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最終章 ティナ
第22話 ティナ最悪最低の計画
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驚くべき事にプロメタの町と魔王の滞在する城まで徒歩で数時間の距離であった。
この世界が消え去る運命にある理由がそこにはあるのだ。
世界5分前説と言う言葉を知っているだろうか?
これは世界が5分前に突然始まったと言う説である。
そこに記憶や歴史が存在するとしてもそれすらも5分前に作られた物なのかもしれない。
そして、ここに町と町を結ぶ距離と言う概念が認識の差で認知される時間の概念が変動しているのだ。
ティナにとってこの移動は数時間の事であるがこの世界に住む者にとってはこれは数日掛かっていると言う感覚に陥る。
移動に数日掛かるのが常識と認識の中で完成している為にこの世界の住人にとってはたとえ数時間であってもそれは数日と言う認識になるのだ。
「本当にこんなに近かったんですね・・・」
偽ティナの直ぐ後ろに立つようにティナはその城の中へ足を踏み入れる。
勿論視界に入る全ての者にダブルの力を使っていくのは忘れない。
もしもこれがMP等と言った消耗する力であればこの作戦は成功しなかったであろう。
神より与えられた無限の能力であるがこそであった。
「こちらに我等の魔王様がいらっしゃいます。どうぞご無礼の無いように」
「はい・・・」
ティナは返事を返し偽ティナの前で扉が開いていく。
すかさずティナは中に居る者にダブルの力を使う。
そして、王座に座る魔王にのみ自らのダブルを特別魅力的な美女に仕立て上げるのであった。
誰もが偽ティナの姿を見て硬直する中を偽ティナは一歩踏み出し魔王へ頭を下げる。
それに合わせてティナが直ぐ横で会話を開始する。
「この度は助けて頂き誠にありがとうございま…」
「名は…名はなんと言う?」
「えっ?あっ、失礼しました。ティナと申します」
「ティナ…なんと美しい…」
ここまで予定通りに進んでいるのを喜びながらティナは目的の人物を探す。
そして、それは直ぐに見つかった。
魔人族の第八貴族であるブランチである。
ティナがブランチの存在を確認したと同時に魔王から言葉が発せられた。
「ティナ!私はお前が欲しくなった。どうか私のモノになってくれないか!」
魔人族にとって一目惚れと言うのは魔力の波長が惹かれ合った証拠だと言われている為に魔王のこの発言に物申す者などは居なかった。
それを知っているティナはここまで何一つ予定通りに進んでいる事に安堵しながら言葉を伝える。
「ありがとうございます。私にはもう帰る場所がありません、私の…家族になってくれますか?」
そう伝えたティナは魔王が偽ティナに近付いてその前に跪き手の甲にキスをする仕草を横目にそのまま部屋の入り口の方へ移動する。
ダブルを使われた者には本物のティナの姿は見えず認識することも出来ない。
唯一偽ティナを実在しないと認知する事が出来ればこの力は無力化させられるのだが欠点である言葉が話せないと言う事すらも本物が直ぐ傍に居れば解決してしまう。
そして、会話の受け答えについては首を振る方向や仕草でYES/NOがハッキリするので偽ティナが話さなくてもまるで本物のティナがその場に居ると勘違いしてしまうのだ。
その後、魔王はマナと言う名を名乗ったのを確認したティナはそのままその場を後にするのであった。
目的の場所である薬草倉庫へ移動したティナはそこで必要な薬剤や魔法草等を揃え一つの魔道具をその場で作り出す。
これがティナの仕組んだ最大にして最悪の行為の始まりであった。
そのままティナは魔王マナが皆を解散させたのを確認し部屋から出てきた第八貴族であるブランチの後を追っていく・・・
そして、彼が自室に戻った時に共に部屋に入り彼が手にした飲み物へ倉庫で手に入れた魔法草を入れる。
その魔法草の名前は『おかしくなり草』、効果は幻惑と幻覚である。
