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第23話 クリア?
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「ハハッ…助かったぁ~」
石の棺の中へ一人逃げ込んだ長髪の盗賊は助かった事に満足気に息を吐き目を閉じる。
「神様、救いの御告げありがとうございました」
元々信仰なんて一切信じていなかった長髪の盗賊は生まれて初めて神に感謝した。
そして、疲れからか意識が少しずつ遠退いていく。
外は既に溶岩が流れ込みその内部の音が子守唄のように小さく響いていた。
「少し、寝るかな…」
そして、そのまま外へ出られる時間まで眠りにつく…
しかし、ものの数分で意識は覚醒する。
「ごほっ…なんだ?息苦しいな…?」
この世界は魔法が存在することでやはり科学の発展は遅れていた。
必要は発明の母と呼ばれるように必要だからこそ調べて研究される。
例えそれがどんな事であろうとどうにもなら無いからこそ人は探求するのだ。
つまり、魔法で空気を清浄にしたり何もない空間から水を出したりする事が出来る人間が居る以上知識の発展は無かった。
「手、手と足が痺れ…き、気分が…吐きそうだ…」
石の棺の中で長髪の盗賊は一人暗闇の中で見えない何かに体を蝕まれていく恐怖を感じた。
呪いの類いだと考えれば考えるほど自身の体を犯す何かに恐怖は膨れ上がる。
「う、うぇぇ…」
首を締め付けられる様な感覚に悶え始めた時に長髪の盗賊の目にはモヤの様なモノが見えていた。
明るいところから暗いところへ移動したときに目の中に残っていた光が模様を写している現象であるが、知識の無い者にはそれが何か分からない。
人は3つの模様を目と口に認識するように、それは人形に見え始めやがて一つの結論に達する…
「か、神は神でも…厄神だったか…」
その言葉と共に長髪の盗賊は魂を体から引き抜かれる様子を想像してそのまま生き絶えた。
酸素欠乏症である。
助かろうにも既に棺は溶岩に飲み込まれており中に入った時点で彼の人生は終わりを告げていたのであった…
バシャーン!!
背中から落ちた男の体に衝撃が突き抜ける!
水面に高い場所から落ちた場合速度によって身に受ける水面の硬さは変化する。
今の衝撃は三階の建物からアスファルトへ落ちた時のそれに近かった。
「かはっ?!」
口から内臓が出そうになる痛みに呼吸が出来なくなるが直ぐにその体を波紋で広がった水面が押し潰す。
幸いだったのは仰向けであったこと、空気を吐きすぎなかった事であろう。
緩やかな流れの水面に俺の体は浮き上がった。
人体の中にある空気が浮力となる為に人間は仰向けであれば浮くのだ。
朦朧とする意識の中、意識を繋ぎ止めたのはリリンの体であった。
必死に俺の体にしがみつくその手が意識を手放すのを止めていたのだ。
「大丈夫?」
「あぁ…なんとかな…」
ゆっくり流れていた事で落下地点からズレたからか上から降ってくるはずの溶岩は落ちてこない。
通常であればおかしな事なのだが、それよりも助かった事に安堵していた。
とんっ!
体が何かに触れたと感じて顔だけそちらに向けると浅くなっていた場所に流れ着いたのだと気が付いた。
ふらつく体で水面から上がり近くに座り込む…
寒い…
濡れたのもそうだが血を流しすぎたのだ。
そんな疲れきった二人の耳に声が届くのであった。
『コングラッシュレーション!』
リリンと俺の目の前にいつの間にか一人の白い仮面を着けた少年が拍手しているのであった。
石の棺の中へ一人逃げ込んだ長髪の盗賊は助かった事に満足気に息を吐き目を閉じる。
「神様、救いの御告げありがとうございました」
元々信仰なんて一切信じていなかった長髪の盗賊は生まれて初めて神に感謝した。
そして、疲れからか意識が少しずつ遠退いていく。
外は既に溶岩が流れ込みその内部の音が子守唄のように小さく響いていた。
「少し、寝るかな…」
そして、そのまま外へ出られる時間まで眠りにつく…
しかし、ものの数分で意識は覚醒する。
「ごほっ…なんだ?息苦しいな…?」
この世界は魔法が存在することでやはり科学の発展は遅れていた。
必要は発明の母と呼ばれるように必要だからこそ調べて研究される。
例えそれがどんな事であろうとどうにもなら無いからこそ人は探求するのだ。
つまり、魔法で空気を清浄にしたり何もない空間から水を出したりする事が出来る人間が居る以上知識の発展は無かった。
「手、手と足が痺れ…き、気分が…吐きそうだ…」
石の棺の中で長髪の盗賊は一人暗闇の中で見えない何かに体を蝕まれていく恐怖を感じた。
呪いの類いだと考えれば考えるほど自身の体を犯す何かに恐怖は膨れ上がる。
「う、うぇぇ…」
首を締め付けられる様な感覚に悶え始めた時に長髪の盗賊の目にはモヤの様なモノが見えていた。
明るいところから暗いところへ移動したときに目の中に残っていた光が模様を写している現象であるが、知識の無い者にはそれが何か分からない。
人は3つの模様を目と口に認識するように、それは人形に見え始めやがて一つの結論に達する…
「か、神は神でも…厄神だったか…」
その言葉と共に長髪の盗賊は魂を体から引き抜かれる様子を想像してそのまま生き絶えた。
酸素欠乏症である。
助かろうにも既に棺は溶岩に飲み込まれており中に入った時点で彼の人生は終わりを告げていたのであった…
バシャーン!!
背中から落ちた男の体に衝撃が突き抜ける!
水面に高い場所から落ちた場合速度によって身に受ける水面の硬さは変化する。
今の衝撃は三階の建物からアスファルトへ落ちた時のそれに近かった。
「かはっ?!」
口から内臓が出そうになる痛みに呼吸が出来なくなるが直ぐにその体を波紋で広がった水面が押し潰す。
幸いだったのは仰向けであったこと、空気を吐きすぎなかった事であろう。
緩やかな流れの水面に俺の体は浮き上がった。
人体の中にある空気が浮力となる為に人間は仰向けであれば浮くのだ。
朦朧とする意識の中、意識を繋ぎ止めたのはリリンの体であった。
必死に俺の体にしがみつくその手が意識を手放すのを止めていたのだ。
「大丈夫?」
「あぁ…なんとかな…」
ゆっくり流れていた事で落下地点からズレたからか上から降ってくるはずの溶岩は落ちてこない。
通常であればおかしな事なのだが、それよりも助かった事に安堵していた。
とんっ!
体が何かに触れたと感じて顔だけそちらに向けると浅くなっていた場所に流れ着いたのだと気が付いた。
ふらつく体で水面から上がり近くに座り込む…
寒い…
濡れたのもそうだが血を流しすぎたのだ。
そんな疲れきった二人の耳に声が届くのであった。
『コングラッシュレーション!』
リリンと俺の目の前にいつの間にか一人の白い仮面を着けた少年が拍手しているのであった。
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