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第25話 火の加護と百足再び
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「ダンジョンの核?」
『えぇそうよ、ここはこのダンジョンの核の一つ、ここまで辿り着いた人間は貴方が初めてよ』
傷は治り左腕も生え替わったように元通りになったピコハンだが、左腕を失った時に流した血が多過ぎて思考が働かない。
『あら?今は辛そうね、少し眠るといいわ』
そう言い女神はピコハンの額を人差し指で触れる。
「あ…れっ…?」
まるで膝が言うことを聞かない、そう感じたピコハンの意識は体が倒れるのと共に直ぐに消え去った。
『もしかしたら……今度こそ…………』
女神の呟きが聞こえた気がした。
やがてその声に導かれる様にピコハンは意識を取り戻した。
『あっ起きた?』
仰向けに寝ていたピコハンを覗き混む女神。
真っ赤な髪が周囲を包み込むように二人の視界を遮る。
「えっと、はいもう大丈夫みたいです」
その言葉を聞き女神は嬉しそうに微笑み顔を離す。
上体を起こしたピコハンはダンジョンの中での事を思い出していた。
まさに間一髪で助かったというのに落ち着いている自分に少し驚いたが、それよりも自分の正面に正座をした女神に意識を奪われた。
『それじゃ、改めまして自己紹介からだね。私は…』
ピコハンも名乗りここがなんなのかについて目の前の女神が教えてくれた。
何故か分からないが女神の名前だけが聞き取れない。
ノイズが入ったように音にならないのだ。
一瞬驚いたが神様だからなのかとピコハンは一人納得する。
『分かったかな?』
「はい、ここがダンジョンを構成する中心となる場所で女神様が管理している。世界中のダンジョンは複雑に入り組み混ざり一つの世界になっている。そして、貴女のような女神が後4人居ると言うことですね」
『うん、小さいのに理解力もあって宜しい』
命懸けの死闘を繰り広げ歴戦の戦士のようなピコハンだが中身は10歳の少年なのだ。
いくら倒した魔物から光の粒子を得て強くなっていてもそれは変わらなかった。
「それで、俺に何を?」
『うん、ピコハン君にはね残りの4人の女神に会って欲しいんだ。全員ここみたいなダンジョンの一番奥に在るダンジョンの核の中に居るから』
「会うだけ…ですか?」
『それは分からない、でもきっと皆待ってるから…』
意味が分からないがピコハンは生きるためにダンジョンを攻略するだけである。
「分かりました。」
『うん、それじゃこれはここまで来た君への私からの加護ね』
そう言って女神が指をパチンと鳴らすとピコハンの足元に真っ赤な魔方陣が現れた。
魔方陣はまるで蒸発するように赤い光の粒子に替わりピコハンの体に入っていく。
『うそ…丸々取り込んだ?!』
女神が何かに驚いているがピコハンには意味が分からず首をかしげている間にそれは終わった。
『それじゃ最後に何か有るかしら?』
「一つ、さっきの腕が治った飲み薬まだあったら一つ欲しいんですが」
『うん、それくらいなら良いわよ』
そう言って女神は緑色の液体を差し出した。
ピコハンはそれをその場でメモと共に共有箱に入れる。
「それじゃ、皆が心配しているかもしれないんで行きます」
『うん、分かった。気を付けてね』
ピコハンは女神にお礼を最後に述べて入ってきたドアへ向かう。
ドアは開きっぱなしでその向こうに今はムカデ達は居なかった。
警戒をしながらピコハンはドアを潜りダンジョンの中へ戻る。
少し歩いてフト振り替えるとそこにもうドアはなく洞窟の広間が広がっているだけであった。
ピコハンはなるべく音を立てないようにこの広場へ通じる縦穴を目指す。
途中に食い散らかされた肉片が落ちておりその場所に気付く。
共食いしたのだろうか?
そこはピコハンが倒したあの百足の死体が在った場所であった。
素材が取れなかったのは勿体無かったが、それを食った為に満腹で百足達が出てこないなら結果的オーライと考えピコハンは縦穴を目指す。
近づいてみて縦穴は百足が無理矢理通った為に更に広がっているのに気付いた。
降りるのが中々辛そうだが左腕が治った今なら最後に登った時よりは楽だろうと考える。
そして、縦穴の縁まで来て安堵の息を吐く。
デモンズウォールの素材に冒険者達の遺産、そして女神から貰った薬で今回の成果は充分と考えたピコハンは後は帰るだけだと気を抜いた、いや抜いてしまった。
女王蟻の剣を腰に挿し降りるために足を壁に引っ掻けたら少し崩れて破片が穴の中へ落ちていった。
ガラガラボトッ
直ぐにピコハンはそれに気付いた。
落ちていった破片の音が直ぐに止んだ。
まるで穴に入って直ぐの場所に何かがあるように…
下を覗いたピコハンの目に百足が牙を立てて縦穴を一気に登ってきた姿が映った!
慌てずにピコハンは百足が上がってくる穴の中へ身を投げるのであった。
『えぇそうよ、ここはこのダンジョンの核の一つ、ここまで辿り着いた人間は貴方が初めてよ』
傷は治り左腕も生え替わったように元通りになったピコハンだが、左腕を失った時に流した血が多過ぎて思考が働かない。
『あら?今は辛そうね、少し眠るといいわ』
そう言い女神はピコハンの額を人差し指で触れる。
「あ…れっ…?」
まるで膝が言うことを聞かない、そう感じたピコハンの意識は体が倒れるのと共に直ぐに消え去った。
『もしかしたら……今度こそ…………』
女神の呟きが聞こえた気がした。
やがてその声に導かれる様にピコハンは意識を取り戻した。
『あっ起きた?』
仰向けに寝ていたピコハンを覗き混む女神。
真っ赤な髪が周囲を包み込むように二人の視界を遮る。
「えっと、はいもう大丈夫みたいです」
その言葉を聞き女神は嬉しそうに微笑み顔を離す。
上体を起こしたピコハンはダンジョンの中での事を思い出していた。
まさに間一髪で助かったというのに落ち着いている自分に少し驚いたが、それよりも自分の正面に正座をした女神に意識を奪われた。
『それじゃ、改めまして自己紹介からだね。私は…』
ピコハンも名乗りここがなんなのかについて目の前の女神が教えてくれた。
何故か分からないが女神の名前だけが聞き取れない。
ノイズが入ったように音にならないのだ。
一瞬驚いたが神様だからなのかとピコハンは一人納得する。
『分かったかな?』
「はい、ここがダンジョンを構成する中心となる場所で女神様が管理している。世界中のダンジョンは複雑に入り組み混ざり一つの世界になっている。そして、貴女のような女神が後4人居ると言うことですね」
『うん、小さいのに理解力もあって宜しい』
命懸けの死闘を繰り広げ歴戦の戦士のようなピコハンだが中身は10歳の少年なのだ。
いくら倒した魔物から光の粒子を得て強くなっていてもそれは変わらなかった。
「それで、俺に何を?」
『うん、ピコハン君にはね残りの4人の女神に会って欲しいんだ。全員ここみたいなダンジョンの一番奥に在るダンジョンの核の中に居るから』
「会うだけ…ですか?」
『それは分からない、でもきっと皆待ってるから…』
意味が分からないがピコハンは生きるためにダンジョンを攻略するだけである。
「分かりました。」
『うん、それじゃこれはここまで来た君への私からの加護ね』
そう言って女神が指をパチンと鳴らすとピコハンの足元に真っ赤な魔方陣が現れた。
魔方陣はまるで蒸発するように赤い光の粒子に替わりピコハンの体に入っていく。
『うそ…丸々取り込んだ?!』
女神が何かに驚いているがピコハンには意味が分からず首をかしげている間にそれは終わった。
『それじゃ最後に何か有るかしら?』
「一つ、さっきの腕が治った飲み薬まだあったら一つ欲しいんですが」
『うん、それくらいなら良いわよ』
そう言って女神は緑色の液体を差し出した。
ピコハンはそれをその場でメモと共に共有箱に入れる。
「それじゃ、皆が心配しているかもしれないんで行きます」
『うん、分かった。気を付けてね』
ピコハンは女神にお礼を最後に述べて入ってきたドアへ向かう。
ドアは開きっぱなしでその向こうに今はムカデ達は居なかった。
警戒をしながらピコハンはドアを潜りダンジョンの中へ戻る。
少し歩いてフト振り替えるとそこにもうドアはなく洞窟の広間が広がっているだけであった。
ピコハンはなるべく音を立てないようにこの広場へ通じる縦穴を目指す。
途中に食い散らかされた肉片が落ちておりその場所に気付く。
共食いしたのだろうか?
そこはピコハンが倒したあの百足の死体が在った場所であった。
素材が取れなかったのは勿体無かったが、それを食った為に満腹で百足達が出てこないなら結果的オーライと考えピコハンは縦穴を目指す。
近づいてみて縦穴は百足が無理矢理通った為に更に広がっているのに気付いた。
降りるのが中々辛そうだが左腕が治った今なら最後に登った時よりは楽だろうと考える。
そして、縦穴の縁まで来て安堵の息を吐く。
デモンズウォールの素材に冒険者達の遺産、そして女神から貰った薬で今回の成果は充分と考えたピコハンは後は帰るだけだと気を抜いた、いや抜いてしまった。
女王蟻の剣を腰に挿し降りるために足を壁に引っ掻けたら少し崩れて破片が穴の中へ落ちていった。
ガラガラボトッ
直ぐにピコハンはそれに気付いた。
落ちていった破片の音が直ぐに止んだ。
まるで穴に入って直ぐの場所に何かがあるように…
下を覗いたピコハンの目に百足が牙を立てて縦穴を一気に登ってきた姿が映った!
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