98 / 106
第97話 ルーレットの結果!
しおりを挟む
ハンニバルは口から泡を吹きながら白目を剥いていた。
それも仕方ない、ナナシの魔法によって復元させた書類の殆どが偽物であったから・・・
これが適当な用紙であったのであればいくらでも誤魔化しが効いたであろう、ナナシが何かのトリックを用いて適当な髪と灰を入れ替えたとか言う等の方法が・・・
だが、復元された書類の幾つかは、ハンニバルが闇に葬る為に燃やして破棄した書類だったのだから仕方あるまい・・・
そして、その中に・・・
「あーあ、こんな物まで混ぜてたとわなぁ~これはアカンわ」
ギンジョーが嬉しそうに白目を剥いているハンニバルに向けた書類。
それはこの商会の裏帳簿の一部であった。
完全にアウトなその内容はハンニバルを失脚させるには十分な内容。
この町を管理する町長に対する完全な裏切りを証明する物であったのだ。
「おいそこの姉ちゃん、町長の元へ使いを出しておいてくれ」
「か、畏まりました」
ハンニバルの秘書と思われる女性にギンジョーが声を掛け慌てた様子で駆けていく秘書。
完全にハンニバルは終わりである。
「さて、それじゃあこっちはワシの部下に任せておくとするわ。ここの商会への損害賠償も計算に時間が掛かりそうやしな」
そう言ってギンジョーはナナシに向き直る、右手を差し出し握手を求めてきた。
ナナシは大きく頷きその手を握り返す。
「それじゃあこの礼はさっきの話に協力するって事で・・・だが詳細の方は聞かせてもらうで?」
「もちろん!」
ナナシとギンジョーの話はまさに耳を疑うモノであった。
横で聞いていたルリエッタもギンジョーの部下達も唖然としながらその話を聞き続ける・・・
「なるほど、それならワシには一切損は無いな・・・けどええんか?」
「あぁ、目的はさっきも言った通り・・・」
ナナシはチラリと受付前で銀貨を数えるのに協力しているソフィの方へ視線を送り・・・
「俺達の目的はガレフって奴隷を助ける事だから」
「くはっくはははは!!!えぇでえぇで!お前おもろすぎるわ!」
手を大きく叩きながらギンジョーはナナシの考えた作戦に感動した。
とても常軌を逸した内容だったが自分に損が無い事、結果が大いに自分を儲けさせる事が確定していたので協力を約束したのだ。
二人は再度握手を交わし直ぐに行動に移そうとするのだが・・・
「その前に、ナナシはんやったな?まずは服を何とかせんとな」
「あっ・・・ははっそうですね」
こうしてこの町の帝王と呼ばれるギンジョーの協力を得られたナナシ・・・
ナナシの作戦はついに実行に移されるのであった・・・
時間は現在に巻き戻る・・・
「分かってますよね?当たれば500倍ですよ?」
ナナシの言葉に支配人は驚きの目を見せる。
だが銀玉が1周した時点で支配人は声をいつも通り上げた。
「そこまで!」
その掛け声と共にベット台の金銭の移動は禁止される。
その動きは周囲に立つ黒服によって完全に監視され、誰一人それに触れる事は許されないのだ。
それを確認し、支配人は下に俯き方を震わせた。
「くふっくふふ・・・くぅっはっはっはっはっはっ!」
突然の大笑いに周囲の誰もが驚く。
今までポーカーフェイスを貫き通してきた支配人の豹変に驚いたのだ。
「いや~お客様、今回はこれほど大儲けさせていただきありがとうございます」
「あぁん?まだ勝負は決着してないやろ?」
「ギンジョーさん、貴方はとても大きなミスを犯しました」
「俺が・・・ミス?」
支配人の言葉にギンジョーは困惑の表情を浮かべる。
今回の賭け金が全てナナシが借りた金だという事に関しては一切公言してない。
「はい、そちらの・・・えぇっとナナシ様でしたか?ここまでの演技は見事でした。ですがギンジョーさんのたった一つのミスで全て水の泡です」
「だから、どういう事やと聞いとるねん?!」
「今まで私とこのルーレットで勝負して勝利された方はいらっしゃいません、それはこれまでも、これからも・・・です!」
自信満々に言い切る支配人、チラリと回転する銀玉に視線をやって嬉しそうに語りだした。
「ギンジョーさん、貴方最初に私に言いましたよね?」
「な・・・なにをや?」
「あなた・・・『今日はちょっと儲け話に乗らせてもらってな』っておっしゃいましたよね?それだけでこの勝負に貴方が入ってくる事は予想していました」
