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番外編
70.最低の父親-sideバーデン-
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イザークの誕生パーティーから数日が経った。
屋敷内は静寂に包まれ、誰の姿も見ることが無くなった。
昼間なのに天井から垂れさがっているカーテンはそのままで、カーテンの隙間から僅かに入って来る光が若干の明るさを作り出していた。
この広い屋敷内には、もう私以外は誰もいない。
給金が払えなくなった為、使用人達は全員出て行ってしまった。
そしてイザークのパーティーに行ったきりレオナは帰って来ない。
贅沢が好きだったレオナの事だから、きっとどこかの貴族の家に転がり込んでいるのではないかと思っていた。
しかし1週間経ってもレオナは戻って来ることは無かった。
レオナまで私の事を捨てたのだろうか…。
こんなにもレオナを愛していたのに…。
こんなにもレオナに尽くして来たのに…。
レオナは妻の様に簡単に私の事を捨てていったのではないかと思うと、虚しさと憎しみだけが残った。
所詮レオナは私の本当の娘では無かったと言う事なのだろうか…。
妻が出て行ってから数日後に、屋敷に一通の手紙が届いた。
差出人には妻の名前が記されていた。
そして、そこには驚くべき内容が書かれていたのだ。
レオナは私と妻の間に出来た子では無く、妻と不貞を働いていた執事との間に生まれた子であると書かれていた。
そして近々レオナを引き取りに行くとも書かれていたのだ。
最初にそれを読んだ時には信じられなくて、放心状態になっていた。
そして理解出来て来ると、なんて勝手な女だ!と私は怒り狂い、室内に置かれている物に八つ当たりを始めた。
だけどそんなものでは気持ちが晴れる事は決してなかった。
この17年、私は愛していたはずの妻に裏切られ続けていたのだ。
こんな事、許せるわけがない…。
だけど同時に私は絶望した。
実の娘であるラウラを虐げ、妻の浮気相手の子供を愛してしまっていたことに。
どうしてこんなことになってしまったんだろう…。
私は後悔し続けた。
「ラウラ……、私のラウラ…」
私は力なく、泣きながら娘の名前を繰り返し呼んでいた。
もう決して戻って来ることは無い娘の名前を…。
ラウラが生まれた時は、初めての子供でそれはそれは喜んだ。
こんなにも可愛い子が自分の子供であることに喜びを感じて、妻と共に一生この子を大切に育てていこうと誓っていた。
それなのにレオナが生まれると、レオナにばかり愛情を注いだ。
レオナは愛らしく、笑顔がとても可愛くて、それでいて甘え上手だった。
だからそれに答えてあげたくて、レオナが欲しがるものは全て与えてやった。
望むことは全て叶えてあげた。
それも全て、レオナの喜ぶ姿を見たかったからだ。
それに比べてラウラは我儘を言う事も無く、大人しい娘だった。
はっきりと物を言う所があり、我儘なレオナを良く叱りつけていた。
周囲から見れば良い姉だったのかもしれない。
だけどレオナに泣きつかれて、私はレオナの言葉だけを信じラウラを叱った。
するとラウラは私に盾突いて来た。
ふてぶてしい態度ばかり見せるラウラがいつの間にか、憎らしく思うようになっていった。
そしていつしか私の心の中で、娘はレオナだけで良いと思うようになってしまったのだ。
だからあの日、ラウラを家から追い出せて清々していた。
後悔など微塵も感じなかった。
私は最低な父親だ。
屋敷内は静寂に包まれ、誰の姿も見ることが無くなった。
昼間なのに天井から垂れさがっているカーテンはそのままで、カーテンの隙間から僅かに入って来る光が若干の明るさを作り出していた。
この広い屋敷内には、もう私以外は誰もいない。
給金が払えなくなった為、使用人達は全員出て行ってしまった。
そしてイザークのパーティーに行ったきりレオナは帰って来ない。
贅沢が好きだったレオナの事だから、きっとどこかの貴族の家に転がり込んでいるのではないかと思っていた。
しかし1週間経ってもレオナは戻って来ることは無かった。
レオナまで私の事を捨てたのだろうか…。
こんなにもレオナを愛していたのに…。
こんなにもレオナに尽くして来たのに…。
レオナは妻の様に簡単に私の事を捨てていったのではないかと思うと、虚しさと憎しみだけが残った。
所詮レオナは私の本当の娘では無かったと言う事なのだろうか…。
妻が出て行ってから数日後に、屋敷に一通の手紙が届いた。
差出人には妻の名前が記されていた。
そして、そこには驚くべき内容が書かれていたのだ。
レオナは私と妻の間に出来た子では無く、妻と不貞を働いていた執事との間に生まれた子であると書かれていた。
そして近々レオナを引き取りに行くとも書かれていたのだ。
最初にそれを読んだ時には信じられなくて、放心状態になっていた。
そして理解出来て来ると、なんて勝手な女だ!と私は怒り狂い、室内に置かれている物に八つ当たりを始めた。
だけどそんなものでは気持ちが晴れる事は決してなかった。
この17年、私は愛していたはずの妻に裏切られ続けていたのだ。
こんな事、許せるわけがない…。
だけど同時に私は絶望した。
実の娘であるラウラを虐げ、妻の浮気相手の子供を愛してしまっていたことに。
どうしてこんなことになってしまったんだろう…。
私は後悔し続けた。
「ラウラ……、私のラウラ…」
私は力なく、泣きながら娘の名前を繰り返し呼んでいた。
もう決して戻って来ることは無い娘の名前を…。
ラウラが生まれた時は、初めての子供でそれはそれは喜んだ。
こんなにも可愛い子が自分の子供であることに喜びを感じて、妻と共に一生この子を大切に育てていこうと誓っていた。
それなのにレオナが生まれると、レオナにばかり愛情を注いだ。
レオナは愛らしく、笑顔がとても可愛くて、それでいて甘え上手だった。
だからそれに答えてあげたくて、レオナが欲しがるものは全て与えてやった。
望むことは全て叶えてあげた。
それも全て、レオナの喜ぶ姿を見たかったからだ。
それに比べてラウラは我儘を言う事も無く、大人しい娘だった。
はっきりと物を言う所があり、我儘なレオナを良く叱りつけていた。
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だけどレオナに泣きつかれて、私はレオナの言葉だけを信じラウラを叱った。
するとラウラは私に盾突いて来た。
ふてぶてしい態度ばかり見せるラウラがいつの間にか、憎らしく思うようになっていった。
そしていつしか私の心の中で、娘はレオナだけで良いと思うようになってしまったのだ。
だからあの日、ラウラを家から追い出せて清々していた。
後悔など微塵も感じなかった。
私は最低な父親だ。
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