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第4話 演奏会にいるとか聞いてないんだが? 4
しおりを挟む「はーもうしょうがないわね分かったわ」
「紗綾ー」
「作戦はこうよ、まず私がピアノを弾き、その後に横に立っていた桜が弾く」
「分かった、じゃあさっそく」
「ちょっと待ちなさい、ちゃんと、約束しなさいよ実力は出しすぎないこと、注目されすぎてもいいことなんてないんだからね」
「大丈夫、それは分かってるから」
私は首がもげそうなぐらい必死にうんうんと首を縦に振る。
「あんた、もうピアノを弾くこと以外頭にないわね。はー分かったわよ行くわ」
「ところで紗綾弾ける曲あるの?」
「うるさいわね、私だってエ◯ーゼのためにとかエ◯ーゼのためにとか弾けるのよ」
「2つ弾けるような言い方だけど、紗綾がエ◯ーゼのためにしか弾けないことは分かったわ」
「うっほらさっさと進むわよ」
私は、紗綾に背中を押されながらピアノの近づく。人の声があちこちから聞こえて酔いそうだ。
広場は、香水の匂いがきついし、本当に気持ち悪くなりそうだなあ……。私は、人が近づく度に息を止めながら早歩きで進む。
そして、私達は、人の波をかき分けながらようやくピアノまでたどり着くことができた。
「じゃあ弾いてくるわ」
「がんばってね紗綾、骨は拾っとく」
「殺さないでよ」
紗綾は、ピアノの椅子の高さを調整してからゆっくりと座った。そして、エ◯ーゼのためにを弾き始める。
うん。普通の演奏だ。でもさすがというか少し躓く所があってもすぐに立ち直ってる所が紗綾らしいなあ。ピアノは、よくその人の性格が出ると言われるけど、紗綾の演奏はそれがいい意味でよく表れている。
紗綾は弾き終わると、拍手がパラパラと湧きあがった。紗綾は、拍手されるのが恥ずかしくなってきたのか、私の所に急いで駆け寄ってきた。
「紗綾、上手かったよ。ありがとう」
「私がこれだけ頑張ったんだから思い切って……じゃなくて程々に弾いてきなさいよ」
「うん、楽しんでくる」
私は、少し紗綾に微笑んでからピアノの方向へ歩き出した。ピアノまでの距離が長く感じる。
自分の演奏を今から人に聞かせる高揚感と、人の前で弾く緊張感が入り混じり、ドクドクとメトロノームのように重く正確に心臓が波打つ。
膝に乗せた手のひらが冷たい。緊張で手のひらが小刻みに震えているのが分かる。人前で弾くのはいつぶりだろうか。
私は、瞳を閉じ、一呼吸してから指を動かした。
今弾いている曲は、人形の◯と目覚めだ。この曲は、最初は簡単だか、先に進むたびに難しくなっていく所が楽しい。しかし、今日はあえて音を外したり、雑に指を動したりするように気をつけるようにしなければならないのが苦痛だなあ……。
こんなにいいピアノなのに……。
ちょっと手を乗せるだけで、伸びの良い音が出る。きっと色んな曲をこのピアノで弾いたら楽しいんだろうなあ。伸びは、いいのに強弱はつけやすく鍵盤も軽いのは不思議だけど。
自分の音だけしか聞こえないのが心地良い。周りの話し声も何も入らない。ピアノを弾くとまるで自分だけの世界に入れるような、そんな感覚になる。
昔は、よく嫌な事があるとすぐにピアノを弾いてたなあ。そうするとすべてが忘れられるから。
私には、これしかなかった。
「桜?」
突然、自分の世界に入り込んだ声に戸惑い、ピタリと動かしていた指を止める。
紗綾?じゃない。低かった。男の人の声?
周りを見渡す。しかし、周りの音が邪魔して何処から聞こえてきたのか分からなかった。
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