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エピローグ
しおりを挟むあれから、商人として長く旅に出ていた父が屋敷に戻り、マリアとアーデルの所在知った父は、アーデルの母、マリアと離縁をし、今は、私と父の二人で暮らしている。
あとは、時々というより、毎日ユーレイル様が訪ねて来ますね。やっぱりあんな事があって心配なのでしょうか。来る頻度がとても多く感じます。
私は、読んでいた本のページを捲る。ふと気になってユーレイル様を見ると、ユーレイル様は、本の約半分を読み終えている所でした。
「それにしても、ユーレイル様。どうして私を捨てなかったのですか?」
私は、ずっと疑問でした。だって巷で流行っている恋愛小説では、妹に婚約者を寝取られる話が多かったのです。それに、私の顔は、可愛いとは言いがたいような顔です。誰も私と結婚したいとは、思わないでしょう。
「マリーベルは、俺を顔で選ぶような人だと思っているの?」
「いえ、今はユーレイル様を信じています。しかし、あれだけ美しかったら惚れてしまうのも無理もない気がして」
「マリーベル、顔が全てじゃないんだよ、俺は、マリーベルが真剣に本を読んでいる所。失敗しても何度も諦めないで頑張る所。そして、落ち込んでいたらそっと隠していたお菓子をくれる所。そして……」
「もう、分かりました。これ以上は、恥ずかしいので」
「まだまだ言いたりなかったのに……」
ユーレイル様は、全部言いきれなかったことを残念そうにしている。そう言う所がこの人は、可愛いのだ。普段は、非の打ち所のない人なのに、マリーベルの前では幼い頃のユーレイルのままだった。
「でも、確かに顔で選んでいる人もいると思うよ。マリーベル。でもそれと同じぐらいちゃんと見てくれる人もいると俺は思うんだ」
「そうですね、でも、まさかこんな近くにいるとは思いませんでした」
「でしょ? じゃあ結婚式はいつにする?」
「気が早いです。ユーレイル様」
「ふふ、残念。流されなかったね。」
「でも、私は、ユーレイル様と結婚するのが楽しみです」
「マリーベル!」
私は、嬉しそうなユーレイルに抱きしめられました。
以前までは、自分の顔の醜さから劣等感を感じていました。しかし、どんなに美しいアーデルを見てもずっと私を思って下さったユーレイル様を見て、私も自信を持とうと思ったのです。
次の年、私とユーレイル様は、結婚式を挙げました。以前とは違い堂々と皆様の前を歩く私を見て、参列者は、とても驚いたことでしょう。
◇◇◇◇◇
「ねえ、お母様、私どうしてお母様に似ちゃったの! こんな私誰も好きになってくれないよ」
5歳になった娘のリリーが、泣きながら私に抱きつきました。その姿を見ると、昔の自分を思い出します。
「リリー。違うわ。貴方は、ラッキーなの。だって、貴方の中身を見て好きになってくれる人と出会うことができます。私とユーレイル様のように」
「そんなことないのっ! だって、皆私のことブスって言うんだもん」
「じゃあ、今からリリーに素敵なお話を聞かせてあげますね」
「ひっくっお母様どんな話なの?」
「昔々あるところに……」
私は、今までのユーレイル様との出会いを物語にしてリリーに聞かせました。
「ねぇ、お母様、本当に私も王子様に出会えると思う?」
「えぇ、きっと出会えますよ、だから今日は、もう寝ましょうね」
「はい、お母様!」
その後、リリーに素敵な出会いが訪れたのは、また別のお話。
fin
最後までお読みいただきありがとうございました!
皆様に出会えたことを心から感謝しております。
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