「なっ・・・!?」
「何故ならば、それしか貴方がおっしゃった儲けに繋がる事が無いのですから」
涼しい顔でドヤァっと笑みを浮かべる支配人、そして・・・銀玉は仕切りに当たって跳ねた。
その音に全員の視線が向く。
「この勝負・・・私の勝ちです!」
何度か跳ねた銀玉は一つのポケットに吸い込まれるように入っていった。
そして、そのマスの数字を見て凶悪な笑みを更に強めた支配人は嬉しそうに告げる・・・
「黒の18!」
そこはナナシもギンジョーも賭けていない最初と同じマスであった・・・
この瞬間、ナナシの賭けた金貨138枚、銀貨13枚・・・
そして、ギンジョーの賭けたプラチナ金貨1枚が全て没収と言う事となった・・・
その総額、日本円にして238万1300円の損失・・・
一般人の年収にも匹敵する損失が僅か数分で発生した・・・
それは周囲の人間の哀れみに満ちた視線がナナシ達に突き刺さるのも仕方ないのである・・・
しかもそれはナナシが借金をして作った金だったのだから・・・
誰もがナナシ達がこれから辿る運命を嘆き哀れみの視線が集中する・・・
だが支配人はそんな事を一切気にも止めない、勝負は勝負なのだから・・・
「それでは集計に入らせていただきます」
支配人のその言葉で黒服たちが動き出す。
ポケットは黒の18、それを確認し『黒』と『18』に置かれた金銭を確認し報酬を用意する。
「こちら配当金になります」
そう言って勝者へ返金が行われる・・・
それを沈んだ面持ちで見守るナナシとギンジョー。
その配当金が配られている時に一人が声を上げた!
「ちょっと待って下さい!」
それは今までそこに座っていて、何も話さなかったルリエッタであった・・・
それも仕方ない、ナナシの魔法によって復元させた書類の殆どが偽物であったから・・・
これが適当な用紙であったのであればいくらでも誤魔化しが効いたであろう、ナナシが何かのトリックを用いて適当な髪と灰を入れ替えたとか言う等の方法が・・・
だが、復元された書類の幾つかは、ハンニバルが闇に葬る為に燃やして破棄した書類だったのだから仕方あるまい・・・
そして、その中に・・・
「あーあ、こんな物まで混ぜてたとわなぁ~これはアカンわ」
ギンジョーが嬉しそうに白目を剥いているハンニバルに向けた書類。
それはこの商会の裏帳簿の一部であった。
完全にアウトなその内容はハンニバルを失脚させるには十分な内容。
この町を管理する町長に対する完全な裏切りを証明する物であったのだ。
「おいそこの姉ちゃん、町長の元へ使いを出しておいてくれ」
「か、畏まりました」
ハンニバルの秘書と思われる女性にギンジョーが声を掛け慌てた様子で駆けていく秘書。
完全にハンニバルは終わりである。
「さて、それじゃあこっちはワシの部下に任せておくとするわ。ここの商会への損害賠償も計算に時間が掛かりそうやしな」
そう言ってギンジョーはナナシに向き直る、右手を差し出し握手を求めてきた。
ナナシは大きく頷きその手を握り返す。
「それじゃあこの礼はさっきの話に協力するって事で・・・だが詳細の方は聞かせてもらうで?」
「もちろん!」
ナナシとギンジョーの話はまさに耳を疑うモノであった。
横で聞いていたルリエッタもギンジョーの部下達も唖然としながらその話を聞き続ける・・・
「なるほど、それならワシには一切損は無いな・・・けどええんか?」
「あぁ、目的はさっきも言った通り・・・」
ナナシはチラリと受付前で銀貨を数えるのに協力しているソフィの方へ視線を送り・・・
「俺達の目的はガレフって奴隷を助ける事だから」
「くはっくはははは!!!えぇでえぇで!お前おもろすぎるわ!」
手を大きく叩きながらギンジョーはナナシの考えた作戦に感動した。
とても常軌を逸した内容だったが自分に損が無い事、結果が大いに自分を儲けさせる事が確定していたので協力を約束したのだ。
二人は再度握手を交わし直ぐに行動に移そうとするのだが・・・
「その前に、ナナシはんやったな?まずは服を何とかせんとな」
「あっ・・・ははっそうですね」
こうしてこの町の帝王と呼ばれるギンジョーの協力を得られたナナシ・・・
ナナシの作戦はついに実行に移されるのであった・・・
時間は現在に巻き戻る・・・
「分かってますよね?当たれば500倍ですよ?」
