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番外編
22.後悔①-sideフェリクス-
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僕の名前はフェリクス・マーラー
侯爵嫡男であり今年で22歳になる。
幼い頃から僕には親に決められた婚約者がいたが、僕は姉ではなくその妹に恋をしてしまい一方的な理由で婚約破棄を突き付けた。
そして偶然その話をバーデン伯爵に聞かれてしまい、彼女は家を出て行ってしまった。
社交界にもあまり参加していないラウラには頼れる友人なんて恐らくいないだろう。
だから行く場所に困り、すぐに戻って来るだろうと安易な考えをしていた。
それに…もしかしたら僕に助けを求めてくるかもしれないと少し期待していた。
でもラウラが戻ることは無かった。
僕は昔から少し気が弱い。
だから誰かに少し言われると、ころころと意見が変わってしまう。
昔は良くラウラが注意してくれていた。
だけどいつしか僕はそんなラウラが鬱陶しく感じて邪険に扱ってしまう様になった。
妹のレオナとは違いラウラは気が強い所がある。
時には父親に対してもはっきりと物申したりしている位だ。
それに比べて妹のレオナは僕に甘えてくる。
頼りにされてる気がして、とても嬉しかった。
そしてレオナは僕が好きだと言い、関係を迫って来た。
勿論、僕もレオナが好きだったから受け入れた。
レオナは僕に会う時は必ずと言っていい程、ラウラの悪口を言っていた。
僕もレオナに同情して、一緒にラウラを責めた。
ラウラなら何を言っても傷つかないという勝手な思い込みがあったから時には酷い言葉も平気で使った。
時折寂しそうな表情を見せるラウラに気付いていながら、僕は無視をした。
そんな表情のラウラを見ると少し心が痛んだけど、それも全てレオナを守るためだと自分に言い聞かせた。
僕は悪い事なんて何もしていない、悪いのはレオナをいじめるラウラだと…。
しかしラウラが去った後、レオナの態度が冷たくなった。
僕が会いに行っても体調が悪いと断られ一切会ってはくれない。
僕は両親にラウラとの婚約を止めてレオナと婚約をすると言ったら激怒された。
レオナが社交界では色んな男に色目を使っていると噂があるからだろう。
それはレオナが可愛いから男が勝手に寄って来るのであって、レオナが悪いわけではないと必死で説得したが両親は理解してくれることは無く、『愚かな息子』だと呆れられるだけだった。
本気でレオナと結婚するのであれば縁を切るとまで言われてしまった。
僕もどこかで気付いていた。
レオナは本当は僕を見ていない事、ただ大嫌いなラウラを傷付けるために僕との関係を持ったこと…。
それに気付きながら、僕はレオナと一緒になってラウラを追い込んだ。
念願叶ってラウラを追い出せたのに、ちっとも嬉しくなんて無かった。
僕は一体何をしていたんだろうと、ただ後悔だけが残った。
ラウラは幼い頃からずっと僕が好きだったとレオナは言っていたが、それは無いだろう。
僕は婚約者であるラウラを長い間ぞんざいに扱って来た。
僕はラウラを傷付ける事ばかりしてきた。
嫌われる事はあっても好かれる事は絶対に無い。
それにしてもバーデン伯爵、あの男は本当にラウラの父親なのだろうか。
ラウラを自分で追い出した癖に、僕に連れ戻して欲しいと頼んで来た。
恐らくレオナとの婚約を白紙に戻すためにラウラが必要なのだろう。
僕が言えた義理ではないけど、なんて身勝手な男だ。
僕はラウラとの結婚はもう考えてはいない。
ラウラだってそんなことは望んでいないはずだ。
これ以上ラウラを苦しめるような真似はしたくはなかったし、今までの事をちゃんと謝罪したかった。
だから僕はラウラがいる、ヴァレンシュタイン公爵家に行くことにした。
***
王都から少し馬車で走った所に公爵の屋敷はある。
僕は事前に連絡を取り、今日の昼間会う事になった。
到着すると執事に応接間へと案内された。
久しぶりにラウラに会えると言う事もあり、緊張していた。
どうやって謝ろうか頭の中では色々考えていたけど、何を言っても許してもらえない事は覚悟していた。
僕はそれだけの事をしたのだから…。
そんな時、扉が開いた。
扉の方に視線を向けるとそこに現れたのはラウラではなく、この屋敷の主であるアルフォンスの姿があった。
たしかにアルフォンスはこの屋敷の主ではあるが、なぜ彼がここに現れたのだろう。
ラウラはここで働くただのメイドだ。
アルフォンスが第二王子である事や、騎士時代は冷酷で何人も平気で斬ってきたという噂は知っていた。
そしてアルフォンスと視線が合うと、彼は明らかに敵意を向けた瞳で僕を見つめていた。
その瞳はとても冷たく、突き刺さるような鋭い視線だった。
まるで殺意がそこには込められている様な、そんな瞳だ。
僕は彼に怒りを買う様な真似はした覚えはない。
実際顔を合わせるのは初めてなのだから…。
……なのにどうして。
恐怖で全身から鳥肌がたち、額からはじんわりと嫌な汗が流れていた。
僕は慌てて立ち上がり、深く一礼した。
「お初にお目にかかります…、ヴァレンシュタイン公爵閣下…。僕はマーラー侯爵家のフェリクスと申します…。今日はこちらでメイドとして働いているラウラに会いに……」
「悪いが、ラウラを君に会わせるつもりはない。話なら俺が聞こう…」
僕が震えた声で挨拶をすると、アルフォンスは遮る様にはっきりとそう告げた。
そして対面する様にアルフォンスはソファーに腰掛け、じっとこちらを見つめていた。
