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天井が迫ってくる塔 第6話

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「1種類、2種類、3種類。リバーシのコマは何種類あるでしょうか?」

正直身構えていた私はホッとした。
難しい問題が来たらどうしようと考えていたのだ。
特にこういうなぞなぞでは知らない物を尋ねられた時に困るのが一番怖いのだ。
聞いた事の無い物、見た事の無い物、それらの事を口頭で尋ねられても分からなかったらどうしようもないからだ。
生き残れる、そう考えた私は落ち着いて深呼吸をしてから答えようとした。
リバーシと言えばオセロの事だ、だからコマは黒と白の2種類・・・
そう答えようとした時であった・・・

「あっ?!」

持っていたペットボトルが手から零れ落ちる、そして地面に落下し跳ねたペットボトルは白くなった壁にぶつかり・・・
バチンっという音と共にバラバラに弾け飛んだ!?

「ひぁっ?!」

狭い空間、そこで破裂するように飛び散ったペットボトルの破片が足にぶつかり左足が少し切れた。
驚きと共に目の前の白い壁がとても危険な物に見えた私、今見た光景に驚き言葉を失った。

「あ・・・え・・・」

あまりにも突然の事で驚き、しばし放心状態になった私の意識を戻したのはあの声であった。

「1種類、2種類、3種類。リバーシのコマは何種類あるでしょうか?」

再びの問題復唱、それで今の状況を理解し直し答えを述べようと口を開いた。
だが・・・

「あいっちちっ・・・」

白い靴下が赤く染まるくらい足の切り傷から血が出ており、痛みに顔を歪ませた。
その瞬間、突然白い壁が透明になり上から冷たい空気が入ってきた。

「えっ?なんで・・・?」

上を見上げれば天井が〇の形に開いており、どうやら問題に正解したのだと理解した。
だが、一体なぜ?
そう考えた時に気付いた、私の口から出た「いっち」が『1』つまり1種類だと認識されたのだろう。
そして、よくよく考えればリバーシのコマは表と裏で黒と白の2色になっているのだから・・・
思わぬラッキーで助かった事に安堵しながらその場にしゃがみ込む。
その時であった・・・

「あれ?やだ・・・なんか熱い・・・」

その声の方向を見ると、最後に話しかけてきた名も知らぬあの女子であった。
上を見ると迫ってきている天井は開いておらず、心なしか赤く光っているようにも見えた。

「あ・・・・あつっ・・・・」

自らの体を押さえて苦しそうに声を発したかと思ったその時であった。

「ひいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!?」

突然の絶叫、そして全身から煙が上がり床に這いつくばり悶えだした。

「熱いっ!!!熱い熱い熱いあついアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ熱いよおおおおぉおおお!!!」

叫びながら悶える彼女の着ていた服が発火した!
火は一気に彼女の全身を包み込み物凄い火力で一気に燃え上がる。
その火の中で黒くなった彼女は最後の絶叫を上げた・・・

「ひぎゃあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

その絶叫を最後に何も言わなくなった黒い物体、燃えていた火は直ぐに燃え尽きて後には黒い炭の様な物だけが残されていた。
あまりの壮絶な光景に足から垂れる血を忘れていると・・・

「あぎゃああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」
「びゃあああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」
「おぎゃああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」

少し離れた場所でも同じように絶叫が上がり、いくつもの火が燃え上がっていた。
その光景に思わず目を覆って耳を塞いだ。
天井に潰されて死ぬのも嫌だが、生きたまま焼かれる死に方なんて・・・

「うぅ・・・うげぇぇ・・・」

再びの嘔吐、だが今度は口にした水くらいしか出てこず、私は何度も地面に向かって吐いた。
耳に残る絶叫、それが耳から離れないのだ。

「おい、大丈夫か?!」

聞きなれた声、顔を少し上げると金剛さんが居た。
そのまま視線を上に上げれば天井が開いており、私は血の気の引いた顔を金剛さんに向けた。

「とりあえずお前さんも無事で良かった」
「けほっけほっ・・・金剛さん・・・も大丈夫みたいで・・・」
「おぉっ!ワシにあんな問題が分からんわけないじゃろう!」

そう言って笑いながら自分の問題が簡単だったと話す金剛。
彼に出された問題は・・・

問題!ビール、ジュース、スープ。この3つの内 サッカー、シーソー、ステーキ、チーズと仲間な言葉はどれでしょう?

であったと言う・・・
あんなリーゼントで見た目は不良なのに凄いと私は感心し、彼が私の気を紛らわす為に話している事に感謝するのであった・・・
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