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第46話 嵐、ナナシを見つける!

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「心機一転、1人暮らしのスタートだ!」

高級マンションの前に腕を組みながら叫ぶ男が1人。
元観測者である嵐であった。
異世界で出会ったナナシと組んで彼を更に別の異世界へ飛ばしてその日常をユーデューバという動画投稿サイトに上げていた彼は観測者と言う立場を追放されたのである。
だが彼にはユーデューバで稼いだ膨大な資金があり実家を出て高級マンションの一室を借りる事に成功していた。
金が在れば何でも出来る、そう信じる彼は観測者と言う立場を無くしたとしても毛ほどもダメージを受けてはいなかった。

「あっちょっと君、この辺りで変な男が叫び声を上げていると通報があったんだが・・・」
「あっそうですか?怖いですね~それじゃあ俺ここに住んでいるんで失礼します~」
「あっちょっと君?」

職務質問を華麗にスルーした嵐はオートロックのマンションに入り借りた部屋に向かう。
そこには既に注文していた荷物が配達されており1人で時間を掛けて部屋の中へ運び込む作業が始まる。

「ふぃ~とりあえず最低限の生活に必要な物は終わったしそろそろあっちも気になるから見てみるか」

そう言って嵐が起動させたのは新しく組み立てられた専用のパソコンであった。
観測者として彼が使っていたパソコンは既に立場を外された時に破壊されていた。
だがナナシと組んだ時にそうなるのは予測済みであった嵐はシステムの一部をコピーして保存していたのだ。

「ナナシのヤツ大丈夫かな?」

観測者としてのパソコンではないので彼の世界の時間を操ったりは出来なくなっているがこれまで起こった事を見る余裕は十分に在った。
そもそも時間の流れ自体が違うのだ。

「ん~これでもない・・・これでもない・・・」

現在ナナシが探しているのは観測者と言う立場を離れる直前に彼が仕掛けた最後のシステム。
ユーデューブライブ録画映像であった。
これはテレビの生放送と言えば分かるだろう、実際に同じ時間軸の映像としてナナシを中心とした映像が記録されているのだ。
上手い具合にこのライブ映像は登録者しか見れない仕様にされており観覧数はそれほど伸びないのが欠点ではあるがナナシを1人永遠に巡り会えない状況に陥るのを回避出来たのだと考えれば十分にお釣りが来る話である。

「あった・・・けど・・・なんだこれは・・・」

そこに在ったのは観覧数がここ数ヶ月全く伸びていないカウントと真っ暗なだけの映像の数々であった。
保存されていたライブ映像の殆どが音も無い状態で映像は真っ暗なまま残されており見る人が既に居なくなっている理由が直ぐに分かった。
飽く迄もこのライブ映像はナナシの意識と連動しており、ナナシが意識を失っている状態では何も保存がされないのである。

「ずっと何も保存されていない動画がアップされ続けていたのか・・・そりゃ見る人居なくなるわな」

そう口から漏らしつつ嵐は映像に何か映っていないか早送りを駆使しながら見続ける・・・
そして、動画にして100本目に達しようとした時に映像が始まっていたのだ!

「あった・・・けどっ・・・えっ・・・?」

それはナナシが目覚めたあの日の映像であった。
一体何がどうなっているのか分からないが嵐はその映像を注意深く拝見していく・・・

「世界が混ざったのか?」

同時にナナシの視界外の映像もチェックして明らかに最初にナナシが移動した世界と違う座標にその世界が存在している事を計算して突き止めたのだ。
そして、ナナシが奴隷商の店主相手に行なった行為を見て口元を大きく歪めてクククッと笑う・・・

「そういう事かよ相棒、なら期待には答えないとな!」

そう、ナナシが行なった奴隷商を騙して安く奴隷を買い取ったというある意味脅迫映像を編集し最初の復活からの動画として仕上げたのだ。
ナナシはその動画をユーデューバに上げれば閲覧者が騒ぎ出し動画の事が話題になると考えてそう言う行動に出ていたのだ。
動画が炎上すれば場合によっては削除しなければならなくなるが炎上した動画は情報としてユーデューバー界に一気に広がる。
ナナシは返答の無いナナシに自分が異世界で無事だと嵐に知らせる為にあの行動に出ていたのに気付いたのだ。

「タイトルは・・・『異世界生活再開!最初の犠牲者は商売をしているおじさん!』でどうだ!」

嵐はナナシに連絡をする手段が無い、だが電子マネー口座の中身をナナシの収納に繋ぐ事が出来る。
それだけが彼らを結ぶただ一つの線であった。
ナナシにも一定量の利益分配が常に行なわれていたのは双方知っている、だが入ってくる金額が明らかに目減りしていたと言う事実を意識を失っていたナナシは知らないのだ。

「なんとか金を使う事でナナシと連絡をする方法は無いものかな・・・」

そう考えながらも嵐が数ヶ月ぶりに新しいアカウントで上げた動画はナナシの読み通りなのか数日で閲覧者が一気に増加し炎上するのであった。
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