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人から人へ感染するアウトブレイク 第2話
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頭から水を浴びた様子のエルミンを見てガンジーは驚きながら訪ねる。
「エ・・・エルミン大丈夫か?」
「ん?あ~外の霧?なんか変だよね~紫色の霧なんて初めて見たよ」
父ガンジーの心配を余所に息子のエルミンは服の端を絞って水を出していた。
もちろん玄関は直ぐに閉められ、紫色の霧は飛散し家の中には広がっていなかった。
だが毒々しい紫色の霧の中を歩いて来たと考えると異様に心配になってきた・・・
「なんか急に紫色の霧が立ち込めちゃって、驚いて転んじゃってさ。もう一回水を汲みに行ったから遅くなったよ」
「だ、大丈夫ならいいんだが・・・」
ガンジーは不気味な紫色の霧に不安を覚えていたが、息子のエルミンが平然としているのに安堵し、肩の力を抜いた。
一体何にこれ程の不安を感じているのか自分自身でも理解が出来ない・・・
フト振り返れば外の紫色の霧は薄まっており、直ぐにいつもの外の景色が戻ってきていた。
「何だったんだろうな・・・一体・・・」
「そんな事よりお腹空いた~」
「はいはい、ほらっエルミンも早く朝食食べましょう」
一筋の嫌な冷や汗がタラリと流れたガンジーであったが、妻と息子の様子に気持ちを切り替えガンジーも食卓へ向かった。
母バーラの言葉にタオルで髪を拭いていたエルミンも直ぐに席に着き、家族4人揃って朝食を食べ始める・・・
いつもと変わらない風景、杞憂だったとガンジーは安堵の息を吐いて料理に手を伸ばす。
平穏で平和な日常・・・
それは突然崩れ去る・・・
切っ掛けは些細なことであった・・・
「助けてくれぇー!!」
家族団欒の朝食を食べ終え、畑仕事に出ようとガンジーが着替えていた時、突然叫び声と共に玄関のドアが開いた!
まるで飛び込んできたかのように勢いよく開けられたドアの音に目を剥く!
そこには隣に住む一家の主人が血相を変えて転がり込むように入ってきた。
そのまま反転し、自身が勢い良く開けたドアを今度は強く叩きつける様に閉めているその人物の異様な様子にガンジーは驚きながらも声を掛けた。
「ハイネスさん、一体どうしたんです?」
「げ、玄関を!玄関を押さえるんだ!!」
突然のハイネスの言葉、そしてガンジーの家の玄関のドアを必死な形相で押さえているハイネスの様子にガンジーは困惑の表情のまま行動に出る事が出来なかった。。
意味が分からず動けないままガンジーが困惑していると玄関の外から激しく叩くような音が聞こえた。
ドンドンドンドン!バンバンバンバン!
強く何度も叩かれる玄関のドア。
音からして複数人が外でドアを叩いているのが窺えた。
他人の家の玄関のドアをこれほど強く叩き続ける事なんてあるわけがない、ガンジーは激しく叩かれるドアの音に我に返りハイネスの言葉通りにドアに向かって移動した。
「ひぃぃ!来るな!来るなぁあああ!!!」
意味が分からないがガンジーもハイネスと共にドアを押さえに近寄った。
その時目に入る・・・
ハイネスの右手、小指側の側面に歯形の様な物があり、出血していたのだ。
ガンジーのその視線に気付いたのか、突然家にやって来た隣のハイネスはドアを押さえながら汗を大量に垂らし叫ぶ様に口にした。
「あいつら急に襲いかかって来たんだ!息子も水汲みに行って帰ってこないし一体どうなってるんだ?!」
必死な形相で叫びだす。
すぐ横にガンジーが協力する為に押さえに来ているのに、視線に気付いたくらいからガンジーに全く視線を向けず叫ぶように独り言を言い続ける・・・
明らかにおかしい雰囲気だが、凄い力で叩かれる玄関の音に恐怖を覚えたガンジーは玄関横に置いてある靴箱を引っ張りドアの前に置いた。
上手い具合に靴箱が引っ掛かり、ドアを押さえなくても良くなったのでガンジーは手を離した。
「ハイネスさん、落ち着いて下さい。もう大丈夫です」
「ふーーーふーーーふーーー」
「大丈夫ですか?」
荒い息遣いを続けるハイネス、叫び声を聞きつけたエルミンが自分の部屋から出てきた時であった。
突然ガンジーに向って酷い形相になったハイネスが両手を前に出してガンジーに向って・・・
「うがぁああああ!!!!」
「うぁっ!?なにを?!」
突然ハイネスがガンジーに襲いかかった!
