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第3話 非凡
しおりを挟む「アーテステス。聞こえてますカ?」
は?
「誰?ていうか何この声?」
「いたずらなんじゃね?」
クラスメイトは、突然の放送に困惑しながら、予想を呟いていく。
「アッ聞こえてますね、初めましてこんにちワ。ワタシはウラナイシと申しまス」
機械音のような声が放送から流れる。
「占い師?」
「はは、中二病かよ」
僕は、窓から校庭を見る。今はちょうど下校時間であるはずなのに生徒が誰も校庭にいない。
この時間は、校庭で野球部が練習をしているはずなのにいないのは、おかしいな……。
何かが起きている?
「今、ワタシのことを侮辱しましたネ。許しませんヨ」
バンッ
「……っ」
突然の銃声にビクッと体が硬直する。
「これで静かになりましたネ、よかったよかっタ」
真っ赤な血が音と時差でゆっくりと床に広がる。
「中田?」
誰が呟いたかは、分からない。衝撃すぎて、体も脳も固まっているのだ。
皆も僕と同じなのか、静寂が教室を包み込む。
ドクドクと心臓の音がはっきりと全身に響いているようだ。
体に変な力が入っているのを感じる。
中田が打たれてから5分ぐらい経ったのだろうか、スリッパが赤く染まったのを見た安堂 彩が呟いた。
「嘘、これ血なの?」
「ぎゃあああああっ」
「待って誰か呼んでこよう」
「スマホは?」
「あ、あれどうして圏外になってる」
「ドアも窓も開かないんだけどっ!」
血を見たことによるパニックなのか、あるものは、叫び、あるものは必死に教室から出ようとドアを叩く。
部屋に充満している鉄のような匂いが鼻を突き刺すのも原因かもしれない。
僕は、自分の席に座ったまま周りのクラスメイトの行動を傍観しながら、ウラナイシの次の言葉を待つ。
「ワタシの説明が終わるまで、教室からは、出られませんヨ」
ウラナイシと名乗った者は、淡々とセリフを読み上げるかのように話す。
「じゃあ、早く説明とやらをしなさいよっ」
「そうだ、ここから出せ!」
「あなたたちもコウなりたいのデスカ?」
言われなくてもコウが指している物が分かったのか、叫んでいた2人は、すぐに黙った。
「それでは、ルールをご説明しまス。これかラ、あなた達には、学校に散らばっているタロットカードを探してもらいますヨ」
「カードは、このような封筒に入ってまス。封筒からカードを取り出した瞬間に、カードの効果が発動しまス」
どこから現れたのか、教卓の上に1つの封筒が現れる。見た目は、どこにでもあるちょうどカードが1番入るぐらいの長方形の封筒のようだ。
「皆さん返事がないですが、大丈夫ですカ?」
喋りたくても喋れないが正しいのだろう。さっきのウラナイシの脅しが効いているのかもしれない。
「ウーン、そうですね、静かすぎるのもよくないでスネ。今から誰か1人に実演してもらいたいと思いまシタ。誰か1人出てきてくださイ」
皆、自分が行きたくないのは一緒なのか、不安そうな目で互いを見つめ合う。
「おい、お前行けよ学級委員だろっ!」
沈黙を破ったのは、和台 絢斗である。
「え、嫌だよ、そんなこと言うんだったら和台君が行けばいいじゃない」
自分に視線が向けられたのが怖かったのか、それとも理不尽な申し出に腹を立てたのか学級委員長である、白崎 真矢は、声を震わせて答える。
「うっ、じゃあ、永山お前が行けよ」
「は、え、僕?い、い嫌だよ」
和台は、次に気が弱そうな永山 秀に目をつける。
「そうだよ、お前がいけよ」
「そうね、永山君ならいいんじゃない?」
永山は、友達がいないため、誰も援護しない。
僕は、ただただクラスの様子を観察する。
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