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第10話 世界との別れ

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「お父さん!?」
「優里?!本当に…生きて…」
「時間がないの、坂上君の所へ連れてって…」

連絡を受けて病院から自宅へ向かう途中で再開した白根親子。
一人娘が生きていた事に喜びを表す前に娘から頼まれた言葉に困惑する真。

「何がなんだか分からないんだが説明を…」
「時間がないのよ…お願い…」

よく見れば裸足で歩いてきたのに気付くが娘の見たこともないような雰囲気に押された真は頷いて病院へ踵を返す。

「後で全部説明するんだぞ」
「うん…ありがとうお父さん」

裸足のままと言うのが気になった真だが娘の気迫にそれどころではないと判断しそのまま向かった。
警察関係者としては駄目な行動であろう、なにせ重要参考人である。
だが父だからこそ娘の様子にただ事では無いと判断を下したのだ。





集中治療室の前にまで白根優里は一人で来ていた。
病院は勿論面会時間を過ぎており親族でない白根親子は中へは入れなかった。
その為、真が看護師の注意を引き付け娘を中へ入れたのだ。

「坂上君…」

面会謝絶と書かれた扉を開いて白根さんは竜一の側までやって来た。
内臓は既に殆ど機能しておらず全身に管を通され自立呼吸すら出来ない姿の坂上に泣きながらしがみつく白根さんは理解をしていた。
自分にずっと取り付いていた天死が居ないこと、死んだ筈の自分が何事もなかったかのように生きていられること…
思い当たる節は一つしかない。
坂上が願いで自分を生き返らせたのだ。

「なんで…私の事…知らない筈なのに…」

泣きながら坂上に寄り添う白根さんの手が坂上の手に触れる。
丁度その時日付が変わり、規則正しく鳴り続けていた心拍を知らせる機械音がピーと鳴り響いた。
坂上の死を知らせるその音の中、白根は坂上の手をただ握りしめるのであった。
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