9 / 92
第9話 死神と提案
しおりを挟む
(何でも願いが叶うんだろ?なら白根さんを生き返らせて元の生活に戻してやってくれ)
『……………ちょっと待て、本当にお前はそれでいいのか?このままだと死ぬんだぞ?それにあの娘は…』
骸骨を見詰めながら竜一は一つの確信をしていた。
今の言動からこいつは何かを隠している、そしてそれはこいつにとってとても重要な何かである。
更にこの焦り様を見れば骸骨は竜一自身が自分の傷を治す等の願いを言わなければ困るのだろう。
(白根さんがデスゲームのマスターって言うのなら分かってる、それでも俺の願いは彼女の命を戻すことだ)
『ち、違う!待ってくれ!これは何かの間違いだ!』
この言葉に骸骨は何かに怯えだした。
言葉が明らかにおかしくなり気付けば竜一に向かって話していないのだ。
次の瞬間、骸骨は青い炎に包まれた。
『ガァァァァ…そん…な……』
その言葉を最後に骨が砂に変化したように骸骨はその場へ崩れた。
それを目で追った竜一はゆっくりと目を閉じる…
一体何が起こったのかは分からないが骸骨が消えたのと同時に意識が消えるように遠のいていく…
そこにあるのは一切の無…
竜一は何もない空間に立っていた。
『おや?もしかして君は…ふむふむ…』
声がして振り向くとそこには顔だけが出せるように開いているウサギの着ぐるみを着た金髪の男性が立っていた。
振り向いた竜一を気にすること無く腕を組んだままブツブツと何かを呟いていた。
『そうか、こんな結末もあるんだな!』
目を大きく開いて竜一の眼前に顔を持ってきた金髪の男。
楽しそうな表情を浮かべながら何かを思い出した様に両手を合わせて頷く。
『突然でビックリしてたんだよね?ごめんごめん、何せ話をするのなんていつ以来か思い出せなくてね』
竜一は口を開いて何かを言おうとしたが声が出ずにそれは伝わらない。
その様子に気付いたウサギの着ぐるみを着た男は人差し指を立ててウサギの耳を押した。
すると周囲の景色が一瞬で変わって何もない空間にだったのに何処かの家の部屋の中に居た。
「なん…だ?!」
『君たち人間は空気がないと声が出せないのを忘れてたよごめんごめん』
まるでさっきまで居た場所は空気がないみたいな事を言われ驚く竜一の口から声が出た。
『よしよし、それじゃ改めて。僕の名前はイナバン、君達が死神って呼ぶ存在さ』
軽い口調で自己紹介された内容に戸惑いを隠せない竜一は固まる。
遊園地やサーカスに居そうな目の前の人物が死神だと名乗っているのだ。
『さて、色々聞きたい事もあるだろうし時間は止めてあるから何でも聞いてよ』
「時間を…止めてる?」
『ん?あぁ、こんなんでも一応神の端くれだからね』
笑いながら相変わらず軽い口調のイナバン。
竜一は生唾を飲み込み質問を口にする。
「さっきのあいつは?それに願った白根さんは…」
『あぁ、あの出来損ないの天死はルールを犯したから処分されたよ。本当は願いを聞いてからそれを叶えるための対価を使うのがルールなのにアイツは君の両親の命を既に使って居たからね』
「まて…今なんて…」
『ん?あっそっか、君の意識を起こし意志疎通をするのに君の父親の命を、君の傷を完治させるために君の母親の命を勝手に使用してね』
「父さんと…母さんの…いのち???」
謎の事件で唯一生き残った瀕死の息子に両親が会いに来ない理由がこれであった。
『まぁそれに関しては最後に相談があるから今は置いといて、白根さんってのは君と一緒に居たあの娘だね?安心してください、彼女はこちらで願い通りに天死の命を対価にして生き返らせてます』
「白根さんが…そうか、よかった…」
『しかし、不思議ですね。どうして君は彼女の蘇生を望んだのですか?』
「彼女、俺を巻き込んだって後悔していたんだ。涙流して本気で謝ってた。彼女がデスゲームのマスターであの天死に取り付かれていたんだろ?吊り橋効果なのかは知らないけどさ、あの時の彼女の涙にコロッと…ってあれ?俺何言って…」
『あは…あはは…あはははははははは!!いや、ごめんごめん本音が聞きたかったからちょっと力を使ってここを隠し事が出来ない状態にしたんだ。悪い悪い、でも……あはははは』
着ぐるみの腹部を押さえながら笑うイナバンに少しムスッとする竜一だが白根さんは無事に生き返ってるという話に安心していた。
先程イナバンはここを隠し事が出来ない状態にしたと言った。
つまりイナバン自身もウソを言ってないだろうと信用したのだ。
『あーこれが人間なんだね、凄く刺激的だったよ。さて、それじゃあ最後の提案だ。君のために使われてしまった両親の命を君の寿命を分け与える事で生き返らせるってのはどうだい?』
「でもそれじゃ俺は…」
『残念だけど対価が無ければ我々は何かを行うことは出来ないのだよ、だからこれは提案だ。君は異世界って興味ない?』
「もしかして、良くある異世界転生ってやつですか?」
『ををっよく知ってるね!なら話は早い!君は新しい世界で新しい人生を楽しめるし君の両親も生き返る、会えはしないけど全てが上手くいく形だと思わないかな?』
「…それしか、無いのかな?」
『これでも最大限の譲渡なのだよ、君の命一つで二人の人間を救うと言うのは本当は無理なんだけどね、こちら側の失態だし、なにより君の望む相手が全て生きている上に別世界だけど君も生きていられる方法ってこれしか無いのさ』
「…………」
少し考え込んだ竜一であったが他に何かを対価にすることも出来ないと言う言葉に納得は出来ないが理解するしかないと判断した。
「分かりました。それでお願いします」
『おっけー!それじゃ君の魂は一度体に戻すね、今夜の24時にその命を対価に両親を生き返らせるから。それじゃね』
そう言って周囲が再び無に返った。
その無の中に竜一は沈むように溶け込んでいった。
「もしもし?えっ?!はぁ?!?!」
病院の外に出て鳴っている携帯電話に出た白根さんの父親である白根真は向こうから伝えられる内容に驚き困惑していた。
「娘が生き返って直ぐに外へ出ていった?!」
まるでゾンビ映画のワンシーンみたいなのを想像する真である。
そして、その頃離れた場所では…
「う、嘘だよね…坂上君…」
病院を目指す白根さんの姿があった。
死んだ時の学生服を着たまま裸足で泣きながら歩く彼女、空に星が浮かび時刻はまもなく23時になろうとしていた。
『……………ちょっと待て、本当にお前はそれでいいのか?このままだと死ぬんだぞ?それにあの娘は…』
骸骨を見詰めながら竜一は一つの確信をしていた。
今の言動からこいつは何かを隠している、そしてそれはこいつにとってとても重要な何かである。
更にこの焦り様を見れば骸骨は竜一自身が自分の傷を治す等の願いを言わなければ困るのだろう。
(白根さんがデスゲームのマスターって言うのなら分かってる、それでも俺の願いは彼女の命を戻すことだ)
『ち、違う!待ってくれ!これは何かの間違いだ!』
この言葉に骸骨は何かに怯えだした。
言葉が明らかにおかしくなり気付けば竜一に向かって話していないのだ。
次の瞬間、骸骨は青い炎に包まれた。
『ガァァァァ…そん…な……』
その言葉を最後に骨が砂に変化したように骸骨はその場へ崩れた。
それを目で追った竜一はゆっくりと目を閉じる…
一体何が起こったのかは分からないが骸骨が消えたのと同時に意識が消えるように遠のいていく…
そこにあるのは一切の無…
竜一は何もない空間に立っていた。
『おや?もしかして君は…ふむふむ…』
声がして振り向くとそこには顔だけが出せるように開いているウサギの着ぐるみを着た金髪の男性が立っていた。
振り向いた竜一を気にすること無く腕を組んだままブツブツと何かを呟いていた。
『そうか、こんな結末もあるんだな!』
目を大きく開いて竜一の眼前に顔を持ってきた金髪の男。
楽しそうな表情を浮かべながら何かを思い出した様に両手を合わせて頷く。
『突然でビックリしてたんだよね?ごめんごめん、何せ話をするのなんていつ以来か思い出せなくてね』
竜一は口を開いて何かを言おうとしたが声が出ずにそれは伝わらない。
その様子に気付いたウサギの着ぐるみを着た男は人差し指を立ててウサギの耳を押した。
すると周囲の景色が一瞬で変わって何もない空間にだったのに何処かの家の部屋の中に居た。
「なん…だ?!」
『君たち人間は空気がないと声が出せないのを忘れてたよごめんごめん』
まるでさっきまで居た場所は空気がないみたいな事を言われ驚く竜一の口から声が出た。
『よしよし、それじゃ改めて。僕の名前はイナバン、君達が死神って呼ぶ存在さ』
軽い口調で自己紹介された内容に戸惑いを隠せない竜一は固まる。
遊園地やサーカスに居そうな目の前の人物が死神だと名乗っているのだ。
『さて、色々聞きたい事もあるだろうし時間は止めてあるから何でも聞いてよ』
「時間を…止めてる?」
『ん?あぁ、こんなんでも一応神の端くれだからね』
笑いながら相変わらず軽い口調のイナバン。
竜一は生唾を飲み込み質問を口にする。
「さっきのあいつは?それに願った白根さんは…」
『あぁ、あの出来損ないの天死はルールを犯したから処分されたよ。本当は願いを聞いてからそれを叶えるための対価を使うのがルールなのにアイツは君の両親の命を既に使って居たからね』
「まて…今なんて…」
『ん?あっそっか、君の意識を起こし意志疎通をするのに君の父親の命を、君の傷を完治させるために君の母親の命を勝手に使用してね』
「父さんと…母さんの…いのち???」
謎の事件で唯一生き残った瀕死の息子に両親が会いに来ない理由がこれであった。
『まぁそれに関しては最後に相談があるから今は置いといて、白根さんってのは君と一緒に居たあの娘だね?安心してください、彼女はこちらで願い通りに天死の命を対価にして生き返らせてます』
「白根さんが…そうか、よかった…」
『しかし、不思議ですね。どうして君は彼女の蘇生を望んだのですか?』
「彼女、俺を巻き込んだって後悔していたんだ。涙流して本気で謝ってた。彼女がデスゲームのマスターであの天死に取り付かれていたんだろ?吊り橋効果なのかは知らないけどさ、あの時の彼女の涙にコロッと…ってあれ?俺何言って…」
『あは…あはは…あはははははははは!!いや、ごめんごめん本音が聞きたかったからちょっと力を使ってここを隠し事が出来ない状態にしたんだ。悪い悪い、でも……あはははは』
着ぐるみの腹部を押さえながら笑うイナバンに少しムスッとする竜一だが白根さんは無事に生き返ってるという話に安心していた。
先程イナバンはここを隠し事が出来ない状態にしたと言った。
つまりイナバン自身もウソを言ってないだろうと信用したのだ。
『あーこれが人間なんだね、凄く刺激的だったよ。さて、それじゃあ最後の提案だ。君のために使われてしまった両親の命を君の寿命を分け与える事で生き返らせるってのはどうだい?』
「でもそれじゃ俺は…」
『残念だけど対価が無ければ我々は何かを行うことは出来ないのだよ、だからこれは提案だ。君は異世界って興味ない?』
「もしかして、良くある異世界転生ってやつですか?」
『ををっよく知ってるね!なら話は早い!君は新しい世界で新しい人生を楽しめるし君の両親も生き返る、会えはしないけど全てが上手くいく形だと思わないかな?』
「…それしか、無いのかな?」
『これでも最大限の譲渡なのだよ、君の命一つで二人の人間を救うと言うのは本当は無理なんだけどね、こちら側の失態だし、なにより君の望む相手が全て生きている上に別世界だけど君も生きていられる方法ってこれしか無いのさ』
「…………」
少し考え込んだ竜一であったが他に何かを対価にすることも出来ないと言う言葉に納得は出来ないが理解するしかないと判断した。
「分かりました。それでお願いします」
『おっけー!それじゃ君の魂は一度体に戻すね、今夜の24時にその命を対価に両親を生き返らせるから。それじゃね』
そう言って周囲が再び無に返った。
その無の中に竜一は沈むように溶け込んでいった。
「もしもし?えっ?!はぁ?!?!」
病院の外に出て鳴っている携帯電話に出た白根さんの父親である白根真は向こうから伝えられる内容に驚き困惑していた。
「娘が生き返って直ぐに外へ出ていった?!」
まるでゾンビ映画のワンシーンみたいなのを想像する真である。
そして、その頃離れた場所では…
「う、嘘だよね…坂上君…」
病院を目指す白根さんの姿があった。
死んだ時の学生服を着たまま裸足で泣きながら歩く彼女、空に星が浮かび時刻はまもなく23時になろうとしていた。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
公爵令嬢はだまっていられない!
西藤島 みや
ファンタジー
目が覚めたら異世界だった、じゃあ王子様と結婚目指して…なんてのんびり構えていられない!? 次々起きる難事件、結局最後は名推理?巻き込まれ型の元刑事…現悪役令嬢、攻略対象そっちのけで事件解決に乗り出します!
転生ものですが、どちらかといえばなんちゃってミステリーです。出だしは普通の転生物、に見えないこともないですが、殺人や詐欺といった犯罪がおきます。苦手なかたはご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる