60 / 66
第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
60.不安事②
しおりを挟む
ミレーユの件が関わっているので、一応イルメラの名前は伏せて話すことにした。
「実は、高貴な方から明日のお茶会に誘われました」
「高貴な方、か。それは男か?」
「ち、違いますっ!」
「そうか……続けて」
私が話している間、エルネストは手を握っていてくれた。
というよりは、逃げないように掴まれているとも取れる。
私は緊張しながら、なるべく言葉を選ぶように話していく。
「参加するのは私と友人と、高貴な方の三人です」
「お茶会に誘われると言うことは親しいのか?」
「いえ、今日初めて話しかけられました。あることで協力関係を結びたいと」
「かなり怪しい話だな」
「うっ……。分かっています。でも高貴な方のお誘いを断る事なんて出来ません」
「たしかに、公爵令嬢の誘いは断れないか」
「はい……。私は協力関係を結ぶ理由だけで、呼ばれた訳ではないと思っています」
「どういうことだ?」
私はそこまで話すと、視線を下に落とした。
イルメラがエルネストのことを慕っていることは、直接聞かされたわけではないが、なんとなく雰囲気で分かっていたからだ。
あの時はまだエルネストの気持ちを知らなかったし、私の勘違いだろうと考えていた。
だからあの時までは、何を言われても否定すればいいと思っていた。
「その高貴な人には思っている方がいるようなんです。聞いた話では幼い頃からずっと……。きっと、その話もされるんじゃ無いかと思っています」
「…………」
エルネストは黙り込んでしまった。
私が話を暈かしすぎて、内容が上手く伝わっていないのかもしれない。
そんな不安を感じてエルネストの方に視線を向けた。
すると目が合ってしまい、ドキッとする。
「フェリシアはどうするつもりなんだ?」
「どうするとは?」
「フェリシアの言う高貴な人からその話をされた時、君はどう答えるんだ?」
「それは……」
「というか、それって私のことだろう?高貴な人というのはイルメラ嬢だよな。そして友人がイリア嬢」
「なっ!なんで分かったんですかっ」
敢えて名前を伏せていたのに、全て伝わっていて私は戸惑ってしまう。
「公爵令嬢と私が言った後、フェリシアは否定する事無く話を続けていたからな」
「……っ!!」
どうやら私は話すことに気を取られていて、エルネストの言葉の罠に気付かなかったようだ。
「その前から薄々気付いてはいたよ。フェリシアには仲の良い友人は余りいないし、話の流れから容易の想像が付く。協力関係というのは、恐らく姉上のことだろう」
「なんで……。私、何も言ってないのに」
「接点を考えれば簡単に分かる事だ」
「……っ」
やっぱりエルネストには敵わないとはっきりと分かった。
「イルメラ嬢も随分と強引な手に出たな。フェリシアが断れないのを分かっていた上で誘ったのだろうな」
「どうしよう」
エルネストの言葉を聞き私は更に不安を感じてしまう。
イルメラは何か思惑があって、私に近づいてきたと考えて間違いなさそうだ。
「そんな顔をするな。明日か……、予定をずらせばなんとかなりそうだな。私も同行するよ」
「は、い……?」
「イルメラ嬢はフェリシアが断れないのを知った上で強行手段に出たのだから、同じ手を使っても然程問題にはならないだろう。私はフェリシアの付き添いと言うことにしておこうか」
「そんなっ、わざわざ予定をずらして貰うなんて悪いです。それにこれは私が断れなかったのがそもそもの問題……」
私が話していると、突然エルネストによって唇を指で塞がれた。
「違うだろう。強引に誘ったのはイルメラ嬢だ。それにフェリシア一人に行かせたらますますややこしいことになりそうだから、早く決着を付けるためにも同行させて。これはもう決定事項だ」
「エルネスト様も十分強引ですっ!」
「分かってる。でも、フェリシアがまた思い悩んでいる姿を見たくはないからな。それに誤解は不安を生む材料になり得るから、早めに芽は潰しておいたほうがいい」
「エルネスト様が言うと、なんか少し怖いです」
(何か悪いことを企んでいるような顔に見えるけど、大丈夫かな)
「安心していい。私はフェリシアの味方だ。味方には優しくするよ」
「……っ」
結局全てエルネストに見抜かれてしまい、彼の指示に従う形になってしまった。
明日のお茶会で一波乱起きそうで、すごく怖い。
だけどエルネストが一緒に居てくれるということは、少しだけ心強く感じた。
「ごめんなさい……、私って本当にだめですよね。いつも誰かに頼ってばかりで、自分のことなのに何一つ解決出来なくて……」
今回の事も結局エルネストを巻き込むことになってしまった。
こんな自分が不甲斐なくて嫌になる。
私がしょんぼりしながら弱弱しい声で呟くと、エルネストはそのまま私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。
「そんなことはない。君に頼られるのは素直に嬉しいよ。謝るのなら、私に隠そうとしたことを悔いて欲しいな」
「エルネスト様って甘いですね。そんな風に言われたら、また簡単に頼ってしまうかも……」
「それで構わない。少なくとも私にとってフェリシアは『特別』な存在なのだから。だけど、そこまで気にしている様なら一つ条件を付けても構わないか?」
「なんですか?」
「これから先、何かあった時には些細なことでも一番最初に私を頼ること。そうすれば私も安心出来るし、フェリシアだって気持ちが楽になるはずだ。一緒に解決策を探そう」
「……それ、優しすぎます。そんなに私を甘やかせてどうするつもりですかっ!これ以上ダメな人間なってもいいんですかっ!」
「いいよ。フェリシアの心から不安がなくなるのであれば願ったり叶ったりだ」
「私、エルネスト様にまだ何も返せていないのに……?」
「それは後払いで構わないよ」
「後払いって……」
「フェリシアが私の気持ちに答えてくれた時に、沢山貰うから」
「……っ」
エルネストの優しさに涙が零れた。
「実は、高貴な方から明日のお茶会に誘われました」
「高貴な方、か。それは男か?」
「ち、違いますっ!」
「そうか……続けて」
私が話している間、エルネストは手を握っていてくれた。
というよりは、逃げないように掴まれているとも取れる。
私は緊張しながら、なるべく言葉を選ぶように話していく。
「参加するのは私と友人と、高貴な方の三人です」
「お茶会に誘われると言うことは親しいのか?」
「いえ、今日初めて話しかけられました。あることで協力関係を結びたいと」
「かなり怪しい話だな」
「うっ……。分かっています。でも高貴な方のお誘いを断る事なんて出来ません」
「たしかに、公爵令嬢の誘いは断れないか」
「はい……。私は協力関係を結ぶ理由だけで、呼ばれた訳ではないと思っています」
「どういうことだ?」
私はそこまで話すと、視線を下に落とした。
イルメラがエルネストのことを慕っていることは、直接聞かされたわけではないが、なんとなく雰囲気で分かっていたからだ。
あの時はまだエルネストの気持ちを知らなかったし、私の勘違いだろうと考えていた。
だからあの時までは、何を言われても否定すればいいと思っていた。
「その高貴な人には思っている方がいるようなんです。聞いた話では幼い頃からずっと……。きっと、その話もされるんじゃ無いかと思っています」
「…………」
エルネストは黙り込んでしまった。
私が話を暈かしすぎて、内容が上手く伝わっていないのかもしれない。
そんな不安を感じてエルネストの方に視線を向けた。
すると目が合ってしまい、ドキッとする。
「フェリシアはどうするつもりなんだ?」
「どうするとは?」
「フェリシアの言う高貴な人からその話をされた時、君はどう答えるんだ?」
「それは……」
「というか、それって私のことだろう?高貴な人というのはイルメラ嬢だよな。そして友人がイリア嬢」
「なっ!なんで分かったんですかっ」
