気押されてマリスは一歩下がる。
その頬に一筋の汗が流れる。
それに気が付くマリス。

「な、なんだこれは?!」
「汗がどうかしたのかい?」

ニヤニヤしながらゴンザレス太郎は持ち物からそれを取り出した。
一見するとただの首輪、だがそれを見てマリスは驚きの表情を浮かべひきつりながら話す。

「そ、それは主従懇願奴隷の首輪?!」

※『主従懇願奴隷の首輪』自らが主と定めた相手から受け取り自らが装着することで発動する呪いの首輪。装備すると死ぬまで取れず主人が受けた痛みや快楽苦悩等全ての感情をどんなに離れていても共有する首輪。この世界には奴隷制度が無いためマリスがお遊びで作ったネタアイテム。

「そ、それで我に永遠の忠誠を誓うから許してほしいって言いたいわけか?!」
「ばーか、そんなことあるわけないだろ」

作った本人のマリスも理解しているのだ。
これは他人に装着されては駄目で自らが望んで装備しないと効果を発揮しないことを。

「これはお前へのプレゼントだよミリーちゃん」

全身から汗が吹き出る…呼吸が苦しい…
謎のプレッシャーを受けてマリスはゴンザレス太郎に恐怖を覚える。
そう、忘れていたのだ。
目の前の存在が今まで数々の事象を悉く妨害してきたという事を…
ヤバイ、何かヤバイ、逃げなきゃ、今すぐここから…

「ほら、俺からの気持ちだ受け取ってくれ」

ゴンザレス太郎が主従懇願奴隷の首輪を差し出してきてマリスはそれを手で払い除ける。
そして、全力で逃げ出した。
家を飛び出し獣道に入り奥へ奥へと進んでいく。

(おかしい、何かがおかしい、なんだこの変な感じは?!)

マリスは自分の体に起こっている事をその時初めて知った。

「痛っ?!」

感じた事の無い痛みを感じ腕を見ると木の枝で切れた腕から血が垂れていた。

「えっ…」

そして、マリスは気付く…
先程の汗も体の疲労もこの痛みも神である自分にはあり得ないこと…

「これじゃあまるで…」
「人間みたい…か?」

声がして見上げるとそこにはゴンザレス太郎が先回りし仁王立ちで立っていたのだった。
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