ナナシの言葉に支配人は驚きの目を見せる。
だが銀玉が1周した時点で支配人は声をいつも通り上げた。
「そこまで!」
その掛け声と共にベット台の金銭の移動は禁止される。
その動きは周囲に立つ黒服によって完全に監視され、誰一人それに触れる事は許されないのだ。
それを確認し、支配人は下に俯き方を震わせた。
「くふっくふふ・・・くぅっはっはっはっはっはっ!」
突然の大笑いに周囲の誰もが驚く。
今までポーカーフェイスを貫き通してきた支配人の豹変に驚いたのだ。
「いや~お客様、今回はこれほど大儲けさせていただきありがとうございます」
「あぁん?まだ勝負は決着してないやろ?」
「ギンジョーさん、貴方はとても大きなミスを犯しました」
「俺が・・・ミス?」
支配人の言葉にギンジョーは困惑の表情を浮かべる。
今回の賭け金が全てナナシが借りた金だという事に関しては一切公言してない。
「はい、そちらの・・・えぇっとナナシ様でしたか?ここまでの演技は見事でした。ですがギンジョーさんのたった一つのミスで全て水の泡です」
「だから、どういう事やと聞いとるねん?!」
「今まで私とこのルーレットで勝負して勝利された方はいらっしゃいません、それはこれまでも、これからも・・・です!」
自信満々に言い切る支配人、チラリと回転する銀玉に視線をやって嬉しそうに語りだした。
「ギンジョーさん、貴方最初に私に言いましたよね?」
「な・・・なにをや?」
「あなた・・・『今日はちょっと儲け話に乗らせてもらってな』っておっしゃいましたよね?それだけでこの勝負に貴方が入ってくる事は予想していました」
「なっ・・・!?」
「何故ならば、それしか貴方がおっしゃった儲けに繋がる事が無いのですから」
涼しい顔でドヤァっと笑みを浮かべる支配人、そして・・・銀玉は仕切りに当たって跳ねた。
その音に全員の視線が向く。
「この勝負・・・私の勝ちです!」
何度か跳ねた銀玉は一つのポケットに吸い込まれるように入っていった。
そして、そのマスの数字を見て凶悪な笑みを更に強めた支配人は嬉しそうに告げる・・・
「黒の18!」
そこはナナシもギンジョーも賭けていない最初と同じマスであった・・・
この瞬間、ナナシの賭けた金貨138枚、銀貨13枚・・・
そして、ギンジョーの賭けたプラチナ金貨1枚が全て没収と言う事となった・・・
その総額、日本円にして238万1300円の損失・・・
一般人の年収にも匹敵する損失が僅か数分で発生した・・・
それは周囲の人間の哀れみに満ちた視線がナナシ達に突き刺さるのも仕方ないのである・・・
しかもそれはナナシが借金をして作った金だったのだから・・・
誰もがナナシ達がこれから辿る運命を嘆き哀れみの視線が集中する・・・
だが支配人はそんな事を一切気にも止めない、勝負は勝負なのだから・・・
「それでは集計に入らせていただきます」
支配人のその言葉で黒服たちが動き出す。
ポケットは黒の18、それを確認し『黒』と『18』に置かれた金銭を確認し報酬を用意する。
「こちら配当金になります」
そう言って勝者へ返金が行われる・・・
それを沈んだ面持ちで見守るナナシとギンジョー。
その配当金が配られている時に一人が声を上げた!
「ちょっと待って下さい!」
それは今までそこに座っていて、何も話さなかったルリエッタであった・・・
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
(完)私を捨てるですって? ウィンザー候爵家を立て直したのは私ですよ?
青空一夏
恋愛
私はエリザベート・ウィンザー侯爵夫人。愛する夫の事業が失敗して意気消沈している夫を支える為に奮闘したわ。
私は実は転生者。だから、前世の実家での知識をもとに頑張ってみたの。お陰で儲かる事業に立て直すことができた。
ところが夫は私に言ったわ。
「君の役目は終わったよ」って。
私は・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風ですが、日本と同じような食材あり。調味料も日本とほぼ似ているようなものあり。コメディのゆるふわ設定。
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる