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天井が迫ってくる塔 第8話
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「うげぇあ・・・」
「あぎ・・・あげぇぇ・・・」
「くそっどうして・・・」
常に冷静沈着を見せていた金剛が焦りを露わにしていた。
それも仕方ないだろう、自分達がこの水のお陰で大丈夫だというのに飲ませた相手が苦しがったままなのだ。
「そっちはどうだ?!」
「だめっこっちも・・・」
「くそっ効果が出るまで時間が掛かるのか?」
私も焦りを覚えつつ苦しがっている男子生徒に水を飲ませる。
だが効果があるようには見えず、悶え苦しむ様子は一向に変わらなかった。
「あ・・・がげぇ・・・あ・・・」
苦しそうに喉を押さえながら仰向けになり、目を見開くぽっちゃりした女学生。
その痙攣が、停止した・・・
「そん・・・な・・・」
それは前回の振動が始まる前に話しかけてきた彼女であった。
間違いなく彼女もペットボトルを手にしていた筈なのである。
それなのに・・・
「う・・・そ・・・」
また一人、また一人と力尽き涙を流しながら、またある者は苦しさのあまり失禁し絶命していく・・・
奮闘空しく誰一人救えないまま次々と死んでいく人を見る事しか出来ない4人・・・
意気消沈するのも仕方ないだろう・・・
「うっ・・・」
思わず吐き気を覚える東が蹲る、だがそれも仕方ないだろう。
ここまで生き残ってきた筈の人達が突然なんの死んでいったのだ。
お互い名前も知らなくても、運命共同体と言って差支えの無い人たちの死・・・
流石の金剛も悔しそうに地面を殴りつけていた。
「くそっ!くそっ!くそぉっ!」
原因も理由も分からないままただ死ぬためだけにここに居るかのような状況。
そして、悲劇はこれだけでは無かった・・・
「えっ?」
「あっ・・・うそっ・・・」
生き残っていた柊と東が突然声を上げた。
その声に私と金剛が視線をやると、二人の体が透け始めていたのだ。
「まさ・・・か・・・」
それを見て消えた相沢の事を思い出す・・・
今にも消えそうになっている東が言ったのだ。
『あれで死んだ人の子孫、もしくは誕生に関与している人が消えたんじゃないかしら?』
つまり死んだ者の中に二人の誕生に関与した人が居たのかもしれない。
そして、その人物が死んだ事で二人も・・・
「や、やだ!」
私は東の元へ駈け出した。
透けてこちらを呆然と見つめる最後の同性である彼女に手を伸ばすが・・・
その手は彼女の体をすり抜けた。
「う・・・そ・・・」
だが、薄くなった東はその手を包むように手を出して口を開く・・・
声は既に聞こえない、だがゆっくりと自分の状況を理解した彼女は私に届くように口を動かした。
出会って間もなくお互いの事なんて殆ど分からない、だが友情に時間は関係無いのだと理解させられるように彼女の言葉は私に理解できた。
(い、き、の、こ、って)
今にも消えそうになるのに彼女は自分の事を心配してくれた。
とても優しい女の子なのだ。
その彼女に私の声が届いているか分からない、なので答えると共に私は大きく1回頷いた。
「うん!」
その返事に微笑みを返し東は見えなくなった。
ペタンっとその場に座り込み彼女の手が在った場所を呆然と見つめる私、その肩に金剛が手を乗せた。
「しっかりするんじゃ、もう残っとるのはお前とワシだけなんじゃからな」
そう言われ悲しい筈なのに涙も出ない私は周囲を見回す。
苦しみ悶えて死んでいる人の数名の体も消えており、私は一つの可能性に気が付いた・・・
そう、この場で生き残っているのは私と金剛のみ・・・
ジッと金剛の顔を見詰める・・・
「どうしたんじゃ?」
「もしかして・・・」
そう、死んだ者の祖先か誕生関係者が死ぬとその者は消える。
そしてこの場に生き残っているのは私と金剛のみ・・・
それはつまり・・・
「私は、貴方の子孫なの・・・?」
その言葉に金剛もそれを想像していたのであろう、少し難しそうな顔をしながら俯き答える・・・
「分からん・・・」
金剛にそれが分かる筈が無いし、私の親族に金剛と居る人が居るのかも分からない・・・
だが現在の状況を考えると・・・
そう考えた私達を再び最後と思われる振動が襲い掛かるのであった・・・
「あぎ・・・あげぇぇ・・・」
「くそっどうして・・・」
常に冷静沈着を見せていた金剛が焦りを露わにしていた。
それも仕方ないだろう、自分達がこの水のお陰で大丈夫だというのに飲ませた相手が苦しがったままなのだ。
「そっちはどうだ?!」
「だめっこっちも・・・」
「くそっ効果が出るまで時間が掛かるのか?」
私も焦りを覚えつつ苦しがっている男子生徒に水を飲ませる。
だが効果があるようには見えず、悶え苦しむ様子は一向に変わらなかった。
「あ・・・がげぇ・・・あ・・・」
苦しそうに喉を押さえながら仰向けになり、目を見開くぽっちゃりした女学生。
その痙攣が、停止した・・・
「そん・・・な・・・」
それは前回の振動が始まる前に話しかけてきた彼女であった。
間違いなく彼女もペットボトルを手にしていた筈なのである。
それなのに・・・
「う・・・そ・・・」
また一人、また一人と力尽き涙を流しながら、またある者は苦しさのあまり失禁し絶命していく・・・
奮闘空しく誰一人救えないまま次々と死んでいく人を見る事しか出来ない4人・・・
意気消沈するのも仕方ないだろう・・・
「うっ・・・」
思わず吐き気を覚える東が蹲る、だがそれも仕方ないだろう。
ここまで生き残ってきた筈の人達が突然なんの死んでいったのだ。
お互い名前も知らなくても、運命共同体と言って差支えの無い人たちの死・・・
流石の金剛も悔しそうに地面を殴りつけていた。
「くそっ!くそっ!くそぉっ!」
原因も理由も分からないままただ死ぬためだけにここに居るかのような状況。
そして、悲劇はこれだけでは無かった・・・
「えっ?」
「あっ・・・うそっ・・・」
生き残っていた柊と東が突然声を上げた。
その声に私と金剛が視線をやると、二人の体が透け始めていたのだ。
「まさ・・・か・・・」
それを見て消えた相沢の事を思い出す・・・
今にも消えそうになっている東が言ったのだ。
『あれで死んだ人の子孫、もしくは誕生に関与している人が消えたんじゃないかしら?』
つまり死んだ者の中に二人の誕生に関与した人が居たのかもしれない。
そして、その人物が死んだ事で二人も・・・
「や、やだ!」
私は東の元へ駈け出した。
透けてこちらを呆然と見つめる最後の同性である彼女に手を伸ばすが・・・
その手は彼女の体をすり抜けた。
「う・・・そ・・・」
だが、薄くなった東はその手を包むように手を出して口を開く・・・
声は既に聞こえない、だがゆっくりと自分の状況を理解した彼女は私に届くように口を動かした。
出会って間もなくお互いの事なんて殆ど分からない、だが友情に時間は関係無いのだと理解させられるように彼女の言葉は私に理解できた。
(い、き、の、こ、って)
今にも消えそうになるのに彼女は自分の事を心配してくれた。
とても優しい女の子なのだ。
その彼女に私の声が届いているか分からない、なので答えると共に私は大きく1回頷いた。
「うん!」
その返事に微笑みを返し東は見えなくなった。
ペタンっとその場に座り込み彼女の手が在った場所を呆然と見つめる私、その肩に金剛が手を乗せた。
「しっかりするんじゃ、もう残っとるのはお前とワシだけなんじゃからな」
そう言われ悲しい筈なのに涙も出ない私は周囲を見回す。
苦しみ悶えて死んでいる人の数名の体も消えており、私は一つの可能性に気が付いた・・・
そう、この場で生き残っているのは私と金剛のみ・・・
ジッと金剛の顔を見詰める・・・
「どうしたんじゃ?」
「もしかして・・・」
そう、死んだ者の祖先か誕生関係者が死ぬとその者は消える。
そしてこの場に生き残っているのは私と金剛のみ・・・
それはつまり・・・
「私は、貴方の子孫なの・・・?」
その言葉に金剛もそれを想像していたのであろう、少し難しそうな顔をしながら俯き答える・・・
「分からん・・・」
金剛にそれが分かる筈が無いし、私の親族に金剛と居る人が居るのかも分からない・・・
だが現在の状況を考えると・・・
そう考えた私達を再び最後と思われる振動が襲い掛かるのであった・・・
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