「………はい」
僕にはこの状況が全く理解出来ていなかった。
侯爵嫡男であり今年で22歳になる。
幼い頃から僕には親に決められた婚約者がいたが、僕は姉ではなくその妹に恋をしてしまい一方的な理由で婚約破棄を突き付けた。
そして偶然その話をバーデン伯爵に聞かれてしまい、彼女は家を出て行ってしまった。
社交界にもあまり参加していないラウラには頼れる友人なんて恐らくいないだろう。
だから行く場所に困り、すぐに戻って来るだろうと安易な考えをしていた。
それに…もしかしたら僕に助けを求めてくるかもしれないと少し期待していた。
でもラウラが戻ることは無かった。
僕は昔から少し気が弱い。
だから誰かに少し言われると、ころころと意見が変わってしまう。
昔は良くラウラが注意してくれていた。
だけどいつしか僕はそんなラウラが鬱陶しく感じて邪険に扱ってしまう様になった。
妹のレオナとは違いラウラは気が強い所がある。
時には父親に対してもはっきりと物申したりしている位だ。
それに比べて妹のレオナは僕に甘えてくる。
頼りにされてる気がして、とても嬉しかった。
そしてレオナは僕が好きだと言い、関係を迫って来た。
勿論、僕もレオナが好きだったから受け入れた。
レオナは僕に会う時は必ずと言っていい程、ラウラの悪口を言っていた。
僕もレオナに同情して、一緒にラウラを責めた。
ラウラなら何を言っても傷つかないという勝手な思い込みがあったから時には酷い言葉も平気で使った。
時折寂しそうな表情を見せるラウラに気付いていながら、僕は無視をした。
そんな表情のラウラを見ると少し心が痛んだけど、それも全てレオナを守るためだと自分に言い聞かせた。
僕は悪い事なんて何もしていない、悪いのはレオナをいじめるラウラだと…。
しかしラウラが去った後、レオナの態度が冷たくなった。
僕が会いに行っても体調が悪いと断られ一切会ってはくれない。
僕は両親にラウラとの婚約を止めてレオナと婚約をすると言ったら激怒された。
レオナが社交界では色んな男に色目を使っていると噂があるからだろう。
それはレオナが可愛いから男が勝手に寄って来るのであって、レオナが悪いわけではないと必死で説得したが両親は理解してくれることは無く、『愚かな息子』だと呆れられるだけだった。
本気でレオナと結婚するのであれば縁を切るとまで言われてしまった。
僕もどこかで気付いていた。
レオナは本当は僕を見ていない事、ただ大嫌いなラウラを傷付けるために僕との関係を持ったこと…。
それに気付きながら、僕はレオナと一緒になってラウラを追い込んだ。
念願叶ってラウラを追い出せたのに、ちっとも嬉しくなんて無かった。
僕は一体何をしていたんだろうと、ただ後悔だけが残った。
ラウラは幼い頃からずっと僕が好きだったとレオナは言っていたが、それは無いだろう。
僕は婚約者であるラウラを長い間ぞんざいに扱って来た。
僕はラウラを傷付ける事ばかりしてきた。
嫌われる事はあっても好かれる事は絶対に無い。
それにしてもバーデン伯爵、あの男は本当にラウラの父親なのだろうか。
ラウラを自分で追い出した癖に、僕に連れ戻して欲しいと頼んで来た。
恐らくレオナとの婚約を白紙に戻すためにラウラが必要なのだろう。
僕が言えた義理ではないけど、なんて身勝手な男だ。
僕はラウラとの結婚はもう考えてはいない。
ラウラだってそんなことは望んでいないはずだ。
これ以上ラウラを苦しめるような真似はしたくはなかったし、今までの事をちゃんと謝罪したかった。
だから僕はラウラがいる、ヴァレンシュタイン公爵家に行くことにした。
***
王都から少し馬車で走った所に公爵の屋敷はある。
僕は事前に連絡を取り、今日の昼間会う事になった。
到着すると執事に応接間へと案内された。
久しぶりにラウラに会えると言う事もあり、緊張していた。
どうやって謝ろうか頭の中では色々考えていたけど、何を言っても許してもらえない事は覚悟していた。
僕はそれだけの事をしたのだから…。
そんな時、扉が開いた。
扉の方に視線を向けるとそこに現れたのはラウラではなく、この屋敷の主であるアルフォンスの姿があった。
たしかにアルフォンスはこの屋敷の主ではあるが、なぜ彼がここに現れたのだろう。
ラウラはここで働くただのメイドだ。
アルフォンスが第二王子である事や、騎士時代は冷酷で何人も平気で斬ってきたという噂は知っていた。
そしてアルフォンスと視線が合うと、彼は明らかに敵意を向けた瞳で僕を見つめていた。
その瞳はとても冷たく、突き刺さるような鋭い視線だった。
まるで殺意がそこには込められている様な、そんな瞳だ。
僕は彼に怒りを買う様な真似はした覚えはない。
実際顔を合わせるのは初めてなのだから…。
……なのにどうして。
恐怖で全身から鳥肌がたち、額からはじんわりと嫌な汗が流れていた。
僕は慌てて立ち上がり、深く一礼した。
「お初にお目にかかります…、ヴァレンシュタイン公爵閣下…。僕はマーラー侯爵家のフェリクスと申します…。今日はこちらでメイドとして働いているラウラに会いに……」
「悪いが、ラウラを君に会わせるつもりはない。話なら俺が聞こう…」
僕が震えた声で挨拶をすると、アルフォンスは遮る様にはっきりとそう告げた。
そして対面する様にアルフォンスはソファーに腰掛け、じっとこちらを見つめていた。
「………はい」
僕にはこの状況が全く理解出来ていなかった。
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