敢えて名前を伏せていたのに、全て伝わっていて私は戸惑ってしまう。
「公爵令嬢と私が言った後、フェリシアは否定する事無く話を続けていたからな」
「……っ!!」
どうやら私は話すことに気を取られていて、エルネストの言葉の罠に気付かなかったようだ。
「その前から薄々気付いてはいたよ。フェリシアには仲の良い友人は余りいないし、話の流れから容易の想像が付く。協力関係というのは、恐らく姉上のことだろう」
「なんで……。私、何も言ってないのに」
「接点を考えれば簡単に分かる事だ」
「……っ」
やっぱりエルネストには敵わないとはっきりと分かった。
「イルメラ嬢も随分と強引な手に出たな。フェリシアが断れないのを分かっていた上で誘ったのだろうな」
「どうしよう」
エルネストの言葉を聞き私は更に不安を感じてしまう。
イルメラは何か思惑があって、私に近づいてきたと考えて間違いなさそうだ。
「そんな顔をするな。明日か……、予定をずらせばなんとかなりそうだな。私も同行するよ」
「は、い……?」
「イルメラ嬢はフェリシアが断れないのを知った上で強行手段に出たのだから、同じ手を使っても然程問題にはならないだろう。私はフェリシアの付き添いと言うことにしておこうか」
「そんなっ、わざわざ予定をずらして貰うなんて悪いです。それにこれは私が断れなかったのがそもそもの問題……」
私が話していると、突然エルネストによって唇を指で塞がれた。
「違うだろう。強引に誘ったのはイルメラ嬢だ。それにフェリシア一人に行かせたらますますややこしいことになりそうだから、早く決着を付けるためにも同行させて。これはもう決定事項だ」
「エルネスト様も十分強引ですっ!」
「分かってる。でも、フェリシアがまた思い悩んでいる姿を見たくはないからな。それに誤解は不安を生む材料になり得るから、早めに芽は潰しておいたほうがいい」
「エルネスト様が言うと、なんか少し怖いです」
(何か悪いことを企んでいるような顔に見えるけど、大丈夫かな)
「安心していい。私はフェリシアの味方だ。味方には優しくするよ」
「……っ」
結局全てエルネストに見抜かれてしまい、彼の指示に従う形になってしまった。
明日のお茶会で一波乱起きそうで、すごく怖い。
だけどエルネストが一緒に居てくれるということは、少しだけ心強く感じた。
「ごめんなさい……、私って本当にだめですよね。いつも誰かに頼ってばかりで、自分のことなのに何一つ解決出来なくて……」
今回の事も結局エルネストを巻き込むことになってしまった。
こんな自分が不甲斐なくて嫌になる。
私がしょんぼりしながら弱弱しい声で呟くと、エルネストはそのまま私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。
「そんなことはない。君に頼られるのは素直に嬉しいよ。謝るのなら、私に隠そうとしたことを悔いて欲しいな」
「エルネスト様って甘いですね。そんな風に言われたら、また簡単に頼ってしまうかも……」
「それで構わない。少なくとも私にとってフェリシアは『特別』な存在なのだから。だけど、そこまで気にしている様なら一つ条件を付けても構わないか?」
「なんですか?」
「これから先、何かあった時には些細なことでも一番最初に私を頼ること。そうすれば私も安心出来るし、フェリシアだって気持ちが楽になるはずだ。一緒に解決策を探そう」
「……それ、優しすぎます。そんなに私を甘やかせてどうするつもりですかっ!これ以上ダメな人間なってもいいんですかっ!」
「いいよ。フェリシアの心から不安がなくなるのであれば願ったり叶ったりだ」
「私、エルネスト様にまだ何も返せていないのに……?」
「それは後払いで構わないよ」
「後払いって……」
「フェリシアが私の気持ちに答えてくれた時に、沢山貰うから」
「……っ」
エルネストの優しさに涙が零れた。
0
お気に入りに追加
2,932
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる