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番外編
23.後悔②-sideフェリクス-
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アルフォンスの視線は見つめると言うよりは、睨むと表現した方が正しいかもしれない。
僕は何か喋らないと…、と頭の中では分かっているのに焦るばかりで良い言葉など一向に浮かんで来ない。
もし言葉を間違えればこの場で斬り殺されてしまんじゃないかという恐怖を感じていた。
だから結果的にいつまで経っても言葉が出て来ることはなく、押し黙ってしまった。
「…君は、わざわざラウラを探してこんな所にまで会いに来て、彼女に何を伝えに来たんだ?……ラウラから事情は少し聞いているが、君は妹と浮気をしたのにも関わらずラウラを悪者にして一方的に婚約破棄を迫ったそうじゃないか…。そして更には家まで追い出したと…」
アルフォンスの声は落ち着いてる様に聞こえたが、明らかに僕に対して嫌悪感を表していた。
「……家を追い出したのは僕ではなく、バーデン伯爵が…」
僕は慌てる様に否定した。
家を追い出したのは僕じゃない!
バーデン伯爵のした事まで僕のせいにされたくはなくて、とっさに声に出てしまった。
「ああ、そうだな。君達が…だったな。ラウラはもうバーデン家の人間では無い。もう君とも無関係だ、そんな赤の他人である君が何故今更ラウラに会いに来る必要があるんだ?」
「…それは…、バーデン伯爵がラウラの事を探していて…僕に連れ帰る様に頼んで来たからです…!」
僕は本来の目的を既に見失っていた。
本当はラウラに謝りたくてここまで来たはずなのに、アルフォンスに責められると責任転嫁する様な言葉ばかりが出て来てしまう。
だけど間違ってはいない。
僕は嘘をついてはいない…、悪いのはバーデン伯爵だ。
「連れ帰る…?それはどういう意味だ…」
「……バーデン伯爵は、僕とラウラを再度婚約させようと思っているみたいです…」
怪訝そうな表情を浮かべるアルフォンスの顔色を伺うように、僕はそう言った。
アルフォンスの怒りの原因は、僕達がラウラに酷い扱いをしたことにあるのは間違いないだろう。
恐らくラウラは僕等がしたことを、アルフォンスに話したのだろう。
そしてアルフォンスはそれに同情した…、ならば取り合えず今は悪かったと謝ってラウラとの婚約を望んでる様に見せた方が良いのかもしれない…。
(それでいこう…)
「僕も……、ラウラには本当に悪い事をしたと思っているんです。それに…レオナに惹かれたのは…一時的なものに過ぎません。僕はラウラとやり直したいと思ってま…」
「ふざけるなっ…!」
黙っていたアルフォンスが突然激怒した。
怒鳴り声は部屋中に響き渡り、僕はビクッと体を跳ねさせた。
「お前なんかにラウラは渡さない。お前達はラウラの気持ちなど一切考えることはせず、どこまでも自分勝手な事ばかり言うんだな!自ら関係を断っておいて今更連れ戻す…?馬鹿なのか…?そんなことは俺が許さない」
「……も、申し訳ございませんっ…。本当はラウラと婚約する気は無かったんです。でもどうしてもとバーデン伯爵に言われて仕方なく…」
「……君には自分の意思がないのか?ただ他人の言葉に簡単に動かされ、自分では何も考えようとはしない。まるでただの操り人形だな…。君がバーデン伯爵や、彼女の妹にいい様に動かされている姿が容易に想像できる。そんな君に話した所で時間の無駄だな…」
アルフォンスは呆れた口調で話すと立ち上がった。
そしてアルフォンスは、僕の横で立ち止まり「哀れな人間だな」と一言呟いた。
冷たい視線で僕を一瞥すると、そのまま部屋を出て行った。
アルフォンスが居なくなりほっとした。
だけど、彼に言われた言葉が心に引っかかっていた。
『操り人形』と言われたことがショックだった。
その言葉は間違ってはないからだ。
今日だって本当はラウラに謝りに来たはずなのに、一言もそんな言葉を言えなかった。
僕はただ自分は悪くないと言っているだけだった。
恐らくこの事で僕の心証は最悪なものとなったのだろう。
後日家に公爵家から抗議文が送られてきた。
それを読んだ両親は呆れ果て、僕を見限った。
この侯爵家は僕ではなく弟に継がせると一方的に言われた。
両親や弟達からは、まるで疫病神を見るような目で見られる。
毎日嫌味を言われ、睨まれる日々。
僕は蔑まれ、この家に僕の居場所などはもうないも同然だった。
こんな生活には耐え切れないが、貴族として育った僕はこの家を捨てて出て行くなんて無理だ。
だから何を言われても耐えるしかない…。
自分がこんな状況に堕ちたことでラウラの気持ちが漸く理解出来た。
僕がしたことで、どれだけラウラを傷付けたのか。
ラウラは10年以上それを耐えて来たに違いない。
(僕は…なんてことをしてしまったんだ…)
これはまさに因果応報なのだろう。
僕は自分がして来た事を、ただ後悔する事しか出来なかった。
僕は何か喋らないと…、と頭の中では分かっているのに焦るばかりで良い言葉など一向に浮かんで来ない。
もし言葉を間違えればこの場で斬り殺されてしまんじゃないかという恐怖を感じていた。
だから結果的にいつまで経っても言葉が出て来ることはなく、押し黙ってしまった。
「…君は、わざわざラウラを探してこんな所にまで会いに来て、彼女に何を伝えに来たんだ?……ラウラから事情は少し聞いているが、君は妹と浮気をしたのにも関わらずラウラを悪者にして一方的に婚約破棄を迫ったそうじゃないか…。そして更には家まで追い出したと…」
アルフォンスの声は落ち着いてる様に聞こえたが、明らかに僕に対して嫌悪感を表していた。
「……家を追い出したのは僕ではなく、バーデン伯爵が…」
僕は慌てる様に否定した。
家を追い出したのは僕じゃない!
バーデン伯爵のした事まで僕のせいにされたくはなくて、とっさに声に出てしまった。
「ああ、そうだな。君達が…だったな。ラウラはもうバーデン家の人間では無い。もう君とも無関係だ、そんな赤の他人である君が何故今更ラウラに会いに来る必要があるんだ?」
「…それは…、バーデン伯爵がラウラの事を探していて…僕に連れ帰る様に頼んで来たからです…!」
僕は本来の目的を既に見失っていた。
本当はラウラに謝りたくてここまで来たはずなのに、アルフォンスに責められると責任転嫁する様な言葉ばかりが出て来てしまう。
だけど間違ってはいない。
僕は嘘をついてはいない…、悪いのはバーデン伯爵だ。
「連れ帰る…?それはどういう意味だ…」
「……バーデン伯爵は、僕とラウラを再度婚約させようと思っているみたいです…」
怪訝そうな表情を浮かべるアルフォンスの顔色を伺うように、僕はそう言った。
アルフォンスの怒りの原因は、僕達がラウラに酷い扱いをしたことにあるのは間違いないだろう。
恐らくラウラは僕等がしたことを、アルフォンスに話したのだろう。
そしてアルフォンスはそれに同情した…、ならば取り合えず今は悪かったと謝ってラウラとの婚約を望んでる様に見せた方が良いのかもしれない…。
(それでいこう…)
「僕も……、ラウラには本当に悪い事をしたと思っているんです。それに…レオナに惹かれたのは…一時的なものに過ぎません。僕はラウラとやり直したいと思ってま…」
「ふざけるなっ…!」
黙っていたアルフォンスが突然激怒した。
怒鳴り声は部屋中に響き渡り、僕はビクッと体を跳ねさせた。
「お前なんかにラウラは渡さない。お前達はラウラの気持ちなど一切考えることはせず、どこまでも自分勝手な事ばかり言うんだな!自ら関係を断っておいて今更連れ戻す…?馬鹿なのか…?そんなことは俺が許さない」
「……も、申し訳ございませんっ…。本当はラウラと婚約する気は無かったんです。でもどうしてもとバーデン伯爵に言われて仕方なく…」
「……君には自分の意思がないのか?ただ他人の言葉に簡単に動かされ、自分では何も考えようとはしない。まるでただの操り人形だな…。君がバーデン伯爵や、彼女の妹にいい様に動かされている姿が容易に想像できる。そんな君に話した所で時間の無駄だな…」
アルフォンスは呆れた口調で話すと立ち上がった。
そしてアルフォンスは、僕の横で立ち止まり「哀れな人間だな」と一言呟いた。
冷たい視線で僕を一瞥すると、そのまま部屋を出て行った。
アルフォンスが居なくなりほっとした。
だけど、彼に言われた言葉が心に引っかかっていた。
『操り人形』と言われたことがショックだった。
その言葉は間違ってはないからだ。
今日だって本当はラウラに謝りに来たはずなのに、一言もそんな言葉を言えなかった。
僕はただ自分は悪くないと言っているだけだった。
恐らくこの事で僕の心証は最悪なものとなったのだろう。
後日家に公爵家から抗議文が送られてきた。
それを読んだ両親は呆れ果て、僕を見限った。
この侯爵家は僕ではなく弟に継がせると一方的に言われた。
両親や弟達からは、まるで疫病神を見るような目で見られる。
毎日嫌味を言われ、睨まれる日々。
僕は蔑まれ、この家に僕の居場所などはもうないも同然だった。
こんな生活には耐え切れないが、貴族として育った僕はこの家を捨てて出て行くなんて無理だ。
だから何を言われても耐えるしかない…。
自分がこんな状況に堕ちたことでラウラの気持ちが漸く理解出来た。
僕がしたことで、どれだけラウラを傷付けたのか。
ラウラは10年以上それを耐えて来たに違いない。
(僕は…なんてことをしてしまったんだ…)
これはまさに因果応報なのだろう。
僕は自分がして来た事を、ただ後悔する事しか出来なかった。
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