それを口にしたブランチはまるで操られるようにフラフラと部屋を出て行く。
実は既にティナはブランチに対して使用していたダブルを一度解除して再び使用していたのだ。
ブランチにとってティナが見せているそれは彼の幼い頃にしんだ母親であった。
まるで夢遊病の様にブランチは他人にはその姿が見えないティナと共に城の裏口から外で出て行く・・・
それを確認したティナは魔王マナの元へ引き返した。
「大分落ち着いたみたいで良かった。それはそうとほぅ、ティナは料理が得意なのか」
「ううん、食べれる物が作れるってだけだよ」
「そうか・・・」
「でも今日は是非私の手料理を味わってくれないかな?」
魔王マナがティナの言葉に惹かれて魔王という立場であるのにも関わらずティナは普通に知り合いと話すように話をした。
その結果、夕飯をティナが作ると言うことになったのだが材料を得る為にマナと偽ティナは野生の獣を狩るために共に裏口から外へ出るのであった。
「ティナ、あそこに中々美味そうな生き物がいるな」
「サイズ的にも丁度良さそうね」
そこに居たのはラクダとアヒルを足した様な獣であった。
ラビンと呼ばれるこの獣であるが草食であり魔人族に関わらず食材としてその肉は重宝されていた。
だが魔王マナは知らない、目の前に居るラビンと呼ばれる獣が実はおかしくなり草によって重度の中毒状態になったブランチだという事を・・・
そして、魔王マナの放った魔法の矢はブランチへと突き刺さりその場へ倒れて絶命する。
この時魔王マナは気付いていなかったが倒れているブランチの体にはティナのダブルによって偽者が映し出されていたのだ。
偽ティナから地面を伝わって倒れているブランチの体に憑依するかのようにその姿をラビンに見えるようにして仕組まれたこれにより魔王マナは気付かなかったのだ。
「流石マナ様ですわ」
「うむ、上手く仕留められて良かったよかった。それではこいつの解体はまかせても大丈夫か?」
「はい、ただ運び入れるのだけはお願いしても宜しいですか?」
「それくらいなら任せろ」
そうしてブランチだった死体と共にティナは魔王の城へと戻るのであった。
この世界が消え去る運命にある理由がそこにはあるのだ。
世界5分前説と言う言葉を知っているだろうか?
これは世界が5分前に突然始まったと言う説である。
そこに記憶や歴史が存在するとしてもそれすらも5分前に作られた物なのかもしれない。
そして、ここに町と町を結ぶ距離と言う概念が認識の差で認知される時間の概念が変動しているのだ。
ティナにとってこの移動は数時間の事であるがこの世界に住む者にとってはこれは数日掛かっていると言う感覚に陥る。
移動に数日掛かるのが常識と認識の中で完成している為にこの世界の住人にとってはたとえ数時間であってもそれは数日と言う認識になるのだ。
「本当にこんなに近かったんですね・・・」
偽ティナの直ぐ後ろに立つようにティナはその城の中へ足を踏み入れる。
勿論視界に入る全ての者にダブルの力を使っていくのは忘れない。
もしもこれがMP等と言った消耗する力であればこの作戦は成功しなかったであろう。
神より与えられた無限の能力であるがこそであった。
「こちらに我等の魔王様がいらっしゃいます。どうぞご無礼の無いように」
「はい・・・」
ティナは返事を返し偽ティナの前で扉が開いていく。
すかさずティナは中に居る者にダブルの力を使う。
そして、王座に座る魔王にのみ自らのダブルを特別魅力的な美女に仕立て上げるのであった。
誰もが偽ティナの姿を見て硬直する中を偽ティナは一歩踏み出し魔王へ頭を下げる。
それに合わせてティナが直ぐ横で会話を開始する。
「この度は助けて頂き誠にありがとうございま…」
「名は…名はなんと言う?」
「えっ?あっ、失礼しました。ティナと申します」
「ティナ…なんと美しい…」
ここまで予定通りに進んでいるのを喜びながらティナは目的の人物を探す。
そして、それは直ぐに見つかった。
魔人族の第八貴族であるブランチである。
