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第20話 絶望の最後

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時は少しだけ巻き戻る。
長髪の盗賊の指示で元の場所に残らされた奴隷は辺りを探していた。

「まさか生きてたのか?」

彼はする事がなかったので暇潰しにロッツォの遺体を玩具にしようと考えたのだ。
だが辺りを探しても確かに殺された筈の死体は何処にも無かった。

「ちっ、まさか何処かに隠れて俺の事を狙ってるんじゃねぇだろうな…」

疑心暗鬼、人は目に見えるモノよりも見えないモノにこそ恐怖を感じるものである。
一度考えてしまえば本人にとってはそれが全てで自分一人と言うことが拍車を掛ける。

「くそっ、何処だ?!何処に居やがる?!」

誰か他の人間が居れば生き残ってても何も出来ないだろうと言うことは話して分かるのだが一人ではそれも無理であった。

「ん?なんの音だ?」

そんな男の耳にそれは聞こえてきた。
コポコポと何かが沸騰するような音が聞こえ周囲の気温が突如上がり出す。
暗い筈なのに見えている洞窟内に赤い光が見え男はそれを見て絶句した。

「おいおい、ちょっと待てよ…冗談じゃねぇぞ!」

気付けばあちこちの隙間から同じように流れ出てきたそれは、溶岩であった。
それがヤバイものだと言うことは見ればすぐわかり男は熱から逃げるように追い詰められていく。

「くそっ!」

周囲を囲むように広がった溶岩から逃げるように最後の一人も全員が入っていった穴へと入っていった。
長い長い下り坂を警戒しながら進む、幸いしたのは溶岩がゆっくりと流れていることだろう。
熱に追い込まれるように進み続けた男はそれに気が付く、道中の横穴に奴隷仲間の一人の姿を発見したのだ。

「おい、なんかヤバイのが流れてきてるから逃げた方が…」

長髪の盗賊に待機命令を出されているのだろうと考えて話し掛けた男の目に写ったのは穴の中で隙間から突き出した刃物に串刺しになっている奴隷であった。
その表情は痛みと苦しみに悶えたまま死んだ様子が見てとれている。

「嘘だろ…死んでやがる…」

絶句した男の耳に再び聞こえるコポコポとした音。
振り替えれば溶岩の流れる速度が上がっており、自分の方へどんどん迫ってきていた。

「う…うわぁぁぁぁ!!!」

触れれば助からない、それが男の脳内に刻み込まれ更に奥へと逃げるように歩を進める。
同じ奴隷の一人が無惨に死んでいたのを目の当たりにして正気を失いつつあったのだ。

駆け足で先へ進み続けた男はそこで足を止めた、否、足を止めざるを得なかった。
目の前には巨大な通路と同じくらいのサイズの大岩が道を塞いでいるのだ。

「じょ?!冗談だろ?!」

近寄って叩いたりするがびくともしないその岩に向かって加速した溶岩が全てを飲み込むように流れてくる。
それを振り返った男の視界の端に隙間が見えた。
大岩で塞がれているが奥へと道が続いているのが隙間から見えるが腕が一本入るくらいの隙間しかない。

「うわぁぁぁぁ!誰か!!誰かぁぁ!!!!嫌だぁぁぁ!!!!」

隙間に腕を突っ込んで泣き叫ぶ男の元へ溶岩が到達し下半身を一気に飲み込む。
腰が炭になり火を吹き全身を包み込み通路に出していた腕が千切れてボトリと落ちた。
そして、その隙間から更に溶岩は流れ出ていくのであった。
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