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30.突然の出来事
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浴場で体と髪を洗い終えると、私は奥にある大きな浴槽に浸かっていた。
温かいお湯がとても気持ち良くて、思わず気が抜けた様に溜息が漏れてしまう。
「はぁ…、これから王宮か。なんか緊張するな…」
王都に来たのも初めてなら、王宮に入るのも初めてだった。
私は社交界デビューをする前に家を出てしまったので、そういう場に赴くことは一度もなかった。
父は昔から王宮で仕事をしていたが、私と父との仲は言うまでも無く最悪で、いくら屋敷を離れる期間が長いからと言っても、私を王宮に一緒に連れて行ってくれた事なんて一度も無かった。
(――お父様、今更私になんの話があるのだろう。それに…どうして私の籍をそのまま残しているの…?)
そんなことをいくら考えていても答えは見つからず、ただ不安を煽ってしまうだけだった。
だけど、今回父と会う事を決めたのには目的がある。
これから先の未来の為に、過去に決着をつける時が来た。
(こんなことばかり考えるのはやめよう…。今の私は一人じゃないし、今日だってレオンさんがずっと傍にいてくれるもんっ…!)
私は自分にそう言い聞かせると、勢い良く浴槽から上がった。
***
浴場を出て濡れた体を布で拭っていると、奥から私を呼ぶ声が聞こえた。
「ニナ、出たのか…?」
「はいっ…、今着替えるので…ちょっと待っていてください…」
私が慌てて着替えようとしていると、突然レオンが現れてドキッとしてしまう。
まだ体を拭いたばかりで、今の私は裸のままだったからだ。
「……っ…!!」
「今のニナ、すごくいい匂いがするな…」
「レオンさんっ…、まって…私準備しなきゃっ…」
私が慌てて答えると、レオンは持っていたタオルを私の体に巻き付けて、そのまま横向きに抱きかかえた。
「ちょっと、レオンさんどこにっ…!私、まだ着替えてないよっ…!」
「ニナ、暴れたら落ちるぞ。大人しく俺に掴まっていて…」
私は抵抗するのを止めて、大人しくレオンの首に手を巻き付けた。
(レオンさんは一体これから何をするつもりなの…?ま…まさか…これから…するの…!?)
そんな事を考えていると急に恥ずかしくなってきて、顔の奥が熱くなっていくのを感じた。
鼓動もバクバクと上がって行く様だ。
レオンはベッドに着くと、ゆっくりと私の事を下ろしてくれた。
私は真っ赤に染まった顔でレオンを見つめていた。
「ニナ、今日はこれに着替えてもらえるか?」
「え…?」
想像していた事とは全く違う言葉が帰って来て、私は思わず気の抜けた声を出してしまった。
私はレオンの視線を辿る様に横へと視線を伸ばすと、そこには淡い水色のドレスが掛けられていた。
「綺麗なドレス…、すごく素敵っ…」
「気に入ってくれたか?ニナが湯浴みしている間に届けてもらったんだ。部屋の外に使用人を待たせているから、ニナの準備が出来次第呼ぶが…いいか?」
「どうしてこんな事にっ…」
「普段の格好でも構わなかったのだろうが、久しぶりに会う父親だろ?だったらちゃんとした格好で会った方が格好がつくだろうし、今夜王宮で夜会が開かれるらしい。俺は参加するつもりは無かったんだが、俺がここに来ていることを面倒な奴に知られてしまってな…、少しでもいいから参加しろと言われたんだ。だからニナも少しだけ付き合って欲しい…」
レオンは困った顔をしながら、溜息を漏らしていた。
「夜会なんて私…参加したことないけど…。大丈夫かな…」
「そんなに重く考えなくても大丈夫だ。少し顔を出したら帰るつもりでいるからな。ニナは俺の隣にいてくれるだけでいい。突然こんな事に巻き込んでしまってごめんな…」
突然夜会の話をされて驚いてしまったが、レオンはいつも私の事を大切にしてくれて、傍にいてくれる。
今回父に会いに行くのだって、レオンのおかげで叶ったことだ。
だったらこれくらい、なんてことはない。
それに私も社交界には少し興味を持っていた。
人生で一度くらいは参加してみたいと思っていたから、これは私にとっても良い機会なんだと思う。
「社交界に参加した事はないけど、少し興味があったんだ。こんなに綺麗なドレスまで用意してくれたし、参加しないと勿体ないですよねっ!」
私が笑顔で答えるとレオンは「ありがとう」と小さく答えた。
温かいお湯がとても気持ち良くて、思わず気が抜けた様に溜息が漏れてしまう。
「はぁ…、これから王宮か。なんか緊張するな…」
王都に来たのも初めてなら、王宮に入るのも初めてだった。
私は社交界デビューをする前に家を出てしまったので、そういう場に赴くことは一度もなかった。
父は昔から王宮で仕事をしていたが、私と父との仲は言うまでも無く最悪で、いくら屋敷を離れる期間が長いからと言っても、私を王宮に一緒に連れて行ってくれた事なんて一度も無かった。
(――お父様、今更私になんの話があるのだろう。それに…どうして私の籍をそのまま残しているの…?)
そんなことをいくら考えていても答えは見つからず、ただ不安を煽ってしまうだけだった。
だけど、今回父と会う事を決めたのには目的がある。
これから先の未来の為に、過去に決着をつける時が来た。
(こんなことばかり考えるのはやめよう…。今の私は一人じゃないし、今日だってレオンさんがずっと傍にいてくれるもんっ…!)
私は自分にそう言い聞かせると、勢い良く浴槽から上がった。
***
浴場を出て濡れた体を布で拭っていると、奥から私を呼ぶ声が聞こえた。
「ニナ、出たのか…?」
「はいっ…、今着替えるので…ちょっと待っていてください…」
私が慌てて着替えようとしていると、突然レオンが現れてドキッとしてしまう。
まだ体を拭いたばかりで、今の私は裸のままだったからだ。
「……っ…!!」
「今のニナ、すごくいい匂いがするな…」
「レオンさんっ…、まって…私準備しなきゃっ…」
私が慌てて答えると、レオンは持っていたタオルを私の体に巻き付けて、そのまま横向きに抱きかかえた。
「ちょっと、レオンさんどこにっ…!私、まだ着替えてないよっ…!」
「ニナ、暴れたら落ちるぞ。大人しく俺に掴まっていて…」
私は抵抗するのを止めて、大人しくレオンの首に手を巻き付けた。
(レオンさんは一体これから何をするつもりなの…?ま…まさか…これから…するの…!?)
そんな事を考えていると急に恥ずかしくなってきて、顔の奥が熱くなっていくのを感じた。
鼓動もバクバクと上がって行く様だ。
レオンはベッドに着くと、ゆっくりと私の事を下ろしてくれた。
私は真っ赤に染まった顔でレオンを見つめていた。
「ニナ、今日はこれに着替えてもらえるか?」
「え…?」
想像していた事とは全く違う言葉が帰って来て、私は思わず気の抜けた声を出してしまった。
私はレオンの視線を辿る様に横へと視線を伸ばすと、そこには淡い水色のドレスが掛けられていた。
「綺麗なドレス…、すごく素敵っ…」
「気に入ってくれたか?ニナが湯浴みしている間に届けてもらったんだ。部屋の外に使用人を待たせているから、ニナの準備が出来次第呼ぶが…いいか?」
「どうしてこんな事にっ…」
「普段の格好でも構わなかったのだろうが、久しぶりに会う父親だろ?だったらちゃんとした格好で会った方が格好がつくだろうし、今夜王宮で夜会が開かれるらしい。俺は参加するつもりは無かったんだが、俺がここに来ていることを面倒な奴に知られてしまってな…、少しでもいいから参加しろと言われたんだ。だからニナも少しだけ付き合って欲しい…」
レオンは困った顔をしながら、溜息を漏らしていた。
「夜会なんて私…参加したことないけど…。大丈夫かな…」
「そんなに重く考えなくても大丈夫だ。少し顔を出したら帰るつもりでいるからな。ニナは俺の隣にいてくれるだけでいい。突然こんな事に巻き込んでしまってごめんな…」
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今回父に会いに行くのだって、レオンのおかげで叶ったことだ。
だったらこれくらい、なんてことはない。
それに私も社交界には少し興味を持っていた。
人生で一度くらいは参加してみたいと思っていたから、これは私にとっても良い機会なんだと思う。
「社交界に参加した事はないけど、少し興味があったんだ。こんなに綺麗なドレスまで用意してくれたし、参加しないと勿体ないですよねっ!」
私が笑顔で答えるとレオンは「ありがとう」と小さく答えた。
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