その目は先程までと違い真っ赤に充血し、開かれた口からは何時の間にか牙の様なものまで生えていた。
その形相を見て一目で人間ではない何かになってしまったのだとガンジーは感じた。
「ぐぅ・・・ううう・・・なんて・・・力だ・・・」
「がぁああああ!!うがぁああ!!!がぁあうぅ!!!」
今にも噛み付こうと口を何度も開いては閉じるを繰り返すハイネスの変貌にエルミンは硬直する・・・
必死にハイネスの顎を押さえ、噛み付かれまいとするガンジーが床に押し倒された。
「父さん!」
その瞬間エルミンが動いた。
近くにあったスコップを手にし、おかしくなったハイネスの顔面目がけてスイング!
「父さんを!離せ!」
ゴバンッ!!!
「げぇあっ?!」
とても人体から鳴るとは思えないような鈍い音、それがハイネスの顔面から響き首が変な方向に曲がり、ハイネスはガンジーに覆い被さるように倒れた。
直ぐにそれを横にずらして起き上がるガンジー、首が変な方向に曲がったハイネスは痙攣をしながら陥没した顔面から血を流し始める・・・
「うぁ・・・俺・・・俺・・・」
「大丈夫!落ち着けエルミン、お前は俺を助けてくれたんだ」
「父さん・・・」
「ありがとう・・・」
スコップを手から零れ落としたエルミンは全身を震わせていた。
それを父ガンジーはそっと優しく抱きしめる・・・
だが・・・その時、妻バーラの叫び声が家中に木霊する・・・
「きゃぁああああああああ!!!」
悲劇はまだ始まったばかりであった・・・
「エ・・・エルミン大丈夫か?」
「ん?あ~外の霧?なんか変だよね~紫色の霧なんて初めて見たよ」
父ガンジーの心配を余所に息子のエルミンは服の端を絞って水を出していた。
もちろん玄関は直ぐに閉められ、紫色の霧は飛散し家の中には広がっていなかった。
だが毒々しい紫色の霧の中を歩いて来たと考えると異様に心配になってきた・・・
「なんか急に紫色の霧が立ち込めちゃって、驚いて転んじゃってさ。もう一回水を汲みに行ったから遅くなったよ」
「だ、大丈夫ならいいんだが・・・」
ガンジーは不気味な紫色の霧に不安を覚えていたが、息子のエルミンが平然としているのに安堵し、肩の力を抜いた。
一体何にこれ程の不安を感じているのか自分自身でも理解が出来ない・・・
フト振り返れば外の紫色の霧は薄まっており、直ぐにいつもの外の景色が戻ってきていた。
「何だったんだろうな・・・一体・・・」
「そんな事よりお腹空いた~」
「はいはい、ほらっエルミンも早く朝食食べましょう」
一筋の嫌な冷や汗がタラリと流れたガンジーであったが、妻と息子の様子に気持ちを切り替えガンジーも食卓へ向かった。
母バーラの言葉にタオルで髪を拭いていたエルミンも直ぐに席に着き、家族4人揃って朝食を食べ始める・・・
いつもと変わらない風景、杞憂だったとガンジーは安堵の息を吐いて料理に手を伸ばす。
平穏で平和な日常・・・
それは突然崩れ去る・・・
切っ掛けは些細なことであった・・・
「助けてくれぇー!!」
家族団欒の朝食を食べ終え、畑仕事に出ようとガンジーが着替えていた時、突然叫び声と共に玄関のドアが開いた!
まるで飛び込んできたかのように勢いよく開けられたドアの音に目を剥く!
そこには隣に住む一家の主人が血相を変えて転がり込むように入ってきた。
そのまま反転し、自身が勢い良く開けたドアを今度は強く叩きつける様に閉めているその人物の異様な様子にガンジーは驚きながらも声を掛けた。
「ハイネスさん、一体どうしたんです?」
「げ、玄関を!玄関を押さえるんだ!!」
突然のハイネスの言葉、そしてガンジーの家の玄関のドアを必死な形相で押さえているハイネスの様子にガンジーは困惑の表情のまま行動に出る事が出来なかった。。
意味が分からず動けないままガンジーが困惑していると玄関の外から激しく叩くような音が聞こえた。
ドンドンドンドン!バンバンバンバン!
強く何度も叩かれる玄関のドア。
音からして複数人が外でドアを叩いているのが窺えた。
他人の家の玄関のドアをこれほど強く叩き続ける事なんてあるわけがない、ガンジーは激しく叩かれるドアの音に我に返りハイネスの言葉通りにドアに向かって移動した。
「ひぃぃ!来るな!来るなぁあああ!!!」
意味が分からないがガンジーもハイネスと共にドアを押さえに近寄った。
その時目に入る・・・
ハイネスの右手、小指側の側面に歯形の様な物があり、出血していたのだ。
ガンジーのその視線に気付いたのか、突然家にやって来た隣のハイネスはドアを押さえながら汗を大量に垂らし叫ぶ様に口にした。
「あいつら急に襲いかかって来たんだ!息子も水汲みに行って帰ってこないし一体どうなってるんだ?!」
必死な形相で叫びだす。
すぐ横にガンジーが協力する為に押さえに来ているのに、視線に気付いたくらいからガンジーに全く視線を向けず叫ぶように独り言を言い続ける・・・
明らかにおかしい雰囲気だが、凄い力で叩かれる玄関の音に恐怖を覚えたガンジーは玄関横に置いてある靴箱を引っ張りドアの前に置いた。
上手い具合に靴箱が引っ掛かり、ドアを押さえなくても良くなったのでガンジーは手を離した。
「ハイネスさん、落ち着いて下さい。もう大丈夫です」
「ふーーーふーーーふーーー」
「大丈夫ですか?」
荒い息遣いを続けるハイネス、叫び声を聞きつけたエルミンが自分の部屋から出てきた時であった。
突然ガンジーに向って酷い形相になったハイネスが両手を前に出してガンジーに向って・・・
「うがぁああああ!!!!」
「うぁっ!?なにを?!」
突然ハイネスがガンジーに襲いかかった!
その目は先程までと違い真っ赤に充血し、開かれた口からは何時の間にか牙の様なものまで生えていた。
その形相を見て一目で人間ではない何かになってしまったのだとガンジーは感じた。
「ぐぅ・・・ううう・・・なんて・・・力だ・・・」
「がぁああああ!!うがぁああ!!!がぁあうぅ!!!」
今にも噛み付こうと口を何度も開いては閉じるを繰り返すハイネスの変貌にエルミンは硬直する・・・
必死にハイネスの顎を押さえ、噛み付かれまいとするガンジーが床に押し倒された。
「父さん!」
その瞬間エルミンが動いた。
近くにあったスコップを手にし、おかしくなったハイネスの顔面目がけてスイング!
「父さんを!離せ!」
ゴバンッ!!!
「げぇあっ?!」
とても人体から鳴るとは思えないような鈍い音、それがハイネスの顔面から響き首が変な方向に曲がり、ハイネスはガンジーに覆い被さるように倒れた。
直ぐにそれを横にずらして起き上がるガンジー、首が変な方向に曲がったハイネスは痙攣をしながら陥没した顔面から血を流し始める・・・
「うぁ・・・俺・・・俺・・・」
「大丈夫!落ち着けエルミン、お前は俺を助けてくれたんだ」
「父さん・・・」
「ありがとう・・・」
スコップを手から零れ落としたエルミンは全身を震わせていた。
それを父ガンジーはそっと優しく抱きしめる・・・
だが・・・その時、妻バーラの叫び声が家中に木霊する・・・
「きゃぁああああああああ!!!」
悲劇はまだ始まったばかりであった・・・
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