ティナがブランチの存在を確認したと同時に魔王から言葉が発せられた。
「ティナ!私はお前が欲しくなった。どうか私のモノになってくれないか!」
魔人族にとって一目惚れと言うのは魔力の波長が惹かれ合った証拠だと言われている為に魔王のこの発言に物申す者などは居なかった。
それを知っているティナはここまで何一つ予定通りに進んでいる事に安堵しながら言葉を伝える。
「ありがとうございます。私にはもう帰る場所がありません、私の…家族になってくれますか?」
そう伝えたティナは魔王が偽ティナに近付いてその前に跪き手の甲にキスをする仕草を横目にそのまま部屋の入り口の方へ移動する。
ダブルを使われた者には本物のティナの姿は見えず認識することも出来ない。
唯一偽ティナを実在しないと認知する事が出来ればこの力は無力化させられるのだが欠点である言葉が話せないと言う事すらも本物が直ぐ傍に居れば解決してしまう。
そして、会話の受け答えについては首を振る方向や仕草でYES/NOがハッキリするので偽ティナが話さなくてもまるで本物のティナがその場に居ると勘違いしてしまうのだ。
その後、魔王はマナと言う名を名乗ったのを確認したティナはそのままその場を後にするのであった。
目的の場所である薬草倉庫へ移動したティナはそこで必要な薬剤や魔法草等を揃え一つの魔道具をその場で作り出す。
これがティナの仕組んだ最大にして最悪の行為の始まりであった。
そのままティナは魔王マナが皆を解散させたのを確認し部屋から出てきた第八貴族であるブランチの後を追っていく・・・
そして、彼が自室に戻った時に共に部屋に入り彼が手にした飲み物へ倉庫で手に入れた魔法草を入れる。
その魔法草の名前は『おかしくなり草』、効果は幻惑と幻覚である。
それを口にしたブランチはまるで操られるようにフラフラと部屋を出て行く。
実は既にティナはブランチに対して使用していたダブルを一度解除して再び使用していたのだ。
ブランチにとってティナが見せているそれは彼の幼い頃にしんだ母親であった。
まるで夢遊病の様にブランチは他人にはその姿が見えないティナと共に城の裏口から外で出て行く・・・
それを確認したティナは魔王マナの元へ引き返した。
「大分落ち着いたみたいで良かった。それはそうとほぅ、ティナは料理が得意なのか」
「ううん、食べれる物が作れるってだけだよ」
「そうか・・・」
「でも今日は是非私の手料理を味わってくれないかな?」
魔王マナがティナの言葉に惹かれて魔王という立場であるのにも関わらずティナは普通に知り合いと話すように話をした。
その結果、夕飯をティナが作ると言うことになったのだが材料を得る為にマナと偽ティナは野生の獣を狩るために共に裏口から外へ出るのであった。
「ティナ、あそこに中々美味そうな生き物がいるな」
「サイズ的にも丁度良さそうね」
そこに居たのはラクダとアヒルを足した様な獣であった。
ラビンと呼ばれるこの獣であるが草食であり魔人族に関わらず食材としてその肉は重宝されていた。
だが魔王マナは知らない、目の前に居るラビンと呼ばれる獣が実はおかしくなり草によって重度の中毒状態になったブランチだという事を・・・
そして、魔王マナの放った魔法の矢はブランチへと突き刺さりその場へ倒れて絶命する。
この時魔王マナは気付いていなかったが倒れているブランチの体にはティナのダブルによって偽者が映し出されていたのだ。
偽ティナから地面を伝わって倒れているブランチの体に憑依するかのようにその姿をラビンに見えるようにして仕組まれたこれにより魔王マナは気付かなかったのだ。
「流石マナ様ですわ」
「うむ、上手く仕留められて良かったよかった。それではこいつの解体はまかせても大丈夫か?」
「はい、ただ運び入れるのだけはお願いしても宜しいですか?」
「それくらいなら任せろ」
そうしてブランチだった死体と共にティナは魔王の城へと戻るのであった。
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