呪われた死にたがりの男

第４８話 残された死体

「おっ居た居た！鬼ごっこは終わりかな～？」

血塗れの男の血痕を辿ってきた数名の内の一人が見まみれの男に声を掛ける。
血塗れの男は意識がなくそれに答えることは無いが肩が上下しているのでまだ息があるのは見てとれた。

「37歳の男はお前しか居なかったんだ悪く思うなよ」

別の男がそう言い腰に挿していた刀を抜いた。
少し湾曲した波紋の描かれた美しいその刀は日本刀とはまた違った独特の艶を放っていた。
他の数名が血塗れの男を地面に押さえつけ刀を抜いた男は大きく振りかぶり一気に降り下ろした。
地面に刀が刺さりその切れ味は本物だと言うように遅れて男の首が真下にずり落ちた。
既に結構な量の血を失っていたその体からまだこんなに残っていたのかと言わんばかりの血が吹き出し血の水溜まりを広げていく。
一人の男が生首の髪を掴み首から流れる血が止まるまでその場で少し待つ。
体とは違い心臓と言うポンプのない首から上に残っていたのは少量の血なので少しすればその血も止まり用意されていた風呂敷の様な布に生首は包まれそいつらは来た道を歩いて戻って行った。
数名が男の骨だけの体に視線をやったがここでは白骨死体が珍しくないのか特に興味を持たれることもなくそのまま素通りしていくのだった。

男達の姿が完全に見えなくなるくらいに首を切られた死体から流れていた血が男の足まで到達した。
男の足に血が触れた時に突然渇きを覚えた。
男の骨だけの体に中にあるスライムの細胞が血を飲み始めたのだ。
無意識にゆっくりと立ち上がった男は血の上を歩きながら首無し死体に近付いていきその死体に覆い被さるように上に重なりゆっくりと同化するようにその死体を浸